「ねえ湊、カルマ君とどういう関係なの?」
「は?」
更衣室にまでついてこようとするアホ=カルマをようやくまき、湊が向かっている時。友達である茅野カエデが尋ねた。それに反応した周りの女子ががいち早く食いついた。
「そうだよ、黒瀬さんが彼と面識あったなんて意外〜!」
「落とすとか言ってたし、どうなの!?」
意外って何だこらと思った湊だったが、確かにそう思われても仕方ない。同じクラスではなかったし、彼と会っていたのも人通りが少ない場所だったからだ。それに三年になりE組になってからはカルマが停学で学校に来ていなかった。
「別に皆が期待してるような関係ではないよ。強いて言うなら知人、いや学校来たしクラスメート?」
「ひどっ!湊ひどっ!」
カエデが突っ込むが無視する。混ざってきた女子たちは不満そうに唇を尖らしてブーイングしている。湊は所謂ガールズトークなるものは苦手なので、どうやって回避しようかと思案した。
「早く行かないと殺せんせーに怒られるよ」
これでいいだろう。ある程度は遅れても許してくれるだろうが、こんな話をしていて遅れたらと考えると恐ろしい。湊の一言に他の女子たちもその考えに達し、慌てて木造の廊下を駆けた。安堵のため息をついて、湊もそれに続いた。
ぶにょん、ぶにょん。無事に次の授業へ間に合った湊たちは、今日本史の小テストと向き合っていた。ぶにょん、ぶにょん。湊は典型的文系少女のため、これくらいならすぐ終えることができた。ぶにょん、ぶにょん。
しかし暇である。暇なので殺せんせーの壁パンをBGMに絵でも描くことにした。小テスト用のプリントしかないため、そこにシャーペンを滑らす。
……視線を感じる。主に右隣から。無視して湊は昨日買った漫画のキャラを書き続ける。なかなかいい出来栄え。こういう落書きに限って上手く描けるもので消しづらいが、提出するものなので仕方ない。寺坂やカルマが何か話しているが湊は気にしない。
「こらそこ!!テスト中に大きな音立てない!!」
「ごめんごめん、殺せんせー。俺もう終わったからさ、ジェラード食って静かにしてるわ。あ、湊いる?」
「いらない私に話しかけんな」
「冷たいなー」
言いつつも表情は変わらない。そういうところが湊は苦手なのだ。大抵の奴は目を見ればどんな人間か分かるのに、カルマはいまいち理解できない。
「ダメですよ授業中にそんなもの。まったくどこで買って来て…、!!」
どうやらカルマが今手にしているジェラードは殺せんせーがイタリアまで行って買ったものらしい。買った直後に食べなよと湊は消しながら思った。
消し終えた後、殺せんせーがカルマにダメージを与えられていくのを観客の一人として見る。
「じゃね『先生』〜。明日も遊ぼうね!」
テストを渡して帰ろうとするカルマの足が一旦止まり、また教室に、いや湊へ顔を向けた。顔をしかめていると、カルマの口が開いた。
「湊、さっきの絵上手かったよ。可愛かったし。湊の方が可愛いけどね」
「いらんこと言うな、とっとと帰れ!」
ああ、皆からの視線が痛い。心なしか顔が熱い気がするが、こんなの気のせいに違いない。そうだ。そう思い込むことにした。
加筆修正しました。微妙に原型があります。覚えてくださっている方は片手で足りるくらいでしょうが。
私は漫画のセリフ丸写ししまくるのは面倒だし、皆さん分かっているでしょうし、これはあくまでカルマ君とヒロインの恋物語なので割と端折ります。
タイトルはW.R.ワーグナーの曲からです。神々の黄昏とかの作者です。