こねた
滝夜叉丸と綾部
「ねぇ、キティちゃんは林檎五個分の身長だよね」
「あぁ、そうだな」
「滝ちゃんは林檎何個分くらいかな?」
小平太と仙蔵
美しくてそれはとても憐れだ。
小平太はしつこくもがく白く細い腕を押さえ付けていた。
もがくわりに仙蔵はそれ以外はなにも仕掛けてこない。
小平太にしてみればどちらだってよかった。
仙蔵はもがくのを止めてわざとらしく息を吐いた。
「くだらない。こんなのくだらない、ただの慰めだ」
そんなものに期待してるのはどっちだとは言わないでおく。
小平太は仙蔵の首に甘えるように顔を寄せた。
「私は仙蔵が好きだよ。これは慰めとかそんなものではない。それでも慰めだと思うなら要らないと言って切り捨ててくれ」
髪を撫でるといつも口だけは達者な仙蔵の癖に黙って仕舞った。
文次郎と仙蔵
雨が降っている。
壊れた天井から雨を室内に招きいれている。
文次郎と仙蔵は辛うじて濡れぬ場所に身を寄せ合っていた。
その薄い暗闇で戯れるような暗闇の中で。
仙蔵の唇は文次郎の腹の傷を慰めていた。
「…うっ」
うめく声は甘やかとも言え、仙蔵は自分が没頭していくのを感じた。
雨音が耳から溢れ、それと同化し、文次郎の傷に降り注ぐイメージと重なった。
彼の、命になりたい。
「…仙蔵」
「文次郎、私はお前の命になりたい」
雨が降っている。
厳禁トリオ
道中、ふと僕たちを気遣って振り返った時の表情が好きだ。
立花先輩のその顔は振り返った側の人間がするような貫禄とは程遠くてどこか不安そう。
僕たちがいなくなる事が怖いみたい。
大丈夫ですよと二重の意味で頷き返すとほんの少し頼もしいと言いたげに微笑んでくれる。
優しいと思う。
それ以上に僕たちは立花先輩が好きなんだなって思う。
大木と久作
そよ、 近付く人の気配に気付いて久作は目を覚ましたがそれが誰だかわかっていたので寝ている振りをした。
やがて近付いて来た人は久作の隣に寝転んだ。
「俺も寝よっと」
やっぱり大木だった。
すぐさま健康的な寝息が聞こえ出す。
久作は寝返りの振りをして大木の胸にくっ付いた。
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