ざわざわきらきら_05


5.


数日前、俺は跡部を呼び出した。

「越前、1回戦は勝ったな」
「てめえ、まさかそんな無駄話をしに俺を呼び出したわけじゃねえな?」

跡部は開口一番から機嫌が悪かった。
よく見ると目の下に隈ができていて、寝てない様子を伺わせる。

「そりゃこれが本題ちゃうけども、挨拶やん、挨拶」
「越前が勝つのは当然だ。だが若干、動きが悪かった。どこか痛めてなきゃいいがな。で? お前の話はなんだ」
「なんでそんな機嫌悪いん、自分」
「昨日まともなところで寝てねえんだよ」
「ええ大人がそんなことある? カラオケ屋で寝たとかちゃうやろな」
「カラオケ屋ならまだマシだ。俺が寝ていたのは公園のベンチだ」
「え」

ぎょっとして跡部を見ると、目を棒にして俺を見てきた。
あかん、これ以上聞いたら殺されそうや。なにがあったか知らんけど、とりあえずここは黙っとこ。

「いや実はな、こないだ、訴えてやる! って言われてん。女に」
「アーン? なんでだ」
「……セクハラ」
「はあ? セクハラ?」

こういう説明は、回りくどくなってもしゃあない。
俺は簡潔に跡部に経緯を伝えた。
結婚式の二次会で佐久間伊織という発情女に会ったこと。担当していた作家が問題を起こして責任を取らされていること。結果、佐久間伊織をたぶらかして責任を逃れようとしたこと。

「どう考えてもてめえが悪いじゃねえか」
「いやそうなんやけど……」
「ま、セクハラで600万も取られることはないだろ」
「いやそうやなくて、なんかええ方法ないかな。別に訴えられても向こうもその気やったし、そこまで怖くないんやけど、問題は会社やって。セクハラで会社ごと訴えられたらたまらんから」
「なんだそんなことかよ。なら簡単だ」
「え、簡単なん?」

跡部の「簡単だ」は簡単じゃないことを学生のときから知っている俺でも、いつもこの男の「簡単だ」に乗せられてしまうのはなんでやろう。
それくらい、こいつの「簡単だ」には揺るぎない自信を感じる。

「会社を辞めろ」
「は」
「辞めるんだよ、出版社を」

口を開けたままの俺に、跡部は念を押すようにそう言ってきた。
ちょお待てちょお待て、なんで会社辞める話になんねん。

「あのな跡部、俺の実家はそこそこ金持ちやけど、跡部の家とは違うねん」
「バカ言え。俺だって実家の金なんかこれっぽっちも頼っちゃいねえよ」
「会社辞めたら収入が無くなるやろ!」
「簡単だ、働けばいい。社員に金の責任を追わせるような会社、いくら大手でもクソじゃねえか。そんなところに勤めてなんの価値がある」
「そ……それは」

おっしゃる通りやけど、そんな簡単に嫌やから辞めますってなれんねん、普通は!

「起業しろ忍足、お前にはそのほうが向いてる」
「へ? 起業?」なに言うてんのこいつ。頭わいてきたんか。
「そこそこ貯金くらいあんだろ。それにお前、編集者になったのは自分の信じる作家を最大限まで輝かせたいって願いがあったからじゃなかったのかよ」
「ぐ……」

さすが跡部……、黒柳徹子ばりの記憶力や。面接シュミレーションを手伝ってもらった頃の志望動機を、未だに覚えとる。

「で、その絵本作家の才能を、お前は多少なりとも信じてるんだろ?」
「信じとるっちゅうか……荒さを削れば、ええもんになりそうっちゅうか」
「それを信じてるって言うんじゃねえのかよ」
「む……」
「だったらお前がその原石を磨けよ。それが編集者の本来の形だろうが」

返す言葉もなくなってビールを喉に流しこむと、跡部は「ふん」と鼻白んだ。
なんでこいつの方が、編集者のなんたるかをわかってんねん。そんでなんで俺は、そんな大事なことを忘れとったんや! 腹立つ!

