冬の心霊番組/玲流
今は冬だよな?
ツアーで色んな地方行ったりして、微かな雪を体験したりするから冬で、決して夏では無い。
俺は心霊番組って夏の定番だと思うんだけど、何で今やってる訳?
俺の恋人を喜ばせる為ですか、そうですか。
俺は怖いっつってんだろ。
「あ、れいちゃん今のわかった?あそこあそこ」
「いや、俺は何もわかんねー」
「えーほら、ちゃんと観ろよ」
「…………」
リピートスロー再生なんて必要ねーよ。
ツアーで少し間が空いて、一旦東京に帰って来て。
取材とかが詰まってんだけど、地方ずっと回ってたから家に帰るのは久々で。
コロンを迎えに行って荷解きして飯も食って、明日も頑張んなきゃなーって思ってリビングでコロンと遊んでたら、ルキが何処から仕入れたのか心霊番組やってるからって部屋暗くしてまで見てんだけど。
俺は苦手って知ってる筈なのに、ルキはこう言う類い大好きで嬉々としてコロンを抱っこして画面に食い入る。
ソファに座るルキの肩を抱いて自分に引き寄せればルキは俺に身体を預けて凭れ掛かる。
そこは可愛いんだけど、見てるモンが可愛くねぇ…ルキの顔をチラ見すると、楽しそうなね画面に見入ってる。
「…あー…やっぱ1位ともなると迫力あるな。俺らもMVとか廃墟で撮影したりすんじゃん?こう言うの映んねーかな?」
「映んねーよ」
「ま、それはそれで縁起悪ィかなー」
「そうそう、領域荒らしちゃ駄目だから」
「なーに、れいちゃん。怖いの?」
「わかってんだろ」
「うん。でも一緒に見てくれる所が、好き」
「…………」
「後、怖がってんのが可愛い」
「…シメんぞお前…」
「ふふ」
ルキが笑って、俺の肩口に甘える様に擦り寄って来る。
テレビ画面は、見たくも無い映像を垂れ流してて。
…まぁ、ルキが楽しそうにしてんのはいいけど。
時折、ルキのiPhoneからの某アプリの表示が見えて。
ルキはその内容を確認して、またテレビに視線を戻す。
「…誰?」
「猟牙。この番組教えてくれて、今実況中継みたいな感じで連絡来てんの」
「あいつ…余計な事教えて…」
「えー、可愛い後輩よ?」
「ルキさんはモテますからねー」
「そうそう。だからしっかり捕まえててね、ダーリン」
「手錠に首輪でいい?」
「そう言うプレイは俺には勘弁」
れいちゃんには、大歓迎だけど?
薄く笑ったルキの髪を撫でて、頭に唇を寄せる。
俺にも勘弁。
物理的な事はされるのは興味ねーよ。
ルキの嫉妬は、何よりも心地良いけど。
「あ、これ音でビビらせてるだけで中身大した事ねーなー」
「…………」
ちょっとテレビの存在忘れてた所に、主張する様に大きな音が鳴って驚く。
ルキは平然として、またテレビに視線を戻した。
自分もその映像を見て溜め息。
もうちょっとこう…恋人同士がイチャイチャ出来るモンを見てくれませんかね、ルキさん。
光るiPhoneを無視して、俺にピッタリくっついてテレビ見てる姿はそりゃ可愛いけどさ。
「あ、れいちゃんアレ、アレだよな心霊部分」
「……ウォーリーかよ」
格好付かないから、慣れると言う選択肢を早々放棄した俺の為に早く終わってくんねーかな、コレ。
終
20131221
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