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案外ベタ惚れだったりする
「デンジのバカ!もう知らない!」
「おい!待てよname!おい!」

…あーあ、またやっちまった…。

頭を抱えてはぁとため息を1つ。アイツとはたまにこういうケンカをするんだよな。そしてnameは部屋から走って出て行くんだ。なんでかは知ってる。オレと話したくないからってのと、泣き顔を見られたくないから。アイツは怒ったらなぜか泣くんだよな、不思議だ。

部屋を飛び出すためにnameが開けたドアは、なんとも間抜けにカタンと音をたててドアは閉まった。

さて、これからすることは決まってる。こういう時nameは必ずシルベの灯台に行く。灯台には登らず、傍でぼーっと海を眺めているだけ。
靴を履き、ギィと重いドアを開けてnameを迎えに行く。秋風が少し冷たい。

なんでこんなことになったか。同棲して家事はほとんどnameに任せている。オレはジムの仕事やらで忙しいのとだらしない性格なのでほとんど家事をしない。nameに家事を投げっぱなしな状態である。
前からよく洗濯物で注意されたたことがあった。シャツを脱ぐ時に袖をちゃんと返して脱いで欲しいと。片方だけ返してあったら干す時に困るから返すなら両方返してくれと。言われた次の次の日位までは覚えててきちんとするのだが、その次の日くらいからまたやってしまう。そしてガミガミと怒られて1週間位また真面目にする。その繰り返しだったんだが、今日でついにnameの腸が煮えてしまった。

分かってるんだけどやっちまうんだよ、言い訳にしかならないけどさ。1人暮らしのオレがやるべき家事をほとんどやってもらってるんだから、そういうのはちゃんとしないとダメなんだ。もしこんなことが続いたら、nameはオレの部屋を出て行きかねない。出て行くだけに留まればいいんだが…。最悪の場合、やってくるのは「別れ」。

正直、本当に正直に言うとなんでそれくらいで怒るんだって思う。ケンカする度に怒って出て行って、こうやってオレが迎えに行くのは多少面倒臭いって思う。なのに何でこうやって息を切らして迎えに行くんだろう。答えは簡単だ。

予想通り、シルベの灯台の側で海をぼーっと眺めるnameがいた。海辺だから風が強い。

「name」

聞こえる距離で名前を呼んでも無反応。聞こえてるのに知らんぷり。意地っ張りなヤツ…そう思いながら走って後ろから抱きついた。オレは走って体温上昇、nameはぼーっとしていて体温下降。冷えた体をオレの体で温める。nameの鼻が赤い。寒いから赤いんだろうけど、目が腫れてる。

「デンジ…」
「ごめんな、name」

端から見たらとんだ茶番だが、オレたちにとっては大切なコミュニケーション。
抱きついた小さな体が振り返り、胸板に手をそっと添えられたら、冷えきった唇にキスを落とす。

なんだかんだ言ってnameもこうやってオレが来るのを待ってるんだ。毎回毎回、シルベの灯台で。他にも行くところはたくさんあるのに。ホント、長いこと付き合うとカップルって似てくるんだな。


案外ベタ惚れだったりする

(ケンカは好きじゃないけど、仲直りする瞬間は結構好きだ)
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