「言われなくてもわかってると思うが、必ず輝くとわかっている原石を磨くのは楽しいぜ忍足。疲れてようがムカつこうが、成長が見えるからな」
「お前なんや、芸能マネージャーでもやってんのか」
「どうだかな。最近、そういう仕事も悪くないんじゃないかとは思ってる」
「はあ?」

さっきまで機嫌が悪かった跡部は、思い出し笑いをするようにクツクツと声をもらした。





コーヒーがつっかえたんか、しばらく咳込んだ伊織さんが涙目で聞いてきた。

「会社を辞めた忍足さんが、わたしをプロにする? それ本気で言ってるんですか?」
「もちろん本気や」

跡部に相談してその週に、俺は会社に退職届を出した。
自由にやってきたのが幸いして、担当変更挨拶だけで、たいした引き継ぎも無い。おかげで来週からは有給消化に突入や。
そういうわけで、俺はさっそく杉並の安アパートに住む作家・佐久間伊織の家に挨拶に来たっちゅうわけで。

「とりあえずサイト作ろ。ほんで、起業手続きはだいたい終わっとるんやけど、名刺に入れる絵、描いてくれる?」
「ちょ、ちょっと忍足さん、なに人のパソコン勝手に!」
「明日、自分の持ってくるから、今日はこれ使わせてえよ。サイト作らな」
「困ります! 勝手に人の家にあがりこんでプロだの起業だのサイトだの名刺だの!」
「1個、忘れてんで」
「え」
「キス、な?」
「な……」

アラサーやっちゅうのに、こないだのキスのことをぶり返したら中学生みたいに真っ赤んなる。
弱点がわかったらわかっただけいじくり回すのは、俺の性格や。

「もうええやん、諦めてはよ作業しい」
「待ってください、だいたい作家エージェントってなんなんですか」
「せかやら出版社と作家の架け橋やって言うたやろ。細かいことはあとや」
「細かいこと聞かないと納得できません!」
「アンタがこうしてぐちゃぐちゃ言うとるよりも、俺と一緒にやったほうがプロになれる確率が高くなると思わへんか? 俺は元透桜社の編集者やぞ」

理にかなっていると思ったのか、伊織さんは黙った。
目をしれっとさせて、多少は疑っている様子は見せるものの、俺を睨んだまま黙って作業机に着席する。そうや、それでええねん。黙って言うこと聞けアホが。

「事務所ちゃんとできるまで、ここの家賃と光熱費、事務所代として払うから」
「え! ホントですか!」
「……なにそのテンション」
「まあそういうことなら、仕方ないですね」

ニヤニヤが隠しきれてへんっちゅうねん。





そのまま、2日過ぎた。

「焼きそばできたで。食べる?」
「……ありがとうございます、いただきます」

俺が来てからというもの、彼女は作業机に突っ伏すように絵を描き続けていた。
焼きそばを彼女の机に置くと、真っ黒になった手がにょきにょきと皿をつかむ。

「どこまでできたんや、ちょお見せて」
「まだ3ページしか……」

絵本の案を出しては否定され、ブラッシュアップしても否定され、たぶん、あまり作品を否定されたことのない彼女にとって、この2日はかなりつらかったやろうと予想がつく。
なにより、頬がこけとった。

「あかんね。ここさ、ちょっと笑わそうとしてるやん」
「だって忍足さんが笑わせてって言ったじゃないですか」
「クスッとする程度のもんなんかいらんのよ。もっとがっつりパンチのある内容で笑わせて。あとそこまでに何回かクスッとしたい」
「そんなの、無茶です」
「なんも無茶やない。これもやり直し」

赤ペンで原稿に『×』をつける。
これを何度もくり返されるたび、伊織さんの顔はどんどん歪んでいった。
ん、そろそろくるなこれは……まあ1回くらい爆発してもらった方が、闘志も燃えるからええ。それにこれは、焚き付けとるわけとちゃう。絶対的センス構築のために必要なことや。

