深夜のコンビニ/敏京
「腹減った」
「ん?何か食べる?何も無いけど」
「何も無いんかい。役立たずな敏弥やなー」
「いやいや、何でだよ。コンビニ行く?」
「えー…」
夜中。
京君とマッタリDVD鑑賞してたら京君が呟いた。
でも俺んち何も買ってねぇよ。
コンビニだったら開いてるけど、京君はあんま乗り気じゃ無いみたい。
「敏弥。何か買って来てや」
「やだよ寒いし。一緒に行こうよー」
「嫌やめんどい。敏弥が行ってくればえぇ話やん」
「……」
この子は何でこんな我儘なんだろう…。
いや、可愛いけどね。
可愛いけど!!
「やだ。一緒に行こ?深夜だから手ぇ繋げるよ」
「何で手ぇ繋がなアカンねんキモい」
「ラブラブバカップルになる為です」
「はッ」
うーわァ、鼻で笑ったよ。
いやでも何か此処まで来たら京君と何としてもコンビニに行かなきゃって思っちゃうよね。
だって自分で言っといて手ぇ繋いで歩けるとか貴重!!!
「京君お腹空いたんだろ?」
「うん」
「なら行こうよ。コンビニ」
「怠いやん」
「京君行かなきゃ俺も行かないよ」
「敏弥の癖に生意気言うなや」
「……ハーゲンダッツ買ったげるから」
「物で釣るんか」
「うん。だから、釣れて?」
「お前ほんまアホやな」
「えー」
って、言いながら京君は目を細めて笑う。
柔らかい表情。
大好き。
そんで、隣に座ってたのをちょっと腰を上げて這いながらごそごそしてる。
あ、財布探してたんだ。
って事は。
「しゃーないから一緒に行ったるわ」
「やった。京君大好き」
「当たり前やん」
自分も上着を着て財布と携帯を持って外へ出る。
寒い。
京君を見ると寒さに眉間に皺を寄せてる。
気が変わらない内にさっさと行こう。
「京君、手」
「は?ほんまに繋ぐん?」
「うん。夜中だし誰も見て無いよ。手が寒いの。あっためて?」
「……我儘な奴」
言いながら差し出した手を握り返してくれた。
嬉しい。
そう言うトコ、好き。
家の近くのコンビニまで2人で取り留めの無い話をしながら歩いて行く。
コンビニの近くになって電気の光で明るくなったら手ぇ離されちゃったけど、仕方無い。
「京君、何買うの?」
「あー…お菓子…とか肉まん」
「ふーん。俺飲み物見て来る」
「ん」
京君はお菓子コーナーへ行って、俺は籠持って飲み物コーナーへ。
コンビニのって高いけど、便利だからついつい無駄に買っちゃうんだけど。
あ、京君用の烏龍茶も切らしてるから買っとこ。
ペットボトルを籠ん中に入れると、ガサガサッと京君が選んだお菓子が籠に入って重さが増す。
「こんなに買うの?」
「うん。何か文句あるん」
「いえ…」
「あとハーゲンダッツ」
「あぁ…」
覚えてんの。
籠ん中のお菓子の山と、アイスのコーナーに行った京君を見比べる。
あのちっさい身体によく入るよね。
て言うかお菓子マジで好きだよね。
可愛いけど。
怒るから言わねぇけど。
可愛い。
うん。
ってアイス持って来た京君がハーゲンダッツを籠に入れたけど…。
「何個買う気だよ!?」
「何種類か食べたかってん」
「…人の金だと思って〜」
「えぇやん。僕とコンビニ行きたかったんやろ?」
食べ物欲しかったのは京君じゃん。
…まぁいいか。
「もう欲しいの無い?」
「ん。あと肉まん」
「はいはい」
あ、ビール買ってこ。
自分の分のビールを籠に入れて、レジに行って肉まんとピザまんを頼む。
結構な量の荷物になっちゃったよ…会計も。
京君何の為に財布持って来たんだよ…。
両手に買い物した袋を持って、京君はちゃっかり別の袋に入れて貰った肉まんを持って外に出る。
あ、手ぇ繋げねぇ…しかも俺、ピザまん買ったのに両手塞がってるから食えねぇ…。
あー…家に帰って食ったら冷めてんだろなー。
何て思いながら肉まん食べながら歩く京君の隣を歩く。
チラ見すると、京君は嬉しそうに肉まん食ってるし、まぁいいか。
…どんだけ京君に甘いんだ俺。
ちょっと脳内でそんな事を考えてると、肉まんを食べ終わった京君がこっちを見て来た。
「敏弥食べへんの?」
「まぁ両手塞がってるからね」
「ふーん」
何か興味無さげに前を向いたと思った、ら。
「オラ、敏弥口開けや」
「え!?」
「くーちー」
「えぇえぇー!ちょ、京君何それ何それ何それ!!」
「あーもう、うっさい。いらんのなら僕食べるで」
「いるいるいる!!食べる!あーん!!!」
「きっも…」
ちょっと京君からピザまんあーんされちゃったんだけど!
え、マジで?
何のサービス!?
あぁあぁ〜今なら死ねる。
あの!
京君から!
食べさせてくれるなんて!
「敏弥、顔キモい…」
京君が冷めた目で見て来たけど気にしない。
超嬉しい。
深夜のコンビニもいいなー。
人目が無いと京君が可愛い。
「あ、これも美味いな」
「ちょ、食べないで!もっかい!あーんして!」
「嫌やキモいし」
「京君ー!!」
…うん。
残り食われたけど。
終
20090121
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