Episode 19





「……クラウド……おーい、」

しっかりとした高さから落ちてきて、背中が痛い。
それでもこれまで特に大きな怪我がない私は、たぶんよっぽど運が良いんだろう。


ウェッジを見つけたフロアから落ちてきてやっと気がついた時、隣にはクラウドが眠るように倒れていた。


……また、私を守ろうとしてた。クラウド。
守って欲しくてそばにいる訳じゃないのに。

クラウドを起こすのを諦めて、そっとその頬を撫でる。
それでも起きる気配がない彼の額に、私はそっとキスをした。


好きだよ、クラウド。大好き。
でも、そんなあなたもアバランチのメンバーなんだよね。
自分たちの思想のためにたくさん人を傷付けて、悲しませて、辛いめに合わせたんだよね。


……エアリスさんに貰ったヘアピンが、ふと蛍光灯の光を反射して輝いた。
うん……わかってるんだ、本当は。
兵器なんて物騒なものを作ってる私の方が、よっぽど人を傷付けてるって。
それでも、私も人間だから。
身近な人が傷ついた姿を見てると、自分たちは被害者なんだ、可哀想なんだって思っちゃうんだ。



「……エアリスさん。私、どうすればいいんだろう……」

そう呟いたその時、隣で横たわる彼が小さく声を上げた。


「……っ、う……」

瞼が震えて、ゆっくりその瞳が開く。


「……クラウド、大丈夫?」


恐る恐るその顔を覗いて、腕を優しく撫でた。


しばらく彼が、ぼーっと私を見つめる。
それから少し辺りを見渡してから、突然がばっと起き上がった。


「ナマエ!大丈夫か、怪我は無いか!」

「だ、大丈夫。クラウドこそ……大丈夫そうで、よかった。」

わたしの答えに、安心したように彼がほっと息をつく。


ふと、通路の奥からガトリングガンの銃撃の音が聞こえた気がした。
クラウドの方を見ると、彼もやっぱり聞こえてたみたいで、私に頷いて立ち上がる。

案の定、廊下をぬけた所には銃撃で無理に障害物をぶっ飛ばした跡があって、私たちはその銃撃の跡を追った。



痕跡を追う程、銃撃の音は大きく、激しくなる。
反響して分かりずらいが、この奥が音の根源だ。


「クラウド、こっち。」

クラウドに声をかけて、2人で進む。
最後の一歩を踏み込もうとしたその時、クラウドがその大剣に手を掛けた。


「ナマエ、待っててくれ。
合図をしたら降りてこい。」

「あ、はい、了解……」







「ナマエ!降りてきていいぞ!」

奥からクラウドの声が聞こえて、恐る恐る段差から飛び降りる。

最後はティファが受け止めてくれて、私も無事に皆と合流した。


「ナマエ、大丈夫?」

「うん、ティファも。怪我はないみたいで良かった。」


「よくここがわかったな。」

「銃撃のあとを辿った。
あんなことをするのは、あんただけだ。」




戦いも一段落したようで落ち着いたみんなが、ある一点を見つめる。
壁にはヒビが入っていて、何とはないが、何故か私もそれが気になった。


徐に、バレットがそこを目掛けて銃を撃つ。

ちょっ、あぶ、跳弾とかあるんだから気を付けてよ……


少し撃っていると、すぐにそこには穴が空いた。
みんなが気になっていた通り、中からは、なにか空洞が姿を現す。
4人で、そこを恐る恐る覗き込んだ。

そこには、いくつも並んだ大きなポットのようなもの。
暗闇でよく見えないが、なにか入っているようだ。


少しして目が慣れて、私たちはその正体に絶句した。

ポットの中に放られるように倒れた人、あっちのにも、こっちのにも、人が入ってる。

うそ、こんなの、

得体の知れない恐ろしさと気持ち悪さで、声が出ない。
手が震えて、体温がどんどん下がっていくのを感じる。
思わず、私は自分の腕で自分を抱きしめた。


「これ……なに?」

「人か?」

ティファがそれに思わず声を上げる。
バレットも信じられないようだ。


そんな私たちに、クラウドがゆっくりと言い放った。

「これが、神羅の裏の顔だ。」









- ナノ -