こねた
リクヤとアキト
谷下くんは「いってきます」を言ってくれない。
朝、私をお越し先に教室に向かうときも、ウォータイム開始前も、ウォータイムにて私が待機をしつつ山名くんと谷下くんに指示を出し向かわせるときも「いってきます」とは言わない。
「いって参ります」としか言わないのだ。
「おはようございます、リクヤさん!自分は本日の日直を任されておりますのでお先に失礼します!いって参ります!」
ほら、今日も。
今日もそうだ。
谷下くんは「いってきます」と言わない「いって参ります」としか言わない。
谷下くんは自分自身いずれ、私の元に帰れなくなるであろうことを知っている。
知っているから。
2014/04/27 (14:42)
キャサリンとキヨカ
「頭のいい女の子はキスはするけど愛さない。耳は傾けるけど信じない。そして、振られる前に振る。そう、マリリン・モンローは言ったわ」
「へぇ〜」
「私は彼女からしたら頭の悪い女だな。キスはできずとも愛するし、耳を傾けては信じるし、想いを告げる前から振られている」
「そうね、…でも、頭がよかれ悪かれ男子を一途に想うキヨカは可愛いわ。いいじゃない、頭が悪くたって。今のままのキヨカが一番、可愛いんだから、…ね?」
「ふふっ、…もう、キャサリンたら。…有り難う」
「どう致しまして」
そう言ってふふんと笑う君が一番、可愛いよ。キャサリン。
2014/03/31 (04:23)
コウタとアキト
「あ、あの、…!」
一目見たその瞬間に、
「新しくジェノック第三小隊に配属されました、谷下 アキトと申します!」
俺はお前に恋をした。
「あの、貴方のお名前は?」
「コウタ。朝比奈 コウタだ」
「コウタ、さん?」
「コウタでいい」
「あ、う、…えっと、…コウタ、…コウタ!」
「…っ!」
( …?どうかしましたか? )
( 別に、…つか、敬語もいいっつーの )
( はい!、…じゃないや、うん! )
(( きゅんとしたなんて言えるわけねぇだろ! ))
2014/03/24 (17:01)
リクヤとアキト
好きな人に可愛いと言われるたびに女の子は可愛くなるらしい。
「可愛い」
「あ、あの」
「可愛いですよ、谷下くん」
「か、わいくない、です」
「いいえ、可愛いです」
「あ、う、…も、もし、可愛いのだとしたら、…リクヤさんが可愛くしてくださったんですよ?自分のことを」
「…!ふふっ、嬉しいことを言ってくれますね」
ならばきっと男の子だって同じ。
好きな人に可愛いと言われれば可愛くなる。
同じ、同じさ。
2014/03/24 (17:00)
リクヤとアキト
雪が溶けたらなにになると思う?そう、尋ねてきたのは朝比奈くんだった気がする。
私は迷わず水と答えた。
途端に苦笑を浮かべた彼に私は首を傾げたんでしたっけ。
「…谷下くん」
「はい、なんですか?」
「雪が溶けたらなにになると思いますか?」
不意に思いだした朝比奈くんからの問いを谷下くんに投げかけてみる。
あの時の彼の苦笑の意味が知りたくて。
だが、しかし、答えはわかっている。
「うーん、そうですね、…」
わかっている、…つもりだった。
「…春」
「え?」
「春です!春になります!」
私はその答えに驚いた。
驚きを隠せない私に彼は続ける。
「どんなに冷たい雪もいつかは溶けて春になります!」
そして悟った。
なるほど、これが朝比奈くんの求めた答えなのか、と。
2014/03/24 (17:00)
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