「自分さ、なんでこれが面白いと思ったん」
「なんでって……面白くないですか? この部分が、こうなって……ここで、天丼して」
「せやから、それがなんで面白いと思ったん?」
「だからそれは……天丼あるし、今後の展開が、予想を裏切ってるはずだし」

跡部が言ったとおり、俺は作家の才能を信じとる。編集者にとって、作家が面白いというものは『絶対』や。それがこっちに伝わってこんのは、作家の深掘りが足らんか、表現方法が間違っとるだけ。俺の仕事は、その根っこを引っ張り上げるだけ。

「もっと違うベクトルから描いた方がええ気がするな。この人物の表情も硬い」
「違うベクトルって、どういうことですか」
「それ考えるのは伊織さんの仕事やから」
「じゃあ言わせてもらいますけど、ただ単純に面白くないって言われても困ります。違うベクトルならそれで、ベクトルの方向性を教えてくださいよ!」
「面白くないとは言うてへん。面白くなるはずやのに、なんかボタン掛け違えとると思って」
「だからそれなら、忍足さんが面白いアイディア出してくださいよ!」

きたで……。
絵本に限らず、漫画も小説も、新人作家はこの壁にぶつかる。
未熟やな。人間としては30年そこら生きとっても、作家としてはまだ幼稚園児や。

「伊織さん」
「冗談じゃないですよ、一生懸命に考えた作品、こんなふうに何度も何度もバカにされて、上から赤でバッテンまでつけられて、ゴミですか!? わたしが描いたものは、ゴミですか!」
「伊織さんて」
「こないだから30回くらいこんなことくり返してて、いくらわたしをプロにするためだって言ったって、そりゃ感想を言うのは楽ですよね! だったら自分でやればいいじゃないですか!」
「それ、いっちゃん言うたあかんやつ」

正直、こういう作家の爆発に、俺は慣れとる。みんな揃いも揃っておんなじことを言う。
「だったらお前が作ってみろ」と。この言葉に、実は作家がいちばん惨めな思いをしとること、俺は経験上、よう知っとる。
伊織さんも惨めになったんやろう。唇を噛みしめて、焼きそばを口に放り込みはじめた。
どの作家もそうであるように、言ったあかんことっていうのは、伊織さんもわかりきっとったはずや。でもそれを言うてもうたから、泣くのを我慢しとるんやろう。

「代替案を出すのは編集の仕事やない。それは作家の仕事や。編集者が代替案を出したら、伊織さんはゴーストやないか。俺の仕事は、感情のリクエストや。ここでこう感じた、ここでもっと笑いたい、とかな。読者の代表やねん」
「……わかってます」
「頭でわかってても、ついてこんのやろ、気持ちが」
「わかってるんです! でも悔しいから!」
「プロになるんやろ。俺もなってほしい。それやったら、俺の感情のリクエストにもっと耳を傾けてほしい」

伊織さんの焼きそばをすする音だけが、返事として戻ってきた。





「はあ……やっとできたわ」

忙しくてしんどいのは、なんも伊織さんだけやない。
俺かてこの数日、起業のための手続きやら名刺やら挨拶やら、俺に賛同してくれる作家やらの説得でもろもろ忙しかった。
そんなかでも、久々のことすぎてしんどかったのは、ウェブサイトの作成や。

「うわ……もう4時やん」

そろそろ空が明るくなる時間やと知って、自分の無力さにげんなりする。
学生の頃にHTMLは勉強したから、こんなんデザイナーに頼まんでも自分でやったると意気込んだ俺がアホやった。最初から金だしてプロに頼んどったらよかったのに、せやけど、もうやりはじめたもんは止まらんし。
とはいえ、なかなかええ佐久間伊織のサイトが出来た。自分の会社のはあと回しや。

