人形遊び/鬼歌




ニコ生で自宅がバレた鬼龍院さんは、家に帰るのが怖いって言ってたから。
『じゃぁ、僕んち泊まりに来ます?』って言ったら『行っていいの?お願いしようかな』って返事が来て、ちょっとテンション上がりつつ一緒に僕んちに。

どっちかって言うと、僕が鬼龍院さんちに押し掛ける方が多いから、あんまり鬼龍院さんが僕んちに来るって事が無くて。
お世辞にも綺麗にしてるって言えない部屋に、コンビニでビールやお菓子を買った鬼龍院さんと帰宅。


ニコ生終わった後だから、もう朝方に近い時間帯なんだけど、1日中締め切ってた部屋はちょっと蒸し暑かった。


「鬼龍院さん適当に座って」
「あ、うん」


リモコンを探して冷房をつける。
鬼龍院さんが座った目の前のテーブルの上、朝出て来たままちょっと散らかってたから、適当に片付けた。


「鬼龍院さん、何か飲む?」
「あ、ビール買って来たから大丈夫。ありがと」
「そっか」
「淳くんも飲もうよ」
「飲めないからコーラだけどね」
「コーラこそヤだよ」
「ビールも炭酸じゃないの」
「アルコールだからいーの」
「ふーん」


僕は飲まないと寝れないとか、そう言うのは無いからわかんないけど。
目の前で鬼龍院さんが最初の一杯の缶ビールを飲んで、美味しそうに目を細めてると途端に美味しそうに見える。

僕は苦いって感じるから、一口、とも思わないけど。
そう思いながらコーラを飲んで、買ったポテチに手を伸ばす。


「………」
「………」


何となく、お互い無言。
鬼龍院さんが僕んちに来た理由が理由だから、仕方無いけど。


「…鬼龍院さん、どうすんの?」
「え?」
「引っ越す?家」
「…うん。すぐ手配って出来るのかなぁ」
「それは僕にもよくわかんないけど…」
「自意識過剰かもだけど、やっぱ帰るの怖いしね」
「やー予防はした方がいいですよ。落ち着くまで僕んちに居てくれても構わないし」
「いや、それはさすがに迷惑じゃ、」
「全然!いつも僕がお世話になってるし」


何なら、ここに住み着いてくれたらいいのに。

一緒に住みたい。
そんな願望はあるんだけど、僕の圧倒的さとドうぜぇ性格で鬼龍院さんに迷惑を掛けかね無いから、それは言えない。


鬼龍院さんの仕事の邪魔にだけはなりたくないもん。


『ありがと、淳くん』って言って微かに笑ってくれるだけでも、僕は幸せな気分になれるんです。


今日あったニコ生の事とかを喋ってると、不意に鬼龍院さんが僕の後ろにあるベッドに視線を向けた。


「あれ、」
「え?」


反射的にベッドの方に向く。
その上には大小様々なシナモンのぬいぐるみが置いてある。


「淳くん、物販の人形買ったの?」
「あぁ、貰ったの、これ。物販紹介に使ったヤツ、もう使わないなら頂けませんかって言ったら、いいよって言われて」


大量のシナモンに埋もれつつ、バンドの物販で販売した僕と鬼龍院さんの人形。
ライブ終わったから貰って、一緒に飾ってる。

両方を手に取って、鬼龍院さんに見せた。


「これが淳くんの好きなカップリングなの?」
「もう、それは忘れて!」


鬼龍院さんがちょっと笑って言って来るから、僕が紹介してた時の事を思い出す。

だって、実際そう、だし。
一応。


人形の正面を鬼龍院さんに向けたまま、くっつけたりして遊ぶ。
たまにね、寂しい時とか、これ見るとちょっとだけは元気になれる。


「これでも鬼龍院さんの頭の大きさ皆と一緒だもんね。そこだけが不満なんですけど、僕」
「いやーそれが本来の姿なんじゃないかな」
「あははっ、有り得なーい」


鬼龍院さんの人形を見て、笑う。


「そうだ、鬼龍院さん、じゅんじゅんの人形持っててよ」


そう言いながら、僕の人形を鬼龍院さんに押し付ける。


そしたら、人形だけでも一緒に暮らせるでしょ。
僕モデルの人形を鬼龍院さんは受け取って人形の裏表見て。


「んー…。いいよ、淳くん持ってて」
「えっ、……」


そのまままた僕に返された。

僕の人形、いらないんだって思ってショックを受けて、無言でそれを受け取る。


僕は結構、テンションが見た目にわかりやすいらしい。

鬼龍院さんが慌てて、そうじゃなくて、と付け足す。


「せっかくのカップリングなんだから、引き離したら可哀想じゃない?人形だけでも、ずっと一緒に居させてあげた方がいいんじゃないかな」
「……うん!そうだね!」


その言葉に、沈んだ気持ちが一気に浮上する。
腕の中の2体の人形を、ぎゅっと抱き締めた。


その様子を見て、ちょっとほっとした表情を見せた鬼龍院さんに、あぁ、まためんどくさい事しちゃった御免なさいって思ったのと。
やっぱり好きだなって思いました。




20120909



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