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好きがはじまったのです
はぁ、今日も1日長かったなー。

ドアのカギがかかってるってことはnameちゃんはまだ帰っない。ガチャリと開けたら訪れる暗闇。nameちゃんはまだ帰ってない。

「ただいまー…」

一応、ただいまの挨拶はしておく。いつもならnameちゃんが出迎えてくれて「おかえり」っておかえりのキスをしてくれるんだけど…。ボクが先に帰って来たとしても、帰ってきたnameちゃんを「おかえり」って抱きしめてちゅーして一緒に晩ごはんを作るんだ。

暑苦しいスーツを脱いで、スカーフを取ってシャツのボタンを2つ3つ外す。一気に苦しさから解放された。ソファーに座るというより倒れこむ。いつも疲れるけど今日はどっと疲れた。

今日はちょっと元気が出ないな。仕事で親父に報告し忘れたことがあって怒られてしまった。久しぶりに怒られたから落ち込んでるから。ボクだって人間だから落ち込むことはあるんだよ?はぁ…。

「ただいまー!」

あ、帰ってきたnameちゃん…。

「今日はあたしが遅かったね、ごめんごめん」
「ん、おかえり…」
「…なんか元気ないね?具合悪い?」
「ん…」
「そっか。じゃああたしがごはん作るね」
「ん」

ダメだ。返事も態度も適当になってる。でも、脳で怒られたシーンが上映されて嫌悪感が襲ってくる。別に思い出したいワケじゃないのに、嫌なことに限って何度も何度も繰り返し思い出してしまうんだ。別のことを考えててもね。それだけ反省して後悔してるってことだけど、嫌なことを思い出していい気持ちになる人はいないよ。

「ダイゴ」

黒い水玉エプロンを着たnameちゃん。いつもなら可愛くて萌えてデレデレするんだけど、今日は、ね。

nameちゃんはボクのそばに寄って来て、ボクの目線と同じ高さにしゃがんで頭を撫でてくれた。痛くもなく痒くもなくくすぐったくもないちょうどいい力で。

「元気だせ!ね?」

今まで一緒に住んできたけど、頭なでなでは初めてだ。撫でられたところの髪はちょっとだけぐしゃぐしゃになったけど、撫でられたところがふわふわしてていい気持ち。頭を撫でられるのってこんなに気持ちいいんだ。

「ごはん、まだかかりそうだから、お腹空いて仕方なかったら何かつまんでいいからね」

またキッチンに戻って行くnameちゃん。でも、なんだかまだそばにいて欲しい、ちょっとだけ寂しい、nameちゃんに「ダイゴ」って呼ばれたい。

そっと追いかけてお米を研いでるnameちゃんの後ろから抱きついた。

「ひゃっ。どしたのダイゴ?」
「ん…」
「もー」

とか言いながら「離しなさい」って言わないから、このまま抱きついてもいいって許してくれたんだと解釈する。nameちゃんは作業しにくそうだけどボクはすっごく幸せ。こうして抱きついてると、嫌な記憶を思い出しても不快な気持ちにならない。nameちゃんが嫌な記憶から守ってくれてるみたい。

「nameちゃん」
「なぁに?」
「……ん、なんでもない…」
「ふふ、今日のダイゴ変なのー」

その笑顔、その声のトーン。全部好きだ。好きだnameちゃん。ボクを守ってくれる女神さま、みたい。


好きがはじまったのです

(本当はもっと撫でて欲しい。もっと撫でてもっと撫でてもっとなでなでして…)
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