「伊織さん見てみ。なかなかええサイト出来たで」

声をかけながら作業机に顔を向けると、本人はぐったりと机の上に突っ伏して寝ていた。
さっきまで起きた姿を見ていただけに、いつのまに寝たんやろうと思う。
達成感を分かち合いたいときに、ひとりだと思い知らされるのはなかなか寂しい。

「よい、寝てんのか」

寝ていることはわかっているのに、作業机に向かっていった。ところどころ、黒くなっている指先で顔をこすったのか、その頬にはインクがついている。

「アホ面……」

人差し指の背でその頬を撫でると、伊織さんの眉間に若干のシワが寄って、それが面白くてもう一度撫でたとき、俺はようやく自分の行動に気づいて、唖然とした。

「なにしてん俺……」

HTML駆使しすぎて頭わいたんか。
あかんあかん、ちょっと離れた方がええ……しばらく一緒におって変な情がでてきたか?
とりあえず帰ってシャワー浴びて、どないかせんと……。

「忍足さん?」
「え!」

作業机から離れて頭をかきむしったところで声がかかって、俺は急いで振り返った。
まさか本当は起きとったとかやったら、あかんもう俺、死にたい!

「どうかしたんですか……すごい、顔してますけど」

寝ぼけ眼をこすりながら上半身を起こして俺を見る。
よかった、どうやら気づいてないみたいやな……もう、びっくりさすなよ。別に触りたかったとかちゃうし、変な誤解されても困んねん。

「ちゅうかさ……」
「ふぁ……なんですか」
「自分、ものすごい顔してんで」
「え」

こすった目まで真っ黒になった伊織さんの顔は、冗談抜きでひどいもんやった。
冷静になろう、俺。俺がこんな女に気持ちもってかれとるわけがない。
……なんで触れたんや、ホンマ。アホか俺。





売れる大人の絵本は、読者の7割が女性や。
つまり佐久間伊織をデビューさせる近道は、彼女に女性ファンをつけるところから始まる。
作りたての、俺の貯金しかないような会社で宣伝費はかけられへん。こうなったらもう、自分の足をつかって宣伝していくしかない。

「どこ持っていくんですかそんなに! これもこれも、自費出版なんですよ!」

ウェブサイトが出来てから数時間後、俺は自宅でシャワーを浴びて、堅すぎないカジュアルスーツを来て、再度、伊織さん宅(兼事務所?)に来とった。
俺は伊織さんの部屋の隅においやられとる絵本を手に、営業に回ろうとしていた。

「自費出版やからなんやねん、こんな何冊もゴミみたいに山積みで」
「美容院に置いてくるってどういうことですか! 儲け無いじゃないですか!」
「お前な、こんな1500円もする素人の絵本、誰が買うねん」
「だからって美容院にタダ置きですか!?」
「取れるとこからはなるべく取ってくるって」
「そもそもなんで美容院なんですか……女性ファンってのはわかりましたけど」

なんちゅう顔……全然、納得いってへんやないか。

「ええか伊織さん。女性がよく行く場所で影響力があるところ、それが美容院や」
「それはわかりますけど……」
「俺の友達に美容師やっとるやつがおる。前にそいつに聞いた話やと、店に12席あって、だいたい1日に3から5回転して40人前後の客が来るらしい」この数字は美容院業界じゃかなり高いほうやろな。さすが仁王や。
「はあ……」

算数が苦手なんか? 目をキョロキョロさせはじめたで、このアラサー。

「人が髪を切るのはだいたい早くて1ヶ月、2ヶ月くらいやな? ちゅうことはそれくらいの規模の店でもだいたい1000人は定期的に客が来るっちゅうことになる」
「……えーっと、はい」
「あんたも美容院は行くやろたまには。そんとき、美容師となに話す?」
「最近の映画とか、おすすめの音楽とか?」
「美容師におすすめされると、女性の頭の中には『これがトレンドなんや』と刷り込まれる。それは美容師が女性客にとってオシャレな人やからや。つまり多くの女性がオシャレな人やと認める美容師から『この絵本は面白いよ』と勧められれば、その場で絶対に読むはずや」

