Episode 24
会議室を飛び出して、泣きながら走って、結局私は、チームの研究室の前まで戻ってきてしまった。
思い出す、私利私欲のために談笑とも言える雰囲気で、七番街よりも古代種だ、約束の地だ、と話す神羅の重役たち。
どんなに私たちが兵器を開発しても、それは人々を守るためでなく、彼らの欲を満たすためのおもちゃとして使われていたということか。
そして私たちの街は、そんな彼らによって壊されたのか。
ありえない。信じられない。
殺意にも近い憎しみが、腹の奥をどろっと渦巻く。
こんなものの為に私たちは汗水を、時には血を流しながら働いて、こんなことの為に私たちの平和は壊されたのか。
許せない。
このまま暴れ出したいとさえ思う。
それでも私をどうにか抑えたのは、神羅カンパニーで仲間と共に働いた日々の思い出だった。
チームのみんなに、リーダーや先輩、課長……
みんなかけがえのない、大切な仲間で、チームだ。
ぐっと歯を食いしばって、研究室の鍵を開けて、足を踏み入れた。
「ナマエ、おかえり!」
「おつかれさん、うちの重要ポストくん。」
笑って迎えてくれる彼らに、また泣きたくなる。
やめようって、言いたい。
でも、あんな事、この人たちには言えない。
私は無理に笑って、「お待たせしました!」とその輪に加わった。
どれくらいこいつを弄っていたか、どうにかソードダンスが兵器として機能し始めた。
まだまだ完成には程遠いけど、ゴールは見え始めたような気がする。
勢いに乗ってきた。
その時だった。
マスターキーで研究室のドアを化学部門の誰かが開く。
見たことない顔だ、私たちの研究チームの人じゃない。
「ソードダンス開発チーム、宝条博士から伝達だ。
そいつを出すための鍵を渡せ。」
その言葉に、一気にチームがザワつく。
思わず私は声を張り上げた。
「ちょっと、なんですかいきなり!
まだソードダンスは研究段階です、出せるものじゃありません!」
私の言葉に、リーダーが続く。
「開発途中のまだ万全とは言えないものは使わせる訳には行きません。
暴走すれば施設や神羅カンパニーの人間を傷付けることにもなりかねない。
第一、出すっつっても誰に───」
「宝条博士からの命令だ。早くしろ!」
ちょうどその時、ドンッという地響きみたいな音とともに、ビルが大きく揺れた。
「っ、何!?」
「爆発か!?」
戸惑う私たちを急かすみたいに、放送が流れる。
『異常振動。熱源を感知。隔壁を閉鎖します。
従業員は速やかに避難してください。』
「避難って言われても……無理だっつの、」
先輩が悔しそうに唇を噛んで、兵器開発チーム用のスイッチのキーを握りしめた。
頑として動かない私たちの一方で、チームの化学部門が弾かれたように動き出す。
それを見て、リーダーが怒鳴った。
「おい!!お前ら何してんだよ!!」
「宝条博士の命令には逆らえない、ソードダンスは開発途中でも博士に引き渡す!」
化学部門チームが持っているキーが、その研究員の元に渡る。
ついに未だ制御不能のその生物兵器は、宝条博士の手の中に収まった。
「ッくそ、お前らそれでも研究者かよ!」
「もういいわ、逃げましょう。
みんな、避難準備!ナマエも、ぼーっとしてないで!」
舌打ちをして化学部門を睨みつけるリーダーの腕を引いて、先輩が指示を出す。
私たちみんな悔しい思いのまま、研究室を後にした。
建物から出て、そのビルを振り返る。
本当に、いつ見ても誇れるほど高いビルだ。
でも、いつものように胸を張ることは出来なかった。
爆発が起きたって言ってたけど……一体誰がこんなことを。
…………まさかね。
チームのメンバーでまとまって歩いていく中、私はどうもその襲撃の犯人が気になって、一歩後ろを歩いていた。
ふと、泣きながら訴えるような女性の声が聞こえる。
「本当よ、見たのよ!!
エレベーターに乗っていたら、大剣をかついだ金髪の男と、仲間の2人が私を殺そうと……!
鼻先にその大剣を突きつけられたんだから!!」
「……クラウドだ。」
その話に、思わず呟く。
間違いない。
いま神羅カンパニーを襲撃しているのはクラウド達だ!
チームメンバーからゆっくりと、バレないように離れる。
その瞬間、ビルの屋上の方で火の手が上がった。
爆発するヘリコプター。
きっとクラウドは、あそこに居る。
なりふり構わず、私はまたビルに向かって走り出した。