標的6

ガヤガヤと賑わうショッピングモールのゲームコーナーで、自身が持ってきたメモと陳列されているパッケージ、その下の値札に書かれた商品名を必死に照らし合せる。名前だけでなくパッケージの画像も見せてもらったので間違わないだろうと思っていたが、存外似たようなデザインの物が多く、苦戦していた。

「これも、違う…」

四季は学校帰り、着替えて買い物に来ていたが、かれこれ1時間弱ここにいた。
ツナの誕生日プレゼントを買う為だ。ゲーム好きなツナは欲しいソフトがたくさんあり、更に新しいソフトが増えていくので毎年誕生日にはずっと欲しがっていたもの、新しく欲しいと思ったもの、それぞれ1つずつ購入し、贈っていた。横文字が苦手なのでサプライズも何も無く、毎年単刀直入に今欲しいゲームは?と聞いて、タイトルをメモし、パッケージの画像も見せてもらい、万全な状態で行こうとするが、如何せん弟が欲しがるのは英語を使われたタイトルの物も多く、探し出すのにいつも時間がかかる。本当ならもう少し早い時期、誕生日前の日曜日等に買いに行くのだが、新しく欲しいと言ったソフトが誕生日の前日に発売するものだったので、誕生日当日の今日買いに来ていた。

「何かお探しですか?」
「っ……あ…」

長時間見ていたせいだろう、店員が声をかけてきた。
本当は自分で探し出して購入し、贈りたかったが、ツナは昨日リボーンの誕生日会で骨折してしまい、入院しているので面会時間が迫っていた。このままでは当日に渡すこともおめでとうと伝えることも出来ない。そう考え、実は、と持ってきたメモを見せてついでに英語が頗る苦手で探すのに時間がかかっていたということも伝える。店員は事情を把握し、メモに目を通してそれなら、とレジまで向かった。発売したばかりでそこそこ人気なこともあり、レジ付近に売り場を作っていたらしい。既存ソフトの売り場ばかり見ていた四季は全く気づけなかった。

「ありがとうございました。」

そのまま購入し、既に用意していたプレゼント用の袋に入れる。時刻は面会時間の数十分前で、急がないと、とショッピングモールを出た瞬間駆け出した。


受付でツナの病室番号を聞き、面会時間が迫っているため急ぐようにと注意を受け、早歩きで目的の部屋に向かう。

「綱吉っ。」
「四季!」

ガラリと引き戸を開け、中に入れば片足を天井から吊るし、体中包帯だらけのツナが驚いた様子で出迎えた。痛々しい姿に一瞬暗くなりかけた表情を戻し、遅くなってごめんと言いながらツナのベッド脇にある椅子にかける。

「綱吉が欲しがっていたものが中々見つからなくて、時間がかかってしまって。」
「俺が欲しがってた……あ!もしかして…!」
「はい、誕生日おめでとう。」

期待に満ちた嬉しそうな顔で見てくるツナに袋を渡せばうわぁー!ありがとう!と喜び、袋の中を確認する。横文字が苦手なので、もし違っていたら大変だと毎年お願いしている。少し不安になり顔を覗きみれば、どっちも合ってる!と言われ、ホッと安堵した。

「怪我の具合はどう?」
「痛み止め打ってもらったから痛くはないけど、腕しか動かせないから結構不便だよ。」
「早く良くなるといいね。」
「うん。」

面会時間ギリギリに来たせいで、あまり時間が無く、それじゃあと来て早々に帰ることを伝える。ツナは何故か歯切れ悪く頷くが、1人で心細いのかもしれないと思っても一緒に入院も宿泊も出来ないので、我慢してもらうしかない。

「また来るね。」
「うん…」
「じゃあ。」
「っ……四季っ!」

背を向けた時、ツナから声がかかり振り向けば俯いたツナが少し顔を赤くして、何か言おうとしていたが。なんだろうと思い待ってみる。

「誕生日、おめでとう。」
「………………あ。」
「俺の机の引き出し、開けてみて…!じゃあ!」
「綱吉。」

照れ臭くなったのか、勢いよく布団を頭まで被り、表情が見えなくなってしまった。声をかけてもピクリとも動かない様子に、しょうがないなぁと可愛いと愛しいという気持ちが心の中を満たしていく。
今までは四季がツナにあげるだけだった。そもそも四季に物欲がまるでなく、何が欲しいかと言われても家族がいればいいと答えて終わりだったので、ツナは一緒に過ごすようにしたり、手作りのなんでもする券等のプレゼントを渡すだけしかできなかった。しかし中学生になり、お小遣いも少し多く貰えるようになったツナは初めて自分のお金で姉の誕生日プレゼントを購入した。そのために姉が不在の時を見計らって母親やビアンキ、リボーンに何がいいか相談したり、学校でも憧れの京子やその友人の黒川花、放課後たまたま会ったハルにも聞いて回っていた。それくらい苦労して用意したプレゼントというのを思い返し、照れ臭くなってしまったのだが、四季はそんなツナの事情を知らないので思春期によくあることと思い立ったが、嬉しいという気持ちは募っていく。

「綱吉。ありがとう。」

布団を被ったままのツナは小さくうんと答え、それがいじらしくてまた心がポカポカと温まる心地がした。


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