淳子@れいたの嫁/玲流



仕事場でメンバー同士の打ち合わせ。
皆それぞれに意見を出し合ってより良い形を模索して行くのはいくら時間を使っても有意義だと思う。

そんな最中。


休憩中、ルキと新しく買ったアクセの雑誌を見て、これがいいだの形が綺麗だの、そんな話をしてると。
間延びした独特の方言の声が聞こえた。


「そういやれいた、いつの間に地方妻作ったん?」
「…は?何それ」


葵さんの言葉に直ぐに反応したのは、隣に座ってたルキの方で。
さっきまで楽しそうに笑ってた顔が一気に険しくなった。


つーか地方妻って何。
そんなの作った覚えはねーから言い掛かりはやめてくれませんか、葵さん。


ルキがすげー嫉妬深いのわかってっから、そう言う疑いの行動とか一切取らねーし、他人に興味ねーんだけど、俺。

それでも、葵さんは呑気な声で話を続ける。


「最近ちょぉ知り合ったんやけどな。今勢いあるらしいやん。ゴールデンボンバーって聞いた事ない?」
「あー…名前は知ってっけど…」
「そのメンバーの1人が『淳子@れいたの嫁』ってキャラやっとるらしいで」
「何それ」
「さぁ?れいたの嫁なんやない」
「ふーん」
「いやいや、俺ルキ以外嫁にした覚えないしね」
「俺も嫁になった覚えはねーけどな」
「ルキ、」


向かいのテーブルに座って携帯を触ってる葵さんはニヤニヤ話してて。
葵さんと話してたルキは、さっきまで読んでた雑誌をテーブルに置いて冷めた顔でパソコンを引き寄せてネットで検索し始めた。


「葵さーん、やめろよ俺の恋人こう言うの駄目だって知ってんだろ」
「えー?ネタやろ?別にファンと同じレベルやろし、えぇんやない?」
「そりゃーそうかもしんねーけど…」
「…あ、コイツか」
「……どれ?」


ルキがボソッと呟いて、パソコン画面に映し出された動画を見る。
その画面を覗き込んで、一緒に。


あー…確かに『淳子@れいたの嫁』っつってるけど、明らかこんなネタなんだろうなーってわかるし。
俺はどうでもいいんだけどね、俺は。


ルキが画面をじっと見て、煙草ケースに手を伸ばしてイラついた動作で煙草に火を点けた。
煙を吸い込みながら、ルキがトントンとテーブルを指で叩く。


機嫌悪いんだろうなぁって思って、隣のルキの肩に腕を回して顔を覗き込む。


「ルキー」
「何。触んな浮気者」


したら、すぐに振り解かれて舌打ちされた。

付き合いたての頃はこう言う態度に俺もムカついて、よく喧嘩してたんだけど。

付き合いも長くなって、嫉妬からの行動って理解したら可愛いなって思うようになったりして。
でもやっぱ人間なんでね、邪険にされたら傷付くっつの。


「浮気って…してねーだろ」
「どうだか。モテんだね、れいちゃん」
「モテねー男は嫌な癖に」
「それとこれとは別」


吸ったばかりの煙草を灰皿で消して、また新しい煙草を咥えたルキ。
またパソコンに視線を戻して映像を見ながら自分の携帯で何か検索し始めた。


はー。
どうやったら機嫌直るかなー。


「嫉妬深い彼氏持つと大変やねー」
「葵さん楽しんでんだろ…」
「別に?せっかくやから報告しといてやろうかなって言う葵サンの親切心」
「絶対ぇ嘘じゃん」
「まぁまぁ、えぇ奴らやったで?」
「関わりねーからどうでもいー」
「お前ほんまルキ以外興味無いな」
「おうよ」


バンドで関わるならそれなりにどうにかするけど、葵さん個人で仲良くなってんなら別に俺がどうにかしなくてもいいだろうし。

楽しそうに笑う葵さんに苦い顔をしながら、携帯で「ブログ見つけた」って呟いたルキの頭をちょっと撫でる。

払われたけど。
しかも煙草持った手だったから灰落ちかけたんだけど。


「ルキさーん、そろそろ構ってくれませんか」
「……」
「ルーキ?」
「……」


灰皿で煙草を揉み消して、溜め息を吐いたルキ。


「ムカつく」
「ん?」
「俺は表だって言えねーのに、何コイツ」
「…おっまえ…!」
「ウゼェ触んな」


あーもう。
だから可愛いんだよ、ルキの嫉妬は。


お前しか見てねーっつの。




20120830



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