夜デート/玲流




お互い仕事が終わって夜遅く。

玄関を開けると、クーラーを効かせてるリビングの扉は閉められてるので、むわっと熱い空気が一気に雪崩れる。

自分らが帰ると、コロンがリビングの扉の前でカリカリと擦りガラスを引っ掻く音が聞こえる。

ルキが先に靴を脱いで上がる。

扉を開けると、コロンがルキに飛び付く。
から、ルキが『ただいま』って言いながらしゃがんでコロンを抱き上げた。
室内は空調管理されて快適な温度になっててひんやりして気持ち良い。


飯やんのかな。
あ、その前に散歩かって思ってたらルキがコロンを抱っこしたまま振り返った。


「れいた、海行きたいから車出して」
「は、今から?」
「うん、今から」
「……」


帰って来たばっかですよ、俺ら。

コロンも飯期待してんじゃねーの。














でもまぁ。
ルキの頼みだったら、ほとんど従っちゃう俺なんで。

飯もらってご機嫌な。
首輪とリードを付けたコロンと、仕事帰りそのままのルキと自分で車を走らせて。

人工的に造られた海が見える遊歩道に来た。
夜は対岸の街も光りに彩られて綺麗な夜景。


そう言う場所だから、夜中に近い時間帯でも車は結構停まってたりすんだよな。


コロンは初めて来た場所に興味津々なのか、人工的に植えられた木々を匂いまくってた。
その後ろをゆっくり付いて行く。


夜の海は真っ黒で、時々、光りが反射してるぐらいだったけど。


海を横目に、遊歩道でコロンを散歩させるルキの後ろ姿を見つつ、歩く速度を早めて隣に並ぶ。


「ルキさーん、いきなり海とか、どうしたの」
「別に。海行きたかったけど、昼間に行きたくねーじゃん。コロンも暑かったら散歩行けねーし」
「あー確かに」
「今はもう立秋だし、涼しくていいね」
「コロンも喜んでっかな」
「うん」


そう言って、俺らの間を尻尾を立ててちょこちょこ歩くコロンを見下ろして笑うルキ。

気分屋だけど、楽しそうな顔されたら来てよかったなって思う。


長い遊歩道を随分歩いてくと、街灯の下にベンチを見つけてそこに座る。


「ルキ、何か飲む?」
「コーヒー。甘いの」
「了解。コロンの水は?」
「持って来てるから平気」
「わかった」


ルキとコロンから離れて、遠目に見えた自販機を目指す。
自分のコーラと、ルキのコーヒーを買って戻るとルキはコロンを膝に抱き上げて海の方をじっと見てた。


ルキは自分の心情を歌詞に上げたりするから、感受性強いんだろうなって思う。
だから、こう言う場所、時間も必要なんだろうな。


ちょっとその横顔を眺めて、ルキに近寄ると。
先にコロンが反応して、顔を上げて尻尾を振った。


可愛いじゃねーか。


「はいよ、ルキ」
「サンキュー。……あったかくねぇ」
「今の時期はまだねーだろ」
「……」


缶コーヒーを手渡す。

いや、不満そうな顔されてもね。
確かに海辺だし夜だしちょっと肌寒いけどよ。

ルキの隣に座ると、コロンがルキの膝から俺の膝に移動して来た。

昼間、仕事で結構留守にしがちだし、ツアーあるとペットホテルに預けちまうし。
なかなか構ってやれない事を申し訳ないと思いつつ、一緒にいると癒されてしまうから仕方無い。


コーラを飲みながら膝の上のコロンを撫でると、肩にルキの頭が乗って来た。

どっちも可愛い。


「…稲光」
「は?」
「綺麗」
「…あぁ、雷鳴ってねーのに」
「鳴ってたらコロン怖がるからね。でも空が光ってんのは綺麗じゃね?」
「あー、うん」


夜景が見える、もっと向こうの夜空。
雷の音は全くねーのに、稲光だけ光って、雲に覆われた空が光る度に陰影を付けた。


何か海に来てみたけど、真っ暗で何も見えねーし。
いいのかって思ったけど、ルキが楽しそうだからよかったかな。


だってルキの我儘は可愛い。
全身で俺に寄っ掛かって好き放題すんのが、好き。

それがルキの甘えだって、わかってるから。


「つーか、次は犬もOKな海に昼間行ってみるかー」
「焼けんじゃん」
「日焼けしたヴィジュアル系ってどうよ」
「はは、絶対ぇヤだ」
「コロンも海で泳ぎたいってよ」
「…じゃ、コロンにはライフセーバー買うか」
「え、今そんなの売ってんの?」


コロンを抱っこしてルキの方に顔を向けさせ前足を振ると、ルキが柔らかく笑った。


ルキとコロンといると楽しいので、どんな我儘もオッケーです、マジで。




20120822



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