第十一章 その手のひらに
その考えに反し、ジルはきょとんとした目で見返した。
「何でさ。アスは魔物を倒したじゃないか。お陰で被害も少なくて済んだんだし。それに丁度買出しの時期だから、ついでってとこだね」
反論は聞かないとでも言いたげに、ジルは近くの椅子にかけられた外套を一枚、サークに渡した。同じように自分も外套を手に取り、その身にまとう。
「街は魔物よりも危険だよ。特に私やあんたたちみたいなのにとってはね。知ってる人間がいた方が何かと楽でしょ。……ね、『時の神子』さん」
アスは反射的に腰に下げた剣に手をかけた。カリーニンは極力表情の変化を見られぬようにしたが、思わず飲んでしまった息の音は聞かれなかったろうか。
だが、そんな二人の反応には構わず、ジルは外套のフードを深く被ってにこりと笑った。
「街に着いたらまず食べ物だね。武器屋は後にしないと荷物になりそうだ」
十一章 終
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