第十二章 繋ぐべきもの



第十二章 繋ぐべきもの


 リファムの活気と比べればそれほど盛んな市場には見えない。立ち並ぶ店に目新しい物は少なく、行きかう人々の顔も輝いているとは言いがたい。年中を通して日差しの強い気候柄、頭からすっぽりと外套を被ったり、大きな布を巻いて肌を守るその下には、ただ、今を生きるのに必死という焦燥感が見て取れる。

 どこか鮮やかさに欠ける町並みだが、石造りの街の精巧さはこちらの方が優れていた。さすがは鉱石の国と呼ばれるグラミリオンなだけある。時折、頭上にかかるアーチ状の橋が歩くカリーニンらに日陰を提供するが、落ちてきやしないかという不安をよそに見事な曲線美を見せ付けていた。

「髪の毛一本通さない緻密さで石を組み上げる技術が、グラミリオンのもう一つの売りでもあるからな。その技術を応用すれば立派な城壁や要塞が出来る」

 見慣れていても驚きがそのたびに更新されていく年頃なのか、次々と姿を見せる橋に歓声を上げるサークにカリーニンが話す。

「その技術の粋の一端がこの街というわけだろうが」

「ここはよそ者には優しくない作りだからね」

 前を行くジルが小さく振り向いて言葉を次ぐ。

「グラミリオンの街はここしか知らないけど、街そのものが要塞みたいなものでさ。市場以外で下手に動き回ろうとすれば必ず迷う。目印になるような建物も建てないし、ここは」

「……戦争の際、父神信仰に弾圧されそうになった一神教を守る行為の名残だな。民家に交わり、どこが宗教的活動の拠点なのかわからなくする。グラミリオンは政教一体の国だからな」

「お陰でとんだとばっちりを受けてる人間もいるんだけどさ。まあ、市場が利用出来る内は文句言わないよ、私らも」

 そう言うジルの後ろを歩くカリーニンやアスは笑って返すことが出来ない。

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