君への感情を鮮やかに染めるもの
待ち合わせ場所には愛しの彼女がいた。彼女が視界に入ると、ダイゴの足が自然と速くなる。
「やぁ、お待たせ」
今日のnameは体のラインにピッタリとしたタンクトップにゆったりとカーディガン、そしてフレアスカートを着ている。
「待った?」
「ううん、今来たとこ」
「ホントに?」
「ホント」
今日は特別な日…ではないが、ダイゴが夜遅くまで仕事をしていたので、トクサネの家には帰らずカナズミ近くのホテルに泊まろうということになった。
提案された時はそんなことしなくていいじゃんとnameは言ったが、たまにはいいでしょ?と言うダイゴに納得してしまった。そういう雰囲気はご無沙汰というわけではないが、ダイゴの言う通りたまにはそんなシチュエーションもいいだろう。
2人は滅多にないシチュエーションにドキドキしている。これからホテルに行って2人きりの大人な夜を過ごすのだ。しかも明日は土曜日。いつまででも起きていられる。
「じゃ、行こうか」
指を絡ませ手を繋ぐ。お互いの指が触れた瞬間、2人の手が熱を帯びていることに気付いた。
ホテルまではポケモンで飛んで行ってもいいが、夜も遅いし少しでも長い時間2人で過ごしたい。ホテルに向かう時間も、ゆっくりと歩く。
nameがダイゴを見上げた時、彼の顔がいつもよりカッコよく瞳に映った。大人な時間に見たからか、きゅんと心が鳴った。きゅっとダイゴの腕に抱きつく。
いつもよりタイトな服を着ているからか、腕に柔らかい感触をいつもより感じるダイゴ。早く彼女を愛したい気持ちが一気に高まった。このゆったりとした時間も大切だが早くホテルに行きたい。自然と少し速足になる。
「あ、待って」
急にnameが立ち止まった。目線の先には薄暗い公園。
「ちょっとここ寄ろう?」
軽くダイゴを引っ張って公園に入ろうと促す。早くホテルに行きたいのは山々だが、断ることができない空気なので彼女が誘うままに公園に入った。
nameが公園に誘った理由…ダイゴの気持ちが高ぶっていることに気づいたので、ちょっとだけ焦らそうと思ったからだ。
「疲れちゃったからちょっと休憩」と入り口の低い柵に腰掛ける。座ったのはnameだけ。ダイゴはそんな彼女を見下ろしていた。見えるのは無邪気に笑うnameと、タンクトップの隙間から見える胸の谷間。それを見てますます早く愛したいと欲情し始めたが、焦る気持ちを抑えダイゴも同じ柵に腰掛ける。
サラサラとした髪からはシャンプーの甘い香りがほのかにする。露になった細い首筋が壊れかけの電灯に照らされている。
ダイゴは壊れ物を抱くようにnameを抱いた。ちょっと待ってよ…と耳に入ってきたが聞こえないふり。早く愛したい、と彼女に教えるように首筋を舐めた。「あっ」と小さく喘ぐname。ダイゴは、声を出したら誰かに聞かれちゃうよ、とクスクス笑う。
「他の人にnameちゃんのその声を聞かれたくないから、もう行こうか」
と彼女の細い肩を持って公園から離れた。これ以上焦らされたらここで本番をしかねない。
ホテルに行くには小さな路地裏を通らなければならない。狭く薄暗い、いかがわしい行為をするのに適した人気のない路地裏。そこに差し掛かると、いきなりnameの体がふわっと浮いた、気がした。ダイゴがnameを後ろから抱き締めたからだ。
「ダメだってば…」
「なんで?いいじゃん」
耳元で囁くのはダイゴ。吐息が耳に当たってくすぐったい。
「誰もいないから大丈夫」
そう言ってnameを壁に押し付ける。乱暴に唇を奪った。抵抗出来なくするために彼女の細い両手首を片手で拘束する。
下唇をぺろりと舐め、ちゅうぅっと吸い上げ、きゅっと甘く噛み、柔らかい感触を唇で堪能する。唇を離すと自分の唾液でnameの唇が濡れている。それだけで理性が崩れそうだ。たまらなくなってもう一度唇を重ねる。舌を少し突きだして口を開けるよう促す。わずかに開いた隙間から強引に舌を入れ、nameの舌を探す。見つけると舌を絡ませてじっくりと味わう。熱く甘くトロトロとした感触はnameの腰を抜かした。
「腰、抜けてるよ」
解放されてようやく酸素を吸えるようになり、お互いハァハァと息が上がっている。
「そんなに気持ち良かったんだね」
指で下唇を弄ぶ。
ダイゴは心地いい支配欲に浸っている。nameの息を上げさせ、頬を赤く染めさせるのは自分だけ。今は唇だけの愛撫だが、もう少しでスレンダーで悩ましい体を愛撫できる。
きっとnameも期待しているに違いない。でないとこんなに唇が熱くならないし、溶けるような目でダイゴを見つめない。
もう少しだ、もう少しの我慢だ。あと少しで誰からも邪魔されずnameと裸で愛を確かめ合える。2人だけの空間、2人だけの時間。
こんなに感情が高ぶり、鮮やかになるのはきっと時間のせいだろう。早く、早く、早く愛したい。
nameの肩を持ち、速足で歩き始めた。ホテルはもうすぐそこだ。
受付でチェックインをして鍵を受け取った後は、再びnameの肩を取りエレベーター前まで歩く。無言が2人の気持ちを高ぶらせる補助剤となる。
エレベーターは上の階にあるらしくなかなか降りてこない。その時間が惜しい。手に力が入り、nameを自分にくっつける。体が、熱い。
ぽーんと軽く弾むような音を合図にエレベーターの扉が開いた。エレベーターは狭く、2人の周りの空間を制限し、より一層2人きりだと感じさせる。
目的のフロアのボタンを押した後、またnameを壁に追いやり、激しく口づけた。もう我慢の限界だ。受付の女性の視線を感じるが、それがダイゴとnameをより興奮させる。
エレベーターの扉が閉まる。狭く小さな空間で、我慢できないと2人の男女が唇を貪って愛し合っている。
夜が明けた時、彼らはきっと愛に満足して心地よく眠っているだろう。