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 壁ドン

わたしは漫画が大好きで、待機所で待機してる時は何をしててもわりかし自由なので、持ち込んだ漫画を読んでいる事が多い。

「……っ、ふふふ」
「……」
「……ふっ……あははは!」
「……そんなに面白いの?」
「あ、ごめん。カカシも読む?」

俺はこれがあるからいい、と、いつものオレンジ色した表紙の本を、カカシが目の前にかざしてみせた。「そう?面白いのに」わたしはまた続きを読むのにとりかかる。最高に笑えるんだよねーこの漫画!

「……」
「……うっ…」
「……?」
「……ぐすっ」
「……さっき笑ってたとおもったら、もう泣いてるの?」

カカシに呆れられつつも、涙が止まらない。笑いだけでなく涙も止まらなくなる名作なのだ。忍として日頃冷静に任務をこなしているこのわたしでも感情ががんがん揺さぶられる。

はぁ、とため息を一つついて、カカシが愛読書をパタンと閉じた。あ、わたしうるさくしすぎたかな……。冷や汗をかいていると、向かいに座っていたカカシがこっちにきて、わたしの横に腰をおろした。そしてわたしの手元をのぞきこむ。

「な、なんですか……」
「いや、そんなに面白いのかなと思って」
「え?もしかして興味を持ってくれた?」

嬉しくなって、一巻ならもってきてるよ、と積んでいた漫画の中から探そうとしたわたしだったが、「大丈夫。お前が読んでるのを隣で一緒に読むから」と言われてしまった。


カカシに覗きこまれながら続きを読むのは、なぜか落ち着かない気持ちだった。隣にいるカカシが近すぎて……呼吸も熱も感じられるくらいに。まるで恋人同士のような距離感で、なんだかドキドキしてしまう。意識しているとバレるのは気まずいし、わたしは必死に何てことない表情を装って、ページをめくった。

『俺だけ見てろよ!』

見開きで大きく書かれたセリフ。主人公が俺様系イケメンによって壁ぎわに追い詰められている。これはいわゆる…壁ドン…!

「こーゆーのが好きなの?」
「へっ……!?」

隣のカカシが不敵な笑みを浮かべた。

「やってあげようか?」

低い声で囁くように言う声が、やけに色気があって、わたしはよせばいいのに頷いていた。壁ドンに対する憧れとともに、この変な雰囲気に呑まれて頭がおかしくなっていたらしい。



壁ではなく長椅子の背もたれに手をついたカカシに至近距離で見下ろされて、身動きとれなくされた上、低くて甘いその声に「俺だけ見てろ」なんて言われたら。「はい」以外にどんな返事ができようか。

漫画以上に現実は、面白くて時に切なく甘くて苦くて忙しい。




「それで、この後は?キスしていいの?」
「えっ?!」






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20170420

カカシに壁ドンされたかっただけの話。




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