Episode 23
チームのみんなの元に急いで戻って報告すると彼らは大喜びしてくれて、私たちは嬉嬉として研究室に向かった。
ソードダンスの研究は簡単では無かった。
形としては既に出来上がってはいたものの、制御が全く効かなくて、ついには動くもの全てに襲いかかってしまう始末。
「ここのコードを前に俺たちが考えたのと差し替えたらどうだ。」
「ダメ。もう試したけど何も変わらなかった。」
「じゃあこっちは?」
「そうね、やってみよう。」
化学部門の人たちはちょっと……かなり変な人ばかりだけど、連携も取れてどうにか研究を進める。
順調とはいかないけど、今まで兵器の修理ばかりで燻っていたチームメンバーたちの目は、それはもう輝いていた。
どれくらいプログラムと向き合ってただろうか。
肩が痛い。
こうして研究に没頭しているうちに、ついに会議の時間がやってきた。
「すみません……スカーレット統括に言われて来ました、兵器開発部門の者です……」
来たこともないような上のフロアに足を踏み入れて、恐る恐る警備の1人に声を掛ける。
すると、「話は聞いている。」とさっさと会議室に通された。
「やめんか!
侵入者に関しては うちで対処している」
入った瞬間に、どんっと机を叩く音が響いて、私の肩が思わず跳ねた。
スカーレット統括が私を見て、ふっと鼻を鳴らす。
一体、何の話をしてるんだ……?
「でもプレジデント、わし本当に」
プレジデントが私を視界に捉えて、宇宙開発部門のパルマー統括を手で制する。
円卓に座るのは、プレジデントとスカーレット統括、治安維持部門のハイデッカー統括に、都市開発部門のリーブ統括、そして化学部門の宝条博士。
うわ、本物だ……こんなに間近で見たの初めて……
「リーブ」
葉巻をふかすプレジデントの低い声に、ぐっと空気が引き締まるのがわかった。
一体、この人たちが会議ではどんな話をするんだろう。
期待と興味が競って溢れてくる。
「はい。
七番街の被害報告が出ました。」
七番街の話だ。
神羅カンパニーなら再建もどうにか出来るはず。
ごくりと、唾を飲む。
……だが、その話の内容は私が全く予想していないものだった。
「倒壊した家屋の数が───」
「暗いニュースは結構。ほかにないのか。」
「……では、七番プレートの再建計画について」
「再建はしない。
古代種の協力が得られることになったからな。」
「いえ、だからといって再建しないわけには」
……は?
再建しない?
そんな、そんなこと、
プレートが落ちて、七番街はプレートの上もスラムも甚大な被害を被った。
それを、再建しない?
人々の生活は、平和は、家を失った人も家族を失った人も、命を落とした人だって大勢いるのに。
腹の底から、怒りと気持ち悪さが同時に込み上げる。
「おバカさんね。『ネオ・ミッドガル』よ」
「約束の地に、新たな魔晄都市を建設する。」
「ちょっと待ってください!
我々はまだ約束の地の正体すら」
リーブ統括を鼻で笑うスカーレット統括。
プレジデントが続けて、それに反論したリーブ統括を手で黙らせる。
「宝条博士」
「検査結果は予想通りだ。
純血種だった母親より数値は下がるが、古代種と呼んでも差し支えないだろう。」
「約束の地はいつ頃わかる?」
「その件で提案がある。
自発的な協力を強制的に引き出す方法を試してみないか?」
「大事な古代種だ。壊さないように、最大限の注意は払う。」
「拷問なら、私にまかせて。」
「戦場仕込みでよければ、俺も手伝おう。」
「肉体よりも精神的に痛めつけるやり方が、私は好きでね。」
ぐわん、ぐわんと頭の中がぐるぐる回り出す。
街を捨てて、人々を捨てて、楽しそうに話し出すのが拷問について?
……ありえない。
こんなの、街を支える人たちのやる事じゃない。
突然吐き気が込み上げてきて、私は部屋を飛び出した。