プリクラ/鬼歌




物販用のプリクラ撮影をメンバー皆で撮影。
落書きもして、出来上がったプリクラを見て仕事は終わりとばかりに喜矢武さんはUFOキャッチャーの方へ向かって、研二っちは格ゲーしに行くみたい。

大体プリクラ機ってゲーセンの中にあるから遊べるし便利だよね。


僕はと言うと、店内をうろうろしようとした鬼龍院さんの服の袖を掴む。
予想だにしてなかったのか、ちょっと躓きそうになった鬼龍院さんは、僕を振り返る。


「どうしたの、淳くん」
「あー…、えっとね、鬼龍院さんとプリクラ撮りたいなーって」
「え、あ、…ふ、二人で?」
「うん、二人で。……ダメ?」
「いいよ。撮ろっか」
「ホントに?やった!」


鬼龍院さんと二人でプリクラ撮った事なくて、僕はプリクラ撮るの好きだし鬼龍院さんと撮りたかったんだよね。

仕事用に撮ってたから、フルメイクだけど。


さっきまで四人で撮影してたプリクラ機に鬼龍院さんと二人で入る。
お金を入れて、画面を見て自分の髪の毛や服を手入れする。


前に映画の為に研二っちと恋人同士っぽいプリクラ撮ったけど、今回は鬼龍院さんと二人きりだし。

何かちょっとカップルっぽくないですか…!


「よくわかんないから淳くん選んで」
「どんなのでもいい?」
「うん」


女の人の声のナビに従ってタッチパネルを操作する。
ピンク系とか、ちょっと明るめの背景を選んだら機械的な声がカウントダウンが始まって、慌てて鬼龍院さんの隣に並ぶ。

お互い、撮影とかで顔作るのは慣れてるから二人並んで滞り無く撮られていく。

けど、ハートとか作ってる僕の隣で鬼龍院さんの顔が面白い事になった。


「ちょ、鬼龍院さん面白い顔しないでよ!吹き出しちゃうでしょ!」
「だってこう言うのは初めてでどんな顔したらいいかわかんないんだよ!」
「やださすが鬼龍院さん。リード出来ない所が鬼龍院さんらしいよ」
「うぅ…、僕だってやれば出来る子!」
「あはは。じゃぁもっとくっついて?」
「こ、こう?」
「うん」


鬼龍院さんが僕の身体に寄り添って来たから、ちょっと屈んで顔をくっつける。
鬼龍院さんの顔がおっきい。
それが当たり前なんだけどちょっと笑ってしまった。


最後の一枚の時、顔を横に向けて鬼龍院さんの頬っぺたにキスすると、ちょっと驚いた顔の鬼龍院さんと目が合った。

演劇で人前でキスするのが当たり前で慣れてる筈なのに、好きな人にするのはどうしてちょっと緊張するんだろう。

そして、半笑いで視線を逸らしてうなじを掻く、照れた時にする鬼龍院さんの仕草。

そんな猫背スキッパにきゅんってする。

鬼龍院さんの癖に。


全部のプリクラを選んで、二人で並んで落書き。
名前書いたり、ハートのスタンプ押したり。


撮影の時みたいな真面目な顔したりスキッパ丸出しだったり、僕がキスして素の顔になっちゃったり。
鬼龍院さんばっか見てる事に気付いて、思い直す。
色々と。


「…出来た」
「僕も」
「じゃ、終わり押すね」
「うん」
「あ、携帯に送れるんだ」
「待ち受けにしよっかなー」


自分のメアドを打ち込んで、プリクラが仕上がるのを待つ。
少ししたら落ちて来たのを、鬼龍院さんが取ってくれた。


出て来たプリクラを眺める。
最近は二人分最初から切れてるから、楽。

最後のキスしたヤツに、何となく今更気恥ずかしくて呼べない鬼龍院さんの『翔』って名前を書いて(こればっかりは喜矢武さんが羨ましく感じる)。


でも化粧してるから、ちょっとメンバー感は否めないかなぁって思う。


「あー…何かこう言うの、いいね。メンバーと撮影するのとは違うからちょっと照れるけど」
「引きじゃ無いから、鬼龍院さんの頭のデカさが如実に表れてるね」
「違うよ、遠近法」
「現実見た方がいいよ、鬼龍院さん」


思い切り冷めた口調と視線で言っても、ちょっと嬉しそう。


僕は素直じゃ無いから一緒にプリクラが撮れて嬉しい事も、鬼龍院さんが落書きで書いた『これからもよろしくね』って言葉に胸が熱くなった事も言えないけれど。

ホントはすっごく嬉しくて、好きだよ、鬼龍院さん。


「次は素っぴんでも撮ってみようよ、淳くん」
「鬼龍院さん顔のパーツ写んないんじゃないの?」
「素っぴんあんま変わんないから!」
「あぁ、歯だけははっきり写りそうだね」


そう言うと鬼龍院さんはスキッパ見せて面白い顔をした。

三割増しに格好良く写った鬼龍院さんのプリクラを見て、笑みを浮かべて。
またデートの時撮りたいなって思った。


…ら、掛け声と共に僕の方に何か飛んで来た。
床に落ちたのを見ると可愛いキャラクターのぬいぐるみで、喜矢武さんがUFOキャッチャーで取った戦利品らしい。

ソレを拾って、埃を払う。


「もぉ、喜矢武さんぬいぐるみが可哀想でしょ」
「それ取れたからやるよ」
「わぁい、ありがと」
「豊、僕には?」
「ねぇよ」
「ひど!あのお菓子の取って」
「自分で取ればいいじゃん」
「お金勿体無い」


さっきまでの照れる雰囲気を誤魔化す様に、じゃれる中。
プリクラを大切にしまって、宝物にしようって思った。




20120816



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