乙女思考/鬼歌



基本、僕達は面白い事があれば何でもやるし、そのスタンスでずっと一緒にいたから。
甘い雰囲気って言うのにもあんまり慣れてなくて、あ、キスしたいなって、そんな事思った時ってどうやったら自然に出来るかなって思っちゃう。

照れるって言うか。

でもやっぱり好きだから、触りたいし触れられたい。


鬼龍院さんちに来た時に花火あるからやろうって言われて、ベランダに向かって2人で花火をする。
これ昔から時々やってたけど、よく怒られ無いなぁって思う。
他の住人から苦情来たら危ないかな。


鬼龍院さんが2本同時に火を点けたり、振り回したりするのを写メに収めながら、僕も隣でベランダに向かって花火をする。
案外、楽しい。

夏の風物詩だしね。

花火どうしたのって言ったら、豊が持って来たヤツって言われたから、ちょっと嫉妬したって言うのは内緒だけど。


「あ、淳くん、あと線香花火だけだ」
「ホント?じゃ、これやって終わりだね」
「シメは線香花火だよね」
「もう終わりなんだって寂しくなるトコとかね」
「……」
「……」


2人で隣並びになって、パチパチと線香花火の光を見つめる。
玉になって落ちたら、ふっと消える光。

さっきまでテンション上がって花火してたのに、何かこれやると言い様の無い気持ちになって来て、寂しくなっちゃう。


1本終わると、また1本、お互い無言のまま線香花火をする。
ベランダに花火捨てちゃってるから、明日掃除しなきゃなぁ。


チラッと鬼龍院さんの方を見ると、鬼龍院さんも僕の方を見て、ちょっと曖昧な笑みを浮かべた。

今って、どうなんだろう。


こう言う時、やっぱ僕は鬼龍院さんが好きで寂しいって思っても隣に鬼龍院さんがいてくれて、花火の光が陰影効果で鬼龍院さんの顔が格好良く見えちゃう。
鬼龍院さんの癖に。


線香花火が落ちて、光が無くなる。

ちょっと鬼龍院さんの方に近寄って、肩をくっつける。
鬼龍院さんは微動だにしなくて、その肩に頭を乗せると、少し躊躇った様に動いた手が僕の手に重なった。

それが嬉しくて、下唇を噛んできゅっと握り返す。


甘える様に、鬼龍院さんの方を向いて腕に縋ると挙動不審気味な鬼龍院さんが視線をきょろきょろさせてて、ちょっと可笑しかった。

キスしてって念を込めて鬼龍院さんを見つめて、そう言う雰囲気だけど。
格好良くスマートにそう言う事が出来ないのがわかってるから僕からしちゃってもいいかなぁ。


「淳く、」


眼鏡を外して、鬼龍院さんの唇に唇を重ねる。
ちゅ、ちゅ、と啄む様に柔らかいキスを繰り返すと鬼龍院さんからもキスを返してくれる。


ぶわっと、僕の中で何かが満たされていく感覚。


お互い、自信が無い感じにぎこちなく始まるキス。


唇から、歯列をなぞると、最初は舌先に感じる感覚に本当にスキッパだった事に当たり前の筈なのに感動したなぁって事を思い出した。


「……」
「……」


あんまり深いキスにならずに、離された唇。


何となく空気が気恥ずかしくて、鬼龍院さんから視線を逸らす。
鬼龍院さんも、ちょっと笑って誤魔化す様にうなじを掻いた。


繋いだ手が熱い。

大好き。
その気持ちが、この指先から伝わればいいのに。


「…何か、照れるね」
「…うん」
「うん、こう…うん」
「なぁーに、鬼龍院さん」
「や、やー…何か、ね。こう言う雰囲気、どうしたらいいかわかんない」
「…嫌…?」
「では無いか、な。逆にドキドキする」
「それは、」


僕にって事でいいの?って言おうとして一瞬躊躇う。
自惚れで、違うって言われたらショックで立ち上がれ無いかも。


少しの事で上がったり下がったり、面倒臭い性格だと自分でも思う。


「…鬼龍院さんが照れるとか気持ち悪いよね。性癖特殊なのに」
「えぇっ、それとこれとは違くない!?」


だから、雰囲気を壊す様に憎まれ口を叩く僕を許してね。

でも、繋いだ手は離さないで。


繋いだ手を、パタパタと振る鬼龍院さん。
ベランダに向かって座り込んでるから景色も何も無い感じだけど。


線香花火みたいにすぐ消えないで。
こんな幸せな事。

夢みたい。
鬼龍院さんと、こう言う風に過ごしてる事が。


「淳くん淳くん。このままの流れでニーハイ穿いてくれませんか」
「意味がわかりませんね。だから性癖特殊だっつってんだろ糞が」


いい雰囲気を壊す鬼龍院さんの発言に。
やっぱ彼には格好付けるって事が出来なくて、それはそれで彼らしいなって納得。

自然な流れが出来なくても、鬼龍院さんとなら、何でもいい。


…特殊性癖以外は、ね。




20120726



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