夏の名残/玲流




自宅でパソコンと睨めっこして、作業に没頭。
パソコンを触る前に存分に遊んだコロンは、今は足元で寄り添ってお休み中。


やらなきゃいけない事は山積みで、それでもその忙しさが好きだったりするから家に持ち込んでする作業は時間を忘れてしまう。


チラッと時計を見て、結構な時間が経ってる事に息を吐いて、ログアウトして眼鏡を外す。
目頭を押さえて、首を鳴らして伸びをすると、寝てたコロンがピクッと反応して起き上がって尻尾を振る。

同時に玄関から鍵の開く音。

あーれいたが帰って来たんだなって思う。

コンビニ行くって言ってたのを、生返事した気がする。


近づいて来る足音に、コロンが反応してドアに近づく。


「…お、コロンただいま」


コンビニ袋を下げたれいたがドアを開けたらコロンが足にまとわりつく。
れいたが笑ってコロンの頭を撫でて、こっちに近づいて来た。


「ルキ作業終わった?」
「あー…、一応」
「アイス買って来たけど、食う?コーラもあるけど」
「じゃ、頂戴」
「ガリガリ君?コーラ?」
「ガリガリ」
「ん。あと花火買って来たからやろうぜ」
「は?何で?」
「コンビニで売れ残ってたから」
「いやいや、何処でやんの」
「ベランダでよくね?」
「…れいたって時々バカだよね」
「何でだよ。夏らしい事何もしてねーし、いいじゃん」


れいたからガリガリ君を受け取って袋を開けながら、笑って花火を取り出すのを見つめる。

いい歳した野郎2人が花火ってね。













「ルキどれからやりたい?」
「あー適当でいんじゃね」


まぁ、別に、やっちゃうけどね。
れいたがしたいって言うなら。
そう言うの、嫌いじゃないし。


もう夜になると涼しいぐらいになった、夏も終わりの日。

俺はガリガリ君を食べながらコロンを抱っこして。
ベランダに出て部屋の明かりを頼りにガサガサと花火の袋を開けて取り出すれいたを見つめる。

コロンがすげー興味示してんだけど。
危ねーから。


バケツに水とか用意しなきゃダメっぽいけど、バケツが無かったから灰皿に水入れて。

ライターで蝋燭に火を点けて立てる様子をぼんやり見つめる。


「花火大会とかは時々、偶然見えるけど、こう言う手持ちの花火とかやる機会ねーよな」
「確かに。10代までだよなー海や公園でやんの」
「お、意外にキレー」
「はは、れいちゃん公園でたむろってるヤンキーみたい」
「ンだとコラ」


金髪腰パンだしね。
そんなヤンキー座りしてたらそれっぽい。

って、そう見えるれいたにちょっと笑う。


大人になって、落ち着いて来てもいい筈なのに。
こんな事して笑い合って、楽しいって感じる。

そう言うのが大事なのかもしれない。


「れいた、俺にも寄越せ」
「もう面倒だから2つぐらいいっぺんにやっても平気だろ」
「お前が買って来たんだろーが」
「ネズミ花火とかもあんぞ」
「こっちに来たらムカつくからやめてね」


ガリガリ君を食べ終わって灰皿に投げて。
れいたから花火2本を受け取って同時に火を点ける。


微かな音と共に、綺麗に花火の火花が飛ぶ。


座り込んだ俺の膝に乗せて、片手でガッチリ掴んでるコロンは尻尾を振って花火に見入ってた。


「うわ!おっまえ!ネズミ花火やんなっつっただろ!!」
「ははっ、危ねーなこれ!」
「笑い事じゃねー!」


終わった花火を灰皿に入れた水に浸けてたら。
ベランダを何か火花散らしながら回る物。

それがこっちに向かって来るもんだから、慌てて立ち上がって避ける。

れいたも笑いながら逃げてた。
この広くねーベランダで、何やってんだって話だな。


「まぁいいじゃん。気分転換にはなっただろ」
「…疲れたっつの」
「まだまだ花火あっから機嫌直せ」
「花火なんかで直らないからね」
「じゃー何だったら直りますかね、ルキさんは」
「知らねーよ」


ニヤニヤすんな馬鹿れいた。

コロンを、危ねーから部屋に入れて窓を閉める。

お座りしてこっちを見てる顔が可愛い。


振り向いた時、れいたの身体と窓に挟まれて。
そのままキスされる。

いきなりだったから、ちょっと窓に頭打ったんだけど。


文句を言いたいけど、れいたとのキスが好きだから終わってからにしてやるよ。


馬鹿れいた。

でも、そんな馬鹿が好きな俺も大概だなって思う。




20120828



[ 22/34 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -