「ここはいいわよ!前買い物の帰りに寄ったんだけど、最高だったわ!」
ある日の放課後。いつもの英語レッスンの終わり、イリーナが湊へ頑張っているご褒美だと称してとあるレストランへ連れてきた。洒落ているものの落ち着いた雰囲気で、客層も大人ばかりだ。湊が料理を習っている店と少し似ていた。
「さ、今日は私の奢りよ。何でも頼みなさい」
「え、いや、それは悪いですよ」
「あなた手持ちあるの?」
イリーナの問いに湊は言葉を詰まらせた。おそらくない。あったとしてもすぐに財布が風を通してしまうだろう。
「いいから大人の言うことを聞きなさい」
「う…お、お言葉に甘えます…」
メニューを開いて何を注文するか考える。どれもこれも見ただけで味が口の中に広がっていきそうな名前だ。
メニューを睨む湊を見て、イリーナが微笑む。そして自らもメニューへ視線を落とした。
「じゃあ、本日のディナーにします」
「私もそうしようかしら」
「えー、同じのにしちゃうんですか」
「いいじゃない別に」
ウェイターを呼んで注文する。しばらくグラスに注がれた水を飲みながら、他愛もない会話をした。殺せんせーが殺せない(流石に言葉を濁したが)だとか、烏間に色仕掛けが通じないだとか、クラスメートがうるさいだとか。それは前菜、メインときても続いていく。
「そういえば。あなた、あいつのこと名前で呼んだんですって?」
最後にデザートを頬張っていると、イリーナがそれはもう嫌そうに柳眉をひそめて尋ねる。湊はティラミスを吹き出しそうになってしまった。
「だ、誰がそんなことを…」
今日はイリーナの授業はなかったはずなのに…と思いつつも、検討はついている。どうせ皆が言ったんだろう。どうせバレるのは時間の問題だったのだからいいのだが。
「ダメよ、本当に…弄ばれるに違いないわ!初なあなたにあんなことやこんなことをさせておいて、最後には無残に捨てるのよ!!」
「なんつーこと言ってるんですか公共の場で!」
「じゃあ英語ならいいのね?」
「よくねえです!!」
このままでは出入り禁止になりそうだ。湊は慌てて止める方法を考えた。
「イリーナ先生、出入り禁止になるのは嫌です!私また先生とここ来たいので!」
イリーナの瞳を見つめて言う。イリーナは間を開けて、ふんっと鼻を鳴らしそっぽを向いた。
「ま、まあどうしてもって言うならいいわよ。食べ終わったし、会計しましょう」
また一緒に食べてくれるのか。先生可愛いなあ、なんて思いながら湊は頬の筋肉を緩ませた。
可愛い年上のあの人
星の光〜と誰がお前を〜の間くらいです。ビッチ先生!というお声が多いのでまずこちらから…。先生ちょろい。