ファットボーイ&ファットガール_03


「お前さあ」

「うん〜?」


「跡部の何が良かったわけ?」

「そうだなあ……強いて言うなら、紳士的なとこ!」















ファットボーイ&ファットガール














3.






佐久間がそう答えて、俺は間髪入れずに「はあ?」と口を開いた。

跡部が紳士的って……笑わせるのは顔だけにしろぃ。

とか言ったらぶん殴られるんだろーけど。


「ウソつけよ、どーせ顔だろぃ?」

「そりゃ顔もあるよ!だって文句無しでカッコいいじゃんあの人!」


「ほら顔しか見てねえ」

「違うね!顔だけならうちの学校だってイイ奴いっぱいいるよ。それこそ仁王だってアンタだって顔だけはいいじゃん!」


「てめえそりゃどういう意味……」

「でも跡部くんは違った!なんか、紳士的だった!そのオーラが出てた!ホントに王子様みたいだったもん!」


ホントに王子様みたいだったもん……?きっもちわり。

マジかよ……大丈夫かこいつ?

目をキラキラさせながら、佐久間は何度もウンウン頷いては顔を緩める。

ダブルデートの帰り道、家路は結局こいつと二人になった。

さっきから頭の中で跡部を思い出してはそれを口にしなきゃ気が済まねえのか、いろいろと俺に聞いてくる。

なんつーか、正直マジ面倒臭いし、気持ち悪りい。

つーか紳士的って意味わかってんのか?


「で、俺や仁王は王子様じゃねえと?」

「だって仁王は詐欺師じゃん。アンタはただのチンピラ」


「あぁ!?」

「ほら、ガラ悪っ」


げんなり顔をした佐久間になんかスゲーむかついたから頭をどついたら、「何すんのバカ!」つってどつき返された。

佐久間は跡部の本当の凶暴さを知らねえからこんな暢気なことが言えるんだ。

跡部のことが好きな女子は多いだろうけど、まさか佐久間が跡部に一目惚れするとは思ってなかった。

俺はなんか、その事実が腑に落ちねえっつーか……なんつーか。


「……つか結局お前、その辺の女と一緒なんだな」

「は?」


「なんだよそのすっとぼけた顔。イライラさせんなよ」

「な、何いきなり。勝手にイライラしてわたしに当たらないでよ」


「あーはいはい。じゃあな。俺こっちだから」

「あーそうですね。あ、ていうかさあ!」


歩いてっといつの間にかまたあの分かれ道に差し掛かってて。

俺はなんだかよくわかんねえイラつきを抑える為にさっさと佐久間と距離を取ることにした。

で、そのまま背中を向けて手を振ったと思ったら、佐久間が大声を張ってきて。

その元気そうな声に意味もなくまたカチンときた俺は、顰め面して佐久間に振り返った。


「なんだよ」

「だから何キレてんのアンタ……どうでもいいけど。てかさあ、ねえ、丸井ってさ、跡部くんと仲良い?」


「良いわけねえ。じゃあな」

「ああああああ!ちょっと待ってって!ねえ、もう一回、会いたい!」


「氷帝行きゃ会えるだろぃ?じゃあな」

「だああああああ!だからちょっと待ってってばあ!」


俺の素っ気無さに佐久間は近づいて服ごと引っ張りやがった。

その見え見えな話、俺は絶対引き受けねえからな!!


「俺はそういうのスゲー嫌いだから無理!頼むなら仁王にしろよ。じゃあな!離せ!」

「痛っ……!な……そんな怒らなくったって……」


不機嫌MAXになった俺は、佐久間の言葉も聞かずに歩き出した。

どうやらもう追ってくる様子はない。

ったく冗談じゃねえよ!なんで俺がお前と跡部の仲を深めるような真似しなくちゃなんねんだよ。

めんどくせー!


