冷蔵庫のラムネ
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4人でカレーを食べて、ごちそうさまをして、あたしはクシナさんを手伝ってお皿を洗った。そしたらミナトさんが、「もう夜も遅いし、カカシも晴ちゃんも泊まっていきなよ」と言った。ミナトさんの家にカカシとかと泊まることはよくあることなので、いちいち父さんに言わなくても大丈夫だろう。そのくらい、あたしとカカシはこの家によく入り浸っている。

それでも一応、ミナトさんは父さんに忍鳥を飛ばしてくれて、そう待たずに返事がきた。許可がおりたらしい。

「クシナも泊まっていくよね?」

ミナトさんが微笑みかけると、クシナさんは、ほっぺをちょっぴり赤くして、嬉しそうに頷いた。





カカシはミナトさんの部屋で、あたしとクシナさんは客間で寝ることになった。
クシナさんと一緒に眠るのは初めてだ。というか、クシナさんと二人きりになる事自体、そんなに無いかも。
布団をかぶって、部屋の電気を消して、もう寝るのかなって思ったら、急にクシナさんが声をかけてきた。


「晴ちゃんはカカシくんが好きなの?」
「はいっ!?」

思ってもみない言葉に素っ頓狂な声をあげてしまった。慌てて口元をおさえる。

「な、な、なんでですか?」
「うふふ、そうだったらいいなあって思ったの」
「ええ……?」
「だって晴ちゃんとカカシくん、何だかお似合いなんだもの」

あたしとカカシが??全然お似合いじゃないですよ。大体、あんなプライド高くて無表情で嫌味なやつを、あたしが好きになるわけないですって!!

否定しながらも、あたしの心臓は何故か落ち着きが無かった。なんでこんなに動揺してるんだろう。クシナさんがまた口を開く。

「カカシくんさ、良くミナトの前で、晴ちゃんの話をしてるのよ?」
「ええ?そうなんですか?」
「うん。二人とも仲良しだよねぇ」
「……まぁ、腐れ縁というか」

あたしはカカシのこと好きだけど……。いや恋愛的な意味ではなくて、いつもなんだかんだ言って、困ったときは助けてくれるところとか……今日みたいに、ここぞというときに来てくれるとことかが、って事。ほんと、カカシにはいつも、お世話になってる自覚がある。
でも、カカシの方ではあたしを、ドジで馬鹿でどーしよーもないヤツって思っていると思う。実際はっきり言われたりするし。今日だって馬鹿って言われたもんなぁ……。
あいつ、クシナさんのドジは笑うくせに、あたしのドジにはものすっごい冷たい目を向けてくるのだ。昔はそんなことなかったような気もするんだけどな…。

「あたしのことよりもっ!クシナさんとミナトさんはどうなんですか?」
「えっ……どうって……」

急に話を振られて、クシナさんはわかりやすいほど動揺した。いや、とか、ちがうってばね、とか言いながら、あうあう言ってるクシナさんは、暗闇の中ではわからないけど、きっと赤くなっているに違いない。あぁもう、やっぱりこの人、可愛いなあ。あたしは気づかれないように小さく笑った。




その夜は熱帯夜というやつで。窓を開けて寝たのだけど、風ひとつ無くてやたらと蒸し暑いから、あたしは何度も目が覚めてしまった。隣のクシナさんはというと、気持ちよさそうにすやすや眠っている。

あーもうだめ、暑すぎる。かけていたタオルケットをとっぱらって、体を起こした。夕方、カカシが買ってくれたあのラムネを飲みきれなくて、冷蔵庫に入れさせてもらったのを思い出したのだ。冷たいものを飲めば、気持ちよくなって寝付けるかもしれない。

台所は真っ暗で、当たり前だけど人はいなかった。冷蔵庫を開けて、冷え切ったラムネの瓶を取り出す。飲もうと思ってから、あれ?と違和感を感じた。

半分ぐらい飲んだはずなのに、瓶には七分目くらいまで、なみなみとラムネが入っているのだ。おかしいな、と思いつつ、まあいっか、って、あんまり深く考えないで、あたしはラムネを飲み干してしまった。

炭酸の少し抜けたラムネは、するすると喉を通過して、さわやかな甘さと涼しさを残す。汗がひいていくようだった。あぁ、今なら眠れそう。瓶を捨ててから部屋に戻り、相変わらず、すやすや寝ているクシナさんをちらりと見て、また横になった。

すぐに眠気がやってきて、落ちるように目を閉じた。

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