Episode 17
ヘリコプターが五番街方面に飛んでいくのが見える。
エアリスさんが、神羅に?
しかもタークスに連れられて……一体どうして。
考え込みそうになって、咄嗟に首を振る。
だめだ、今は避難誘導を手伝おう。
逃げ惑う住民たちに声をかけながら、自分のアパートに戻る。
さっきエアリスさんの手を引いた時に、荷物をアパートの前に置いてきてしまった。
途中で瓦礫の下敷きになった人を助けた時に手を切ったり、火花で火傷を負ったりはしたが、どうにか自分を鼓舞して歩みを進める。
痛いなんて言ってられない、1人でも多くの人を、私が救うんだ。
そして私がちょうどアパートの前で荷物を掴んだ時、プレートは、轟音を立てて私たちの上に落ちてきた。
「……んっ、……んん……?」
じくじく痛む足に、がんがん痺れる頭。
死んだ……?いや、どうやら生きてるみたいだ。
「ナマエ!」
「……マー、レ……さん……?」
なにかに押さえられてるみたいに、声が出ない。
動かない首を無理に捻って上を見ると、自分の上に大きな瓦礫が被さるように私を押さえていた。
だからこんなに足が痛むんだ。
というか、よく生きてたな。なんて、他人事みたいに考える。
自警団のみんなが一生懸命どかそうとしてくれてるみたいだけど、その瓦礫は一向に動く気配がない。
街は燃えて、人々は絶望して、思い出は全て潰れてなくなってしまった。
こんな時でも右手にしっかり握っていたバックが可笑しくて、力ない笑いが零れる。
私の浮上した意識は、また段々と沈んで行った。
「……!、きろ……!
おい………、……!」
ん……?誰だ……?
「ナマエ……、!
起き………!」
起きろって、そんな事言われても……
「……クラ、ウド……」
姿が見えた訳じゃないけど、なんとなく私は彼の名前を読んだ。
会いたいな。
会って、抱きしめて、2人で笑い合いたい。
そうして、2人、いっしょに……
「ナマエ!起きろ!!」
ぐいっと意識が引き戻されて、私の瞼が飛び上がった。
目の前には、綺麗な金髪とエメラルドの瞳。
ふと身体を見ると、自分がクラウドの腕の中にいるのが分かった。
「クラウド!?
なんでこんな……っ、いてて……」
飛び起きようとした瞬間、右足に痛みが走る。
怪我したみたいだ。
大して酷いわけじゃないけど、いきなり動かしたのが悪かったらしい。
「大丈夫か、ナマエ。」
「う、うん……」
そっと肩を抱かれて、ゆっくり立ち上がる。
彼に凭れるようにクラウドが腕に力を入れるから、身体が密着して恥ずかしい。
「クラウド、あの、」
「どこが痛む?立っていられるか?」
ふと顔を上げると、至近距離に彼の整った表情。
ほんと、心臓に悪い、勘弁してよ……!
「ナマエ!大丈夫?」
ふと隣を見ると、ティファが心配そうに私の頭を撫でた。
「ティファ!」
「バレットも。とにかく、無事で良かった。」
ほっと息をつくティファと、奥で私に頷いてみせるバレット。
あちらこちらから火の手が上がって街はぼろぼろだが、この3人はどうやら無事だったらしい。
マーレさんは相変わらずそばに居てくれたみたいで、私を見つめてほっとしたように微笑んだ。
……アバランチ、なんだよね。みんな。
さっきまでの熱が引いていく。
そっとクラウドの腕を払って、自分で立てることを確認してから彼から離れた。
「……ナマエ?」
彼が心配そうに私に声をかける。
「ごめんなさい、平気。大丈夫だから。」
「そう、か。」
……どうして、そんな傷付いた顔してるの。
「しかし、本当に、よく無事だったよ。
これから、どうするんだい。」
「さあな。
オレたちにできること見つけるさ」
マーレさんが彼らに声をかける。
それにバレットが、ため息をつくように答えた。
「店へはもう行ったのかい」
「いや……」
「確認してきたらどうだい?」
マーレさんさんの問いかけに、ティファが「うん、」と頷いた。
それを見てバレットが、店に行くよう提案する。
ふと、クラウドが私の方を振り返った。
「ナマエも、一緒に来てくれ。」
「……どうして。」
俯いたまま、ぼそっと答える。
「心配なんだ。
いいだろ、ティファ、バレット。」
「ああ。」
「もちろん。行こう、ナマエ。」
……足も、気持ちも進まない。
どんな気持ちで、彼らと……クラウドと、一緒にいればいいと言うんだろう。
「ほら、行くぞ。」
俯いたままの私の手をクラウドがついにとって、歩き出した。
ぐいぐい引っ張られて、一緒に行かざるを得なくなる。
「……クラウド、痛いよ。」
「だったらさっさと前を向いて、自分の力で歩くんだな。」
振り払う元気の無い私の手を、クラウドはずっと握って離さなかった。