「いいだろバカヤローーーーー!!丸井のバカーーーーー!!」

「……っるせんだよバカ女ーーーーーー!!」


後ろから叫んでくる佐久間に叫び返して、ダブルデートは終わった。










跡部くんと会った日からもう5日が過ぎて、すでに週末を迎えようとしていた。

あの日から今日まで、仁王と丸井と千夏とわたしとの4人ランチを一度しているのだけど、仁王にお願いするタイミングが見当たらなかった。

跡部くんの話は散々したのに、言うに至らなかったのはどこか緊張してしまったから。

丸井にはあんなに簡単にお願い出来たのに、やっぱり人の彼氏に頼むのは気が引ける。

でも仁王に頼まなきゃどうにもならないこともわかってる。しつこいようだけど丸井はあの通りだし!

更に、千夏から仁王に伝えてもらうという手もあったけど、そういうお願いごとは自分でするべきだと思う。

だからやっぱり、チャンスは4人ランチの時しかないと思っていた。


「千夏さあ、今日も仁王とランチでしょ?」

「うん、伊織もおいで。今日は丸井くんも来るって。久々だね、月曜以来か!」


「だねー。千夏と仁王の二人の邪魔はちょっとね……やっぱりむかつくけど丸井が居たほうがいい」

「最近は割りと仲良くやってるじゃん。確かにちょっと口が悪いけどね、丸井くんは。でも顔だけはいいよね。ホント。それは伊織の言うとおりだ」


あははっと千夏が笑いながらそう言った時、千夏の後ろに当の本人が来ていた。

わたしがぎょ、と目を見開くと、千夏は「え?」と口を半開きにして後ろを振り向いた。

瞬間、丸井の何気に太い腕が、千夏の首を後ろからぐっと締め上げる。


「いぎぎぎぎぎ!!ごめ、ごめ!!」

「誰が、顔だけはいいって?」

「いいい、いや、丸井くんは顔も性格も最高だって話……!」


こうやって見てると、じゃれ合っているようにしか見えない。

いいんだろうか。後ろに思い切り仁王がいることに、丸井は気付いてないんじゃないだろうか。

それにしても丸井って、千夏とはなんだか仲良しなんだよね。

わたしとはツンケンするくせにさ。この差は一体なんなわけ……なんか、面白くない。

と、変にモヤモヤとしていたら、いつの間にか仁王が近づいてきていた。


「ブン太、覚悟の上じゃの?」

「げ!?え!?あ、いや、これは、その……!!」

「あー、苦しかった」

「千夏大丈夫?」

「うん大丈夫。伊織も今度丸井くんにやってもらいな。ホント苦しいから」

「嫌だし」

「俺の女に手を出すじゃなんじゃ、ええ度胸しちょる」

「違う仁王!!今のはだな……てか佐久間気付いてたんなら言えよ!!」

「え、だって面白いじゃんこっちの方が」

「ああ!?こういう時だけ黙りこくりやがって!!いつもはウルセーのによ!ぎゃあはははは!!仁王やめっ……」


わたしに悪態をついた後、丸井はどぴゅーっと逃げていったのだけど、きっとその丸井を追った仁王に追いつかれたのだろう。

なんだか笑っているような泣いているような声が廊下中に響き渡っていた。

何をされているのか怖くて想像が出来ない……。


「仲良いね、あの二人は」

「だね。あれ?うちらだって仲良いじゃん」


「いやいや、それは当然でしょ」

「じゃ誰と誰を比較したわけ……?」


「……うーん、どうだろね!」

「なあに、変なの千夏!」


二人を追いかけるように、お弁当を持ってゆったり移動していた時。

千夏はぼんやりとそんなことを呟いて、笑いながらも浮かない顔をしていた。

最近この顔よくするんだ……仁王と何かあったんだと思う……聞いてみたいけど、千夏から話してくれるのを待つことに決めたのはつい二日前のことだ。

だけど、一方の仁王はすごく普通。

つまり千夏の中だけで、何か思うことがあるみたい……仁王に気付かれてなければいいけど。

そんなことがきっかけで喧嘩とかになっちゃったら、このランチの時間も微妙になってしまう。

……あれ……わたしなんだかんだ、この4人ランチ、楽しみにしてない?


「遅い遅い」

「あなた達が早すぎるんだってば」


いつもの教室に到着すると、仁王と丸井はすでに弁当を開けて待っていた。

わたしと千夏は苦笑しながら席につく。

さっき丸井が何されてたのかやっぱり気になるけど、丸井のよれよれの制服を見てだいたいの想像がついた。


「いただきます!あ、ねえいきなりなんだけどさあ、仁王」

「ん?なんじゃ?」


「こないだ言うタイミング無くしたから、もう最初から言うよ」

「どうしたんじゃ佐久間。畏まって」


パカ、とお弁当のふたを開けておかずを口に入れる前に、わたしは思い出したようにそう言った。

さっさと言ってしまった方がいい。タイミングを計ったりするから言いづらくなってしまうんだ。

千夏の彼氏を使うわけじゃない、協力してもらうだけなんだし。


「あの……わたし、跡部くんともう一度会いたくて……」

「ぐっ……!」

「出た、また跡部のうっぜえ話」

「うるさいなあ丸井。黙っててよ。てか、どうかした千夏?大丈夫?」

「い、いやいや、ちょっとこのチキン、一口が大きくて……あの……え、伊織、本気なの?」

「え、千夏、わたしの話あれだけ聞いて本気じゃないと思ってた?」

「いや……思ってなかった……けど……」


チラ、と千夏は仁王の方に顔を向けた。

仁王は涼しい顔をして千夏に視線を向けている。

何だかその二人の目配せが、恋人同士って感じで羨ましいと感じるのは、やっぱりわたしが跡部くんに恋してるからだろうか。

そして相変わらず丸井ブン太は、不機嫌MAXな顔をしていた。なんなのこいつは。


「実はの佐久間」

「……雅治、ちょっとまっ……」


仁王が何かわたしに言おうとして、千夏が仁王に何か言おうとした時だった。

ガラッと突然開け放たれた教室の扉。

その音に全員が一斉に視線を向けると、そこにはにっこりと笑っている恐怖の人。


「佐久間、跡部に会いたいの?」

「え、な、なんでそのこと……」

「いま聞いてたからだよ」

「盗み聞きはやめんしゃい幸村」

「人聞きが悪いよ仁王、盗み聞きじゃなくて、聞こえてきたんだよ」


涼しげな顔をして仁王を見ている幸村は、実はこの立海内で密かに恐れられている人だ。

なんだか怖い感じがするから、ファンの女子達も大騒ぎしない。

以前、彼にしつこくした女子がある日突然、幸村に近寄らなくなったこともある。

何があったかは絶対に語らなかった彼女は、幸村に酷く怯えていたという噂……本当か嘘かはわからない。


「んで?幸村はなんで俺らを探してたわけ?」

「ああ、ちょうどいい話だよ、佐久間」

「いや、話しかけてるの俺だろぃ……」

「うん、だけど佐久間にちょうどいい話なんだ。丸井と二人で行って来て欲しいな」

「は?」

「え?」

「これ」


すると幸村は、練習試合の申し込みと書かれたプリントをわたしの目の前に差し出してきた。

「それっ……!」とプリントを見て声をあげた千夏に、仁王が怪訝な顔をする。


「どうしたんじゃ千夏?」

「あ……いや……れ、練習試合かあ……って思って」

「実はね、青学から練習試合の申し込みがあってね」

「え!マジ!」

「それは……知らんかったのう」

「うんまあ、ついこないだの話だしね。それで思ったんだ。どうせなら、氷帝も入れて三校でやるのもいいんじゃないかなんてね。だから青学からの案内も添付してある。これを、部長の跡部に渡してきて欲しいんだ」

「!!……そ、その役目、わたしがやってもいいってこと?」

「ふふ。構わないよ。だけどいきなり佐久間だけ行くのは変だろ?だから、丸井も」

「なんで俺がこいつと!!」


丸井がガタンッと席を立って抗議しかけた時だった。

幸村は、ゆっくりと丸井に向けていた背中を反対へ向けて……


「なんとなくだよ。仁王と佐久間じゃ、吉井に悪いだろ?俺は用事があるし。最初は仁王と丸井に頼もうと思ってたんだ。だけど佐久間の話を聞いちゃったからね……丸井は嫌かな?」

「…………いや……いいよ、別に」


わたしは幸村の背中を見ているだけで、すでに怖かったけれど。

幸村が丸井へ向けていた顔がどんなものなのか、気にならなかったと言えば嘘になる。

だって、幸村が振り返った瞬間、丸井の表情が青くなったのを見てたから。











「でも幸村っていい奴!!わたしの恋を応援しようとしてくれてるってことじゃん!」

「あいつは面白がってるだけだって……」


「それでも会わせてくれる口実を寄越してくれたんだから、アンタより幾分かマシだね」

「あーマジうぜえ。お前さあ、跡部の前で口開かないほうがいいんじゃねえの?男って可愛げのある女が好きなんだよ。俺なんかお前みたいにうるさい女はNGだね。多分跡部も――――ッてえ!!」


なんで俺がこのバカ女のために……そう思ったらむしゃくしゃしてきて、俺はずっと機嫌が悪かった。

その腹いせっつったらおかしいけど、言うこともどうしたって刺々しくなっちまう。

いつもの調子よりも上乗せで悪態ついてたら、佐久間は容赦なく俺の頭を殴ってきた。


「いい?わたしがうるさくなるのは横にいるアンタがうるさいからなわけ。跡部くんの前でこんなにギャーギャー言いません。だって跡部くん、ギャーギャー言わなきゃいけないようなこと、きっと言わない人だもん。紳士だから」

「お前ぜってえ跡部のこと誤解してんな」


「してたらしてたで、彼のきちんとした姿を受け入れられるチャンスじゃん。ってかさあ、ちょっとは協力してやろうって気にならないの?まがりなりにも一応友達だよね?うちら」

「うわっ!気持ち悪っ!お前の口から俺と友達とか……!」


埒もあきそうにねえし、俺は話題を変えるために……つーか、本来のいつもの俺らの会話に戻すためにそう言った。

佐久間は案の定、「どこまでもむかつく奴だな!!」とか言いながら、気分は晴れ晴れしてんのか、笑って俺を攻撃してくる。

これだ、この感じ。

佐久間と俺は、憎まれ口叩いて叩かれてっつーのが合ってる。

実はちょっとだけ、楽しいとか思ったりしてる自分も、相当気持ち悪りいけど。


「おい、なんだよ。来いよ」

「ちょ、ちょっと待って」


そうこうしてるうちに、氷帝前に到着した。

俺がそのままあっさり校門通ろうとしたら、いつの間にか横にいたはずの佐久間が消えてた。

振り返ったら、少し離れた場所で佐久間は立ち止まってて。

俺が声をかけたら、緊迫した顔で深呼吸を繰り返してた。


「よ、よし、行く……頑張る!」

「告白するわけじゃねえだろぃ?めんどくせー女」


「……丸井なんか死ねばいい」

「いきなり物騒だな……あっちだぜ、テニスコート」


俺が指差すと、佐久間は大きく目を見開いてテニスコートを見ていた。

そりゃそうか。誰でも初めて見たら、学校にこんなでかいテニスコートがあることに驚く。

一番強えのは俺らの学校だってのに、施設は氷帝が一番すげえ。さっすが金持ちだよな。


「な、なにこれ……」

「聞いてるだろぃ?氷帝は金持ち学校」

「聞いてるけど……だって……」

「テニス部員は約200人。うちとは比べモンになんねえって。入るぜ」

「え、あ、うん」


口を開けたままぽかんとしていた佐久間を促して、俺は佐久間の背中をポンッと叩いた。

観客席に行こうかとも思ったけど、それじゃ跡部に直接会えねえし、ギャラリーは多いし。

結局、俺は堂々とレギュラーが集まるベンチに進んだ。

進むまでにギャラリー避けなのか一年達が壁みてえになってたけど、俺を見たら道をあけていく。

うーん、これぞ丸井ブン太様だな!


