Episode 18





「おーい!!
誰かいねえか、返事をしてくれ!!」

バレットが、救助を呼びかけながら進む。
一方の私は顔を上げられなくて、クラウドに引かれるままとぼとぼと歩いていた。


その歩みが、ふと止まる。

視線を上げると、そこには、変わり果てたセブンスヘブンの姿があった。


燃えちゃったのか、ここも。
呆然と立ち尽くしているのはティファも同じで、泣きそうな顔で徐に瓦礫に歩み寄る。


「離れろ!」

「……っ!!」

クラウドの声に、ティファが後ろに飛び退く。

今までティファが立っていたそこに、大きなコンテナのようなものが落ちた。
瓦礫の上に瓦礫が重なっていて、それが崩れたみたいだ。

なにか拾い出せるものは無いかと、バレットが瓦礫を退ける。


その時後ろで、「みゃあ、」と猫の鳴く声が聞こえた。

それはどうやら私だけじゃなかったみたいで、みんなが後ろを振り向く。


クラウドが何かを見つけて歩み寄った。


「ウェッジの猫だ。」

「なに?」

その三毛猫は、まるで着いて来いと言わんばかりに私たちに鳴いて走っていく。


ティファの「行ってみよう」の声に頷いて、バレットとクラウドが瓦礫を退けて道を作った。


わざわざクラウドが私の元に帰ってきて、再び私の手を握る。


「クラウド、」

「嫌だ。」

「まだ何も言って……」

「何を言われても、俺はあんたを置いていく気は無い。」


瓦礫を縫うように進んでいく。
たどり着いたのはウェッジの家があったところだった。
その地面にぽっかりと空いた穴。
奥は、なにかに繋がっているように見える。

ウェッジの猫が、その穴の中に飛び降りて言った。


「……ナマエ、行くぞ。」

突然、クラウドが私を抱き上げる。


「う、わっ!!ちょっと……!!」

「大人しくしてろ。」


穴に飛び降りる浮遊感。
ひっ、と情けない声を出して私はクラウドの首に必死に腕を回した。

穴に降りた私たちに、バレットが「いま行くからな!」と後ろから声をかける。


降りてきたバレットが、不快そうに眉を顰めた。


「ふん、神羅くせえな。」

「ちょっと、バレット!」

必死に止めようとするティファに、バレットは何の疑問も持たずに続ける。


「あ?なんだ?
アバランチなんだから、神羅を嫌って当然だろ。」

「ナマエが……!!」

「あ、」




……うん、やっぱり、そうだったんだ。



「いや、これは、その……冗談だ!じょーだん!!」




必死に誤魔化そうとするバレットに、笑いも出なかった。
がっかりしたっていうか、やっぱりそうかって思ったっていうか……

恨みを持って忌み嫌ってた対象が実は大好きなみんなだったなんて、気持ちが整理できていないのかもしれない。


「……ナマエ?」

私を下ろしたクラウドが、心配そうに私に尋ねる。
その目が、見れない。


「……いいよ、別に。
知ってたから。なんとなく。」

「ナマエ……」

「……行こ、ウェッジがいるんでしょ。」


彼らに背を向けて、私はひとり歩みを進めた。
ギシギシ絡まった、気まずい時間が流れる。
でも、この状況を解決する方法なんて知らない。



「ウェッジ……?」

突然、ティファが声を上げた。


「ウェッジ!」

それにならうように、バレットも声を上げる。

階段を降りて奥に見えた空間には、みんなの言う通り、確かにウェッジが倒れていた。


駆け寄ろうと、みんなが一歩踏み出す。
その途端、地鳴りのように音を立てて地面が揺れた。
それは収まる気配も見せず、地震のように私たちを揺らす。

ついに私たちの立つ床が、がたんと音を立てて抜け落ちた。


「ナマエ!!」

クラウドの呼ぶ声が聞こえて、咄嗟に目を閉じた私は、彼の熱に包まれたまま落ちていった。









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