Episode 16





支柱で広がる壮絶な攻防戦。
あちらこちらで火花がちって、さながら神羅とアバランチの全面戦争だ。
いや、きっとそうなんだろう。



どん、と音を立てて、神羅のヘリコプターのひとつが大きく火の手を上げてバランスを崩した。

そのまま制御を失って、それは街の方に落ちてくる。


「そんな……!」

逃げ惑う人々。視線を落とすと、落下する先はセブンスヘブンの近くだと分かった。

「あっちは、!!」

「マリン!」


手を伸ばすエアリスさんを咄嗟に抱き留めてヘリの墜落で起きた爆風から庇う。
頬でちりっと火花が弾ける音がしたけど、急いで立ち上がって彼女を引き上げた。


「いたた……マリン、!」

「エアリスさん、マリンを迎えに?」

「そうなの!どこか、通れそうな道……!」

「それなら、私知ってます!」

2人で頷いて、離れないようにエアリスさんの手をとる。
人々が逃げる流れに逆らうように走った。


「ここなら!」

抜け道に入って、目の前にセブンスヘブンが見える。


「やった!」

エアリスさんが声を上げた瞬間、その道も墜落したヘリコプターによって遮断されてしまった。

2人で吹き飛ばされて、地面に倒れ込む。
でも、休んでなんていられない。


「待ってて」

「行きましょう、エアリスさん!」


私たちが視線を上げた瞬間、目の前で、小さな女の子が転んだ。
あの子は……ベティちゃんだ。
お父さんは一体どこに。


「イタタタタ……」

エアリスさんがすかさず駆け寄って、抱き起こす。


「痛いねえ
でも、今は我慢しようね」


ベティちゃんを助けなきゃ。でも、止まっている暇はない。

道の奥に避難誘導するマーレさんの姿が見えて、私はベティちゃんの手を取った。


「ベティちゃん、一緒に行こう!
エアリスさんはマリンのところへ!」

「うん、わかった。
ナマエ、お願い!」

「ベティちゃん、怪我はない?」

「ナマエおねえちゃん……うん、大丈夫、」

「泣かないで偉いね、あともう少し頑張ろう。」


ベティちゃんを抱き上げて、マーレさんの元に急ぐ。
その奥に、ベティちゃんのお父さんの姿も見えた。


「ベティちゃんパパー!!!」

叫ぶ私に、お父さんがこっちを振り向く。


「ベティ!」

彼は走って私たちの元にやって来て、ベティちゃんを私から引き取った。


「どこに言ってたんだ!
ナマエちゃん、助かったよ!」

「いいんです、隣町まで急いで!」

奥にいるマーレさんに手を振る。


「あとは任せます、マーレさん!!」

「分かってるよ!あんたも早く逃げて、」


彼女の気遣う言葉に背を向けて、エアリスさんの元に走った。
もし迷ったりしていたら、私が案内しないと!



そうしてセブンスヘブンの目の前に着いた時、彼女はちょうど、タークスの制服を着た男に連れられて神羅のヘリコプターに乗り込んでいた。


「エアリスさん!!!」

叫ぶ私を一瞬見て、彼女が小さく笑う。


『だいじょうぶ。』

唇で私にそう伝えると、彼女の乗ったヘリコプターは風を巻き上げて飛び立った。








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