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水色を静かに抱きしめて

ダイゴが風邪をひいた。
朝起きたら、目の前に顔を真っ赤にしたダイゴ。
おでこに手を当てたら熱くて、体温計で測ったら38度5分。
生身の人間だから体調を崩すのは当たり前なんだけど、正直ダイゴが風邪をひくなんて想像できてなかった。
寝てなさい!って言ったのに、「石が…洞窟がボクを呼んでいる…」って洞窟に行こうと体を起こすから、アホかー!って力付くで押し倒した。
家にあった材料でお粥を作って食べさせて、日曜日で病院が開いてないから常備している風邪薬を飲ませて、氷のうをおでこに乗せてあげたら、冷たくて気持ちいいのか穏やかに寝ていらっしゃる。

いつもこんなに大人しかったらな、なんて思ってしまう。

普段は、いきなり後ろから抱きついてきたり、正面から抱き締められたりする。
絶好調の時は、後ろから抱きついて胸を揉んできたり、正面から抱き締められたらお尻をまさぐられる。その度にシメてるのに懲りないのがダイゴ。変態ここに極まれり。

でも、こんなに大人しいと寂しくなる。
いつもならこの時間は「やめんか変態!」「いいじゃん減るもんじゃないし!」なんて、自分の体をめぐって攻防戦が繰り広げられているころ。
そう考えたら、ダイゴが自分の生活に溶け込んでることに気付く。
このアイスティーに入れるガムシロップのように、分からないように溶け込んで甘くなる。マドラーで混ぜるとさらに分からなくなって…ほら、美味しくなった。

「……」

水滴を纏ったガラスコップをキッチンに置き去りにして、ダイゴが寝るベッドに向かう。
見るとやっぱり穏やかな顔をして寝ていた。
ベッドに腰かけて、サラサラとしたアイスブルーの髪の毛をくしゃっとして、指をダイゴの唇に当てる。閉じている瞼の奥には、宝石のように綺麗で透き通った青い瞳。

早く良くなってね、とダイゴの唇に軽くキス。

そしたら「ん……」って甘く唸るものだから、起こしたかと思ってヒヤヒヤしちゃった。
でも、その後に嬉しそうな顔をして寝息をたて始めたから、いっか。

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