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背景にはシンデレラのお城
もうすぐ季節はクリスマス。
ここナギサシティはすっかり雪に覆われ、外を出歩く時は滑らないように気をつけろよ、なんてnameに注意したけど、この帰り道に自分が滑って転びかけてしまった。生まれてからずっとこの街にいるのに、雪だけはなかなか…。

そして、このナギサシティのクリスマスイルミネーション。ソーラーシステムが盛んなこの街は、もちろんこういうイルミネーションにも力を入れている。まぁオレがその指揮者なんだけどな。赤青黄色緑オレンジピンク…色とりどりのツリーのイルミネーションが1番の自身作だ。

オレの部屋のベランダから望めるこのイルミネーション。クリスマスシーズンに近づくにつれて見物人が多くなるから、いつでもベランダで見えるように、と指揮者であるオレのわがままで、今の場所にモミの木を植えて飾り付けをした。

あのイルミネーションには1つ噂話があるんだ。ツリーの飾りは風で飛ばされないようしっかりと飾り付けてるんだが、その中の1つである金のモールを好きな人の左手の薬指に付けると結ばれるって噂らしい。金のモールはツリーからもぎ取るんじゃなくて、偶然地面に落ちているヤツな。オレの知らないところでそんな噂があったのか、とビックリしたのが、チマリから話を聞いた今日。

まぁあくまで噂だし、オレ達はすでに結ばれてるし、関係ない話だよなって思いたいのに、そうしたいという願望がひっそりとあったりする。ははっ、ロマンチックに憧れるなんてオレのガラじゃないな。つーか誰だよそんな噂を流したのは。

「ただいまー」
「おかえり!寒かったでしょ?」

部屋に入ると暖かい。nameが暖房を入れてくれていたのか。ぎゅっと抱き締めたらまるで湯たんぽみたいに温かかった。こいつはオレが寒い思いをしてる間ぬくぬくとしていたのか。

「ったく、オレが寒い思いをしてる間こんなに温い部屋にいたのか」
「ひゃっ、デンジ冷たい…!」

両手で頬を包み込むようにしてやると、ささやかな抵抗をしてきたが、しっかりホールドしてあるので無駄な足掻きだ。

「ちょっとはオレも温めてくれよ」
「もう…」

そう言うと、習慣であるおかえりなさいのキスをしてくれた。柔らかくて気持ちいい。この柔らかさは実際にキスしないと分からないだろうな。

「晩ごはんできてるよー」
「おっ、今日はなんだ?」
「今日は寒いからビーフシチューにしてみましたー!」
「なかなか気が利くな」

帰ってきたら暖かい部屋が待っていて、そこにあるのは温かい料理に、大好きなnameがいる。今までは、帰ってもガランとしたままで部屋の気温も気持ちも寒かったのに…。
キッチンのテーブルにビーフシチューとサラダとパンが並んでいる。そして、お揃いにしようって買った色違いのマグカップ。あぁ、オレはなんて幸せ者なんだ。

早く早くーとnameが急かしてるから、そろそろテーブルに着くとしよう。
あ、言い忘れていたが、イルミネーションはあのツリーだけじゃないんだぜ。さっき完成したばかりのオレのとっておき。これもまたベランダから見えるようになっているんだ。そう、ちょうど向かい合って座っているnameの後ろの窓から。モチーフは…


背景にはシンデレラのお城
(なぁに?さっきからニヤニヤして)
(あ、いや、なんでもないぜ)
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