伊織さんの目が、ようやく見開かれた。

「あんたはこれから俺がデビューさせる。それまでにファンがいる。これから最低でも10冊の絵本を出してもらう。全部1冊1000円やとして、10冊で1万円。1万円かけてくれるファンを1人獲得するためには本来500円から1000円くらいの宣伝費はかけてええんや。どうせこれ、原価500円もせんやろ」
「む……」
「しかも郵送料は俺が自分の足で引き受ける。美容院400店舗に2冊置いてもらうとして、1000人のお客さんのうち、2、3人が伊織さんのファンになってくれれば宣伝としては効果的や、わかるな?」
「なるほど……なんとなく、わかりました」
「ちゅうことで、あんたの仕事は俺の営業に口出すことやない。ぐちゃぐちゃ言うてる暇あったら、とっとと売れる絵本描け」

そう言い残した俺が伊織さんの部屋の扉を締める瞬間、彼女の目の色が変わったのを、俺は見逃さんかった。
その意思の強い目が当分見れんようになるやなんて、俺には考えも及ばんかった。





「とりあえず、杉並までお願いします」
「はいよ」

13店舗回って、俺はぐったりとタクシーに乗り込んだ。
結局、ちゃんと買ってくれそうなのはほとんど押し売りの仁王のとこだけやったな。ほかはみんな怪訝な顔して「まあ、無料なら別にいいですけど……」ときたもんや。
それもまあ、しゃーないかと、ひとりで黄昏れとったときやった。タクシー無線に、おっさんの慌てた声が飛び込んできた。

『杉並、杉並……火事、燃えてる』
『……アパート?』
『アパート、阿佐ヶ谷』
『マンション……』
『杉並……マンション、マンション』
『着地……阿佐ヶ谷、渋滞』
『阿佐ヶ谷2の5……』

阿佐ヶ谷2の5……? 近ないか? 伊織さん家に。

「運転手さん、いまの無線、阿佐ヶ谷って言うたよね?」
「言ったね……お兄ちゃん、どこなの」
「阿佐ヶ谷に行くんや」
「まずいなあそれ。大丈夫かなあ」

俺は伊織さんに電話した。
いくらコールが鳴っても、伊織さんは出ない。
嫌な予感がするっちゅうのは、こういうときやよな。

「運転手さん、急げます?」
「兄ちゃん家なの?」
「いや、ちゃうけど知り合いの家が、近所かもしれへんくて」
「なら、電車乗ったほうがいいかもしれないよ、大渋滞かも」
「わかりました、ほな近くの駅前で降ろしてください!」

俺はタクシーを飛び降りて、電車に乗った。
SNSを見る限り、やっぱり火事現場は伊織さんの家の近くやった。
もしも、もし、伊織さんの家やったら。
最寄り駅について死ぬほど走って5分、俺は目的のアパートの外観を見てほっとした。
近所は近所やったけど、燃え移るほど近所やなかったことが、遠目から見てもわかった。

「もう、なんやねん……」

無駄に体力使わせよって。まあ、無事やったならそれはそれで、ええけど……。
と、チャイムを押すと、伊織さんが火照った顔で出迎えてきた。

「ただいま。火事、ここやなくて安心したわ」
「はい、そうなんですけど、もっと衝撃的なことが……」
「は?」
「個人的に、なんですけどね」

よくみると、玄関先にもうひとつ靴が並べてあった。大きさからいって、明らかに男物や。
遠くにいる人影に目を向けると、なかなかハンサムな男が、ちらりと見える。

「誰や」
「それは……」
「はよ言え、誰や」
「元カレ、です」

俺が心配してこんな急いで帰ってきたっちゅうのに、元カレやと……?
そんなむっとした自分の心の動きに、内心、引くほど驚いていた。





to be continued...

next>>06
recommend>>TOUCH_05



[book top]
[levelac]




×