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恋人つなぎを所望します
「でよーその時オーバがなー」
「えー、ばっかでー!」

休みの日にこうやってデンジの昔話を聞くのは楽しい。男と男…腐れ縁ってデンジは言うけど、可笑しくて笑えて、そんな関係もいいなーなんて思う。でも男って単純でバカなとこあるよねーと思ったら下腹部がズキッと痛んだ。天罰か?あ、腰もジワジワと痛むような…。
昔の思い出話を楽しそうに話してくれるデンジを心配させないように笑顔で痛みを誤魔化す。あ、なんかドロッと出てきた…。

「…name、オマエさ」

やべっ、バレたかな。あたしってばすぐ顔に出るから誤魔化せなかったかな?

「胸デカくなってね?」

なんだコイツ!
でも、生理前に胸が張ってちょっとだけ大きくなるのは事実なんだけど、見ただけで分かるのか!つか、いきなり胸を見ただけで大きくなったとか言えるなんてあり得ない。まさか話てる間ずーっと見てたの?

「いたっ!ちょっと揉まないでよ!」
「あー、なんだ、張ってるだけか」

張ってる時に揉まれると、気持ちよさより痛さが優先する。なんだその、期待外れだがっかり、な目は…。そんなことを思ってる時間にもお腹と腰の痛みは増していく。

「ん?張ってるってことは…オマエまさか、こど」
「心当たりあんの?」
「あ、いや、そういうわけじゃあ…」

ダメだ。本格的に痛くなってきた。パンティライナー付けてるから下着が汚れる心配はしなくていいけど…痛い、痛い、痛い。

「お、おい、大丈夫か?」
「…うー…」

うずくまるあたしを見て心配してくれるデンジ。誰かの心配で痛みが引く魔法なんてないけどね。

「大丈夫か?オマエ本当に…」
「大丈夫、その逆だから」
「逆?」
「いたたたごめんトイレ行ってくる…」
「……あぁ」

トイレに行ってくることが分かったから「あぁ」なのか、妊娠じゃなくて生理だって分かったから「あぁ」なのか。




痛い、いたい、イタイ、痛い…お腹と腰が痛い。

「うー」

トイレから出ると心配そうに声をかけてくれたデンジをよそにソファに横たわった。いやうずくまった。お腹はきゅーっと締め付けるように痛くて腰はジンジン痛んで立てそうに…動けそうにない。

「……はー…なんでまたー…」
「逆って…生理だったんだな」

アンタは早とちりしすぎ。
体はデリケートで、ストレスがちょっとでも溜まったり環境が変わったりすると生理が遅れたり、普段生理痛のないあたしでもこうやって生理痛に襲われる。デンジの部屋に同棲して初めての生理。環境が変わったからこんな激痛なのかなぁ。

「生理痛ってそんなに痛いんだな」
「うーん…男が大事なとこをやられた時みたいに痛いかな」
「それ絶対ウソだろ」

まぁ人それぞれなんだけど。男しか理解できない、女にしか理解できない痛みって意味で言ったんだけどな。

「どこが痛いんだ?」
「お腹と腰…」
「…どっちもかよ」

と、腰にデンジの手が回る。痛みにデンジの体温が温かい。さすさすと腰を優しくさすってくれて、痛みが少し退いていく気がした。

「どうだ?」
「うん、らくー…」

人肌って不思議だよね。なんの有効成分も入ってないのに触れただけで痛みに効くんだから。心配してくれるだけで痛みが退く魔法はないけど、人肌はまた別の魔法だよね。

「お腹は?」
「うん…痛い…」
「…じゃあほら、座れよ」

よっこらしょ、と床に男座りしていたデンジがソファに座ると、ここに来いよと足を広げてぱんと足を叩く。
腹と腰痛いって言ってるだろが…でもさっき腰をさすってくれたおかげで比較的楽に動けるようになってる。
デンジを背もたれにして体を預けた。「いてっ」なんて聞こえたけど、来いよって言ったのはデンジだからね。

「ったく…」

腰に感じたデンジの手がお腹に。女性の手と違ってお腹全体を覆えるほど大きくて逞しい手。

「これでいいか?」

お腹をさすってくれるのはありがたいけどちょっと違うんだよね。痛いのは腸じゃなくて子宮だから…。

「あ、違うな。こっちか」

と、痛い部分をダイレクトになでてくれた。ちゃんと分かってくれたんだ。腰の時みたいに触れただけで痛みが退いていく。今まで誰かに触ってもらって痛みをなくしてもらったことがないから…しかも大好きなデンジにさすってもらって。

「デンジぃー…」

デンジの魔法の手によって痛みが甘い快感に変わっていく。とろけそうで、気持ちいい。

「こんなに甘やかすのは今日だけだからな?」
「えー?あっ、手止めないで」

気持ちいいのはさすってくれてる間だけ。手が止まると徐々に痛みが戻ってくる。

「ワガママめ」

手を動かす方の身になれ、って言いたそう。でもそんなこと言ったらデンジの大事なとこ握りつぶすからね。

「いいじゃん、今日は甘えていいんでしょ?」
「あー、まぁ…な」
「じゃあさ、デンジ」

空いてるデンジの左手とあたしの左手をそっと重ねた。指と指の間に指を絡ませて…いわゆる、恋人繋ぎ。

「これでいいのか?」
「うん。安心する…」

直接体温を感じると安心する。それに、体を全部デンジに預けてるから効果は抜群。生理痛で苦しんでたなんて嘘のようだ。

「好き、デンジ…」

デンジの左手にちょっと力が入った。好きって言われてドキッてなったみたい。

「…早く終わらせろよ」

残念ながらあと1週間はお預けだね。


恋人つなぎを所望します

(1週間も我慢できねぇよバカ)
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