――告白――




これは幻覚か…?連日の徹夜で溜まりに溜まった疲れが見せる、都合の良い妄想?…そんな馬鹿なことを思ってしまう程、俺は激しく動揺していた。


「…き、聞いてます?塚内さん」

「えっ、あ、ああ、…え?」


たぶん今、自分史上最大のアホ面を晒しているに違いない。しかし開いた口は塞がらず、ただただ、目の前にいる部下を見つめることしか出来ないでいた。


――塚内さん、好きです。


つい数秒前に言われた言葉が頭の中でぐるぐるぐるぐる。聞き間違いかと思ったものの、いつもしっかりしているハズの部下の表情が真っ赤になっていく様子に、これはどうやら現実であると理解、した。


「へ、返事は…今じゃなくて、いいので」


そう言って踵を返す部下の腕を思わず掴む。自分でも驚くほど反射的に。もちろん何も考えちゃいないから、折れそうな細腕を力一杯に握ったまま固まってしまったのは言うまでもない。

互いに無言のまま見つめ合うこと三秒。大きな瞳をこれでもかと見開いた部下の頬が茹で蛸の如く紅潮し、俺の顔まで熱くなるのが分かった。


「ほ、本当か…?」


あまりに信じられない出来事に口をついたのは、疑いの言葉。部下の表情を見れば嘘ではないことは明白だったけれど、問わずにはいられなかった。


「…は、い」


呟くような小さな返答。どうしたらいいのか分からないものの、疲れが吹っ飛ぶくらい俺の頭の中は浮かれて、浮かれすぎて、そして。


「…お、俺も、」


――好きだ。どうにも恥ずかしすぎて口が回らず、その一言を言うのに数分の時間を要したが。

嬉しそうに、幸せそうに笑ってくれた可愛い部下を見て。俺もつられるように小さく笑った。




20201208


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