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必要以上のラブコール
「nameちゃーん!」

抱き着いてきたのはダイゴ。柔らかな午後の日差しの中、ソファに寝転んでうとうとしてたらこうだよ。ダイゴはぎゅうぎゅうという擬音が似合うくらいあたしに抱き着く。…ちょっと胸に顔当たってんだけど。

「そのあまえる攻撃はなに?」
「んー?さっきポケモンセンターに行ったらエネコのカップルがこうやって全身で甘えてたから、ボクもnameちゃんに甘えたくなったんだ」

なんだその子どもみたいな理由は。確かにダイゴは子どもっぽいとこあるよ。キレイな石(ダイゴに言わせるといい石なんだと)を見つけるとまるで子どもみたいに目をきらめかせて。でも体は大人…だって、重い…。

「はぁ…nameちゃんいいにおいする」
「はいはいありがとう」

はぁ、眠気がどっかに飛んで行っちゃったよ。ダイゴってば、本当にエネコみたいに甘えてくる。そんなにさっきのエネコカップルに触発されたの?
頭をぽんぽんと軽く叩いてダイゴをあやすと、嬉しかったのかもっと体を密着させるように抱き着いてきた。ぎゅうぎゅう。ますますそんな擬音が似合う。

「ん…やわらか…」

そりゃーそうでしょ。胸に顔をうずめてるんだから。この変態ダイゴめ。

「nameちゃーん」
「なに?」

顔をうずめたまま呼んでくるもんだから声はくぐもってる。

「耳そうじして?」
「へっ?」
「最近してくれないじゃん。して?」
「はいはい」

今日はかなり甘えてくるなー。どうしたんだろうホントに。そんなにエネコのカップルが羨ましかったの?
太ももに頭を乗せて膝枕。それから耳そうじなんてベタベタなシチュエーションだな。テーブルの上の綿棒を1本取って、耳の穴に差し込んでほじくる。
「んー」なんて甘いくぐもった声を出すもんだからドキッとしちゃう。痛いところに当たったのか体が微妙に動いて、耳に髪がかかった。アイスブルーの綺麗な髪。触るとサラサラして気持ちいい。同じシャンプーとリンスを使ってるはずなのになぜダイゴだけこんなに髪がサラサラになるんだろう。シャンプー、あたしの髪に合ってないのか。

「じゃあ次は逆ー」

満足したのか、今度はあたしを向くように寝転がる。あまり掃除してないんだけどな…。もしかして耳にちょっとした刺激が欲しかっただけとか?

「こうしてるとホントに幸せ」
「ねー、そんなにエネコのカップルが羨ましかったの?」
「うん。なんかこう、全身を使って甘えてるというか、好きー!って体で表現してるというか、もうすごくラブラブだったんだ」

きっと子どもみたいな笑顔で言ったんだろうな。声のトーンがそんな感じだから。「ん、耳もういいや」って体を起こすと、またぎゅーっと抱きついてきた。

「ボクたちがnameちゃんに全身を使って好きって伝えるのはやっぱりこれかな」
「ちょっとダイゴ…苦しい…」
「nameちゃん。エネコ達にはできなくてボクたちにだけできる愛情表現があるんだよ」
「え?」

フッと目の前が真っ暗になった。目元に感じるのはダイゴの体温。ゴツゴツしたものが当たってちょっと痛い。あぁ手で目隠しされたんだな。このゴツゴツしたものは指にはめられている指輪かな。


「愛してるよ、nameちゃん」


そう耳元でささやかれた瞬間、体中の血液が沸騰しそうだった。耳にあたる吐息がくすぐったくて、視界がふさがれてるから与えられる快感がより一層気持ち良くて。しかもあたしの耳は弱いから、相乗効果でもっともっと気持ち良くて。「あ…っ」なんて甘ったるい声が自然と出てしまった。

「ふふ、可愛い声だね」

目隠しをしていた手が離れると、現れたのはしてやったり顔のダイゴ。
そうか、エネコ達は喋れない。でもあたし達人間は喋ることができる。言葉が、エネコ達にはできなくてあたし達にはできる愛情表現。だからって目を隠す必要はないじゃん!

「あ、顔赤くなってる」

へらーっと笑った顔があたしの顔をさらに赤くさせた。普段はスーツ着て大企業の御曹司として会社をまとめ上げてキリッとしてカッコイイのに、あたしの前だけでふやけた笑顔をするもんだからギャップ萌えしちゃう。

「あーもう可愛いよnameちゃん!」
「ぐふぇっ」

いつも以上の強い力で抱きしめてきた。それだけあたしが愛おしいんだろうけど、これは苦しすぎるんですけどダイゴさん。息ができないんですけどダイゴさん!

「大好きだよnameちゃん。ずっとずっと大好きだからね。絶対離さないからね。どこにも行っちゃダメだからね。ずっとボクを好きでいてね」

そんなこと言われたら、苦しすぎることとか息ができないこととかどうでもよくなっちゃうんだけど!

必要以上のラブコール

(耳そうじはなんだったの?)
(膝まくらして欲しかっただけー)
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