「丸井って……やっぱり有名人なんだ?」

「ま、俺みたいなボレーの天才は他にいねえし?」

「アンタのその天才的妙技だかなんだか、見たことないよわたし」

「あー、それ、人生の80%損してるぜ」

「もう生きてる価値もないじゃんそれ……」


佐久間がそう言った直後に息を呑んだのが俺にもわかった。

ベンチに入るとよく見える。

跡部はもちろん、ほとんどの部員が練習をしていた。

レギュラー陣は他の部員達とは距離を置いた場所でポール当てをしてる。


「あれえ?丸井やん?」

「ん?おおー、忍足じゃん。ひさ」

「久しぶりやなあ?彼女連れて何しに来たん?」

「彼女じゃねえし!」

「違います、本当に」

「いや……自分らそんな否定せんでも……」


俺は当然だけど、跡部の背中をしっかり見つめてた佐久間も、後ろからいきなり出てきた忍足の言葉に即座に否定した。

否定するのはまあ、当然なんだけど……佐久間のやけに冷静な否定の仕方は、なんかむかつく。


「で?何?偵察かなんか?」

「ああ、ちげー。跡部に挑戦状を渡しに来たんだよ。ほれ、こいつが持ってる……」

「ほう……?なら俺が預かっとこか?」

「結構です!」


これも即座に(強めに)否定した佐久間はまたすぐに忍足に背中を向けた。

忍足も結構なイケメンだって俺は思うんだけど、今の佐久間には跡部の背中しか見えてねえみてえで。

いきなりな態度の佐久間に、忍足はぎょっとしてた。

ぷぷっ……ざまー。こういう忍足が見れんのは、なんかすげえ楽しい。


「……丸井……なんやいきなり、ごっつ嫌われとらん?俺……」

「ま、しょうがねえよ。恋路を邪魔しようとする奴は嫌われるだろぃ?」

「はあ?」


俺のニタニタした笑いに「わけわからん」と呟いた忍足が俺らのいる場所から離れた時だった。

いつのまにか、レギュラー陣と位置を変わって今度は普通の部員がポール当てをしてて。

移動しようとしてる跡部を見つけて佐久間が声を掛けようとした時、遠くから叫び声が聞こえてきた。


「あー!!危ない!!」

「ッ!?危ねえ!佐久間!」


俺が叫んだ目線の先には、結構早えスピードで佐久間の顔面目掛けてテニスボールが飛んできてて。


「えっ」


またか!!と思った瞬間だった。

また、佐久間が事故に遭っちまうって、俺はそのことで頭がいっぱいで、とにかく、佐久間を守るしかねえって……そう、思って、佐久間の腕を掴む寸前だった。

スコーンって、すげえいい音がして。

見ると、佐久間の眼球がこれでもかってくらい開いてる目の前に、跡部が背中を向けて立っていた。

ラケットを、自分の目の前に掲げてて……一瞬、どよめいたテニスコートが静かになって。


「…………っ……部長、すいませんでした!!」

「てめえはコントロールが悪すぎる。精神の乱れが原因だ。グラウンド10周して、頭冷やして来い」

「は、はい!!」

「……ふう……大丈夫か?」

「……あ……はい……大丈夫、です……」

「こんなとこ突っ立ってたら危ねえだろうが。怪我はないんだな?」

「……はい……ごめんなさい……ありがとう……」


跡部が振り返った先の佐久間は、多分、「やっぱり王子様到来」って思ってたに違いねえ。

佐久間全体が異常なくらい固まって、跡部を見つめてた。

俺は、この展開にどこか腑に落ちない悔しさを噛み締めてたけど……それがナンなのかは、全然わかんなかった――――。





to be continue...

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