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いつでもすぐそば

オレが風邪をひいた。
情けねぇ…健康にだけは気を付けてたのに(改造ができなくなるからな)、今は厚着をしてゲホゲホ言いながらベッドに潜り込んでいる。あー頭が熱い。喉が痛い。オレの風邪は喉に来て頭に来るのか。
誰にこの風邪菌を移されたかな。そういや、オーバの野郎もゴホゴホ言ってた気がするな。うん、間違いない、ヤツだ。今度会った時に1発殴ろう、決めた。

しかし…はぁ…ベッドに寝てるだけってのはつらいもんだ。いつも仕事をサボりたくてベッドでゴロゴロしたい気持ちでいっぱいなのに、風邪を引いてベッドに寝転ぶのはワケが違うんだな。こんなにも苦しくてつらい。

こういう時一人暮らしって嫌だよな。体調悪いのに自分でメシ作らないといけないし何か飲みたくなっても自分で取りに行かないといけないし。それに病院に行くときだってそうだ。フラフラしながら歩いていかないといけない。そりゃあの大バカ者に頼むのもいいけどやはり申し訳ない気持ちがある。

今日はこのまま寝てしまおうか。腹減ったけど作る気力もねぇし。寝たら空腹なんて気にならなくなるだろう。そうだ、寝よう。

「デンジー!」

その声を聞いただけでオレの心にパーっと光が射した。そうだ、アイツがいた。
仕事で当分家に帰って来れないって言ってたのに、オーバか誰かからオレがダウンしてるのを聞いて帰って来てくれたのだろうか。

「あーあ、そんなにへばっちゃって」
「うるせー…」
「すごい声…。熱は?」

と言ってオレの額に手を当ててきた。ひんやりとして気持ちいい。っつーかオレの額の温度が高いから彼女の手が冷たいって感じるんだろうな。

「結構熱あるね。とりあえずご飯食べて薬飲んで寝なさい。今からちゃちゃっと作るから待ってて」
「オマエ…仕事は…」
「いいからいいから、気にしないで」
「……」

たぶん「デンジに仕事復帰をさせるのがあたしの仕事」なんだろうな。
全く立場が上の彼女がいたら大変なもんだぜ。

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