▼ すーぱーだーりん(現パロ)
最近毎日「今年一番の冷え込みです」とアナウンサーが言っている気がする。今日の最低気温は1℃らしい。こんなに寒いと何処にも出かける気になれなくて、せっかくの休みだというのに二人で一日中部屋に籠もって過ごした。
ご飯を食べたり、それぞれ溜めてた漫画や本を読んだり、あまり面白くないテレビをみたりしているうちに時間が過ぎて。
眠たくなったのでお昼寝しようと思って、ベッドで本を読んでいるカカシの隣にもぐりこんだ。……すぐに寝かせては貰えなくて、大人しく本を読んでたはずなのにそれを中断したカカシによって、あれやこれやされてしまい……それからやっと、少しだけ眠って、気がつくともう夕方になっていた。
「お腹すいた……けど、冷蔵庫になんか残ってたっけ」
同じ毛布を共有して隣に寝ているカカシに聞いてみる。
「何も無かったかもね」
うつ伏せで、また読書を再開していたカカシが答える。ついさっきまで、あんな熱っぽい目をしていたのが嘘みたいな飄々とした横顔だ。
「寒いし、外出たくないなぁ」
「同感だよ」
けれどツナ缶とトマト缶だけのパスタを作るんじゃ味気ない。やっぱり買い物行かなきゃ駄目かなぁ。
まだ動く気にはなれなくて、私はスマホを取り出してニュースサイトを見はじめた。字を見るだけで気が重くなるような事件や事故だとか、議員のだれそれが汚職しただとか、芸能人の誰と誰がお泊まりデートをしただとかの、心底どうでもいいと感じてしまうタイトルを流し読みしていき、イルミネーションに関するトピックは気になって、中身を読んでみた。
ここからそんなに遠くない場所で、大きなツリーがライトアップされているらしい。明日にでも行ってみない?って、カカシに言ってみようかな。でも、明日はもっと寒いかも知れない。カカシも寒さに弱い方なので、出かけたくないって断られるかも。
「はぁ、お腹へった」
観念して起きようと思っていると「コンビニ弁当でも良い?」とカカシが言った。
「買ってきてくれるの?」
「オレも腹減ったから」
カカシは毛布から抜け出すと、床に脱ぎっぱなしにしていたカーキ色のパンツを拾って穿いた。ベルトのバックルがかちゃかちゃと微かな金属音をたてる。私は毛布にくるまったまま、体を起こしてカカシを見上げた。
「一緒に来る?」
「……うーん」
「寒いし出たくないんでしょ」
「えへへ……」
「仕方ないなぁ」
カカシはパーカーのチャックを目一杯あげて口元を覆った。そのまま出て行こうとするので慌てて止めた。
「コート着てかないの?それじゃ寒くない?」
「これ分厚いから大丈夫だよ」
確かに前に借りたとき、あのパーカーは裏地がもこもこしていてすごく温かかった。けれど、コンビニまでたった5分とはいえ、今日は最低気温1℃なのだ。アナウンサー曰く今年一番の冷え込みらしいし。
カカシが部屋を出て行ってしまったので、私は急いでベッドから出て、クローゼットからロングコートを取り出した。玄関で靴を履いているカカシにそれを持っていく。
「さむいー」
廊下はものすごく寒かった。凍えながらカカシにコートを差し出すと
「そんな格好でうろうろするから……」
と、呆れたようにカカシが言う。私の今の格好は、上は長袖をきているけれど、下は下着しか履いていない。こんな格好に私を剥いた張本人を無言で睨むと「口尖らせちゃって、キスしたいの?」とカカシは脳天気に笑った。
「ありがとね」
私の手からコートを受けとり、カカシは私の頭を撫でると、唇に軽いキスをした。
「じゃ、行ってきます」
「……行ってらっしゃい」
玄関のドアが開いて、冷たい空気が流れ込んできた。
またベッドに戻って毛布にくるまっていると、10分としないうちにスマホが震えた。見るとカカシからラインが来ている。
『何食べたい?』
『麻婆丼でお願いします』
『それだけでいいの?』
『うん』
既読になって少しして、またメッセージが届いた。
『アイスかう?』
『え?!最高!!!抱いて!!!!』
一気にテンションがあがってしまいおちゃらけた返信をうつ。
『何のアイスがいいの』
私の発言をカカシはあっさりスルーした。
『ハーゲンダッツがいいです。
カカシ大好き!!』
『ハーゲンダッツの何味?』
あくまで私のテンションの高さはスルーするつもりらしいけど、この真冬の寒い中、コンビニに行ってくれるだけでも嬉しいのに、アイスを買ってきてくれるなんて、なんて出来た彼氏なんだろうか。
『バニラ、ストロベリー、ほうじ茶ラテ、グリーンティー、マカデミアナッツ』
今コンビニにあるらしいハーゲンダッツの種類まで送られてきた。そんな律儀なところにも、ついにやついてしまう。
『ストロベリーとマカデミアナッツがいいです!』
調子に乗って二種類、頼んでみると、カカシからはスタンプが一つ返ってきた。
ぶちゃ可愛いパグが、「了解!」と喋っているシュールなやつだ。
カカシはあまりスタンプを買わないみたいだけれど、この犬のだけは買ったみたいで、たまに押してくるのがかわいらしい。
お茶を淹れようとお湯を沸かしていると、玄関のドアが開いてカカシが帰ってきた。
「おかえり!ありがとうね、寒かった?」
「寒いなんてもんじゃないよ」
カカシは白い息をはきながら、私にビニール袋を突き出した。一つにはお弁当が、もう一つにはアイスが沢山入っている。
種類を聞いたくせに、結局ハーゲンダッツが6個に他のアイスも買ってきたみたいだ。甘いのが苦手なのに……私のために買ってきてくれたらしい。
「ポイント高い……高すぎるよカカシ」
「何言ってんの。はぁ寒かった。とっとと夕飯にしよ」
「うん、早く食べよう!炬燵はあっためておきましたので!」
「ん。さっさと食べて、食べ終わったらしようね」
「しようって?」
「自分で言ったんじゃない」
カカシはまた溜息をつくと、突っ立っている私をすり抜けて、先に部屋に戻ってしまった。
20171223
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