ある日の打ち合せ/敏京
「眠い」
「いや仕事中だから、寝ないでね。仕事してね」
「無理。眠い」
「もー…」
打ち合せ中。
椅子に座ったまま、俺の隣の京君は眠気に勝てずに俺の肩に頭を寄せて目を瞑る。
その仕草は可愛いんだけどさ。
まぁこう言う時の京君は絶対起きねぇし。
仕方無いから何か毛布…は、無いから俺のジャケットを片手で京君にかける。
「何や京君て敏弥にだけはめっちゃ甘えるよなぁ」
「まぁね。時々こうだからね。超可愛いよ」
「はいはい。ほなら寝た京君の分も敏弥が仕事頑張りぃよ」
「えー…薫君が頑張ってよ」
「何でやねん」
笑いながらも、肩口にある京君の頭が愛しくて髪の毛を撫でる。
薫君も、何だかんだで京君には甘いしなって思うと何だか可笑しかった。
「ほなちょっと休憩しよか」
リーダーのその一言で、うあーい、と間延びした声が堕威君から聞こえて席を離れた。
うん。
段々京君の頭が乗ってる肩が痺れて来たよー。
ってかこんなしんどい体勢でよく寝れるね京君。
横にならしてあげたいけど…起きるだろうし…って起きてくれなきゃ困るんじゃん!
でも俺、京君溺愛だからね。
寝たいなら寝かしといてあげたい…まぁ今は休憩中だからいっか。
そんな事を脳内でぐるぐる考えてると、目の前に缶コーヒーが差し出された。
「ほれ」
「あ、ありがと」
「しっかし京君よう寝れるな、そんな格好で」
薫君から缶コーヒーを受け取ると、プルトップを開けて一口飲む。
目の前の椅子に、薫君は座って京君の観察。
「ホントだよね。あんま寝て無いんじゃない?京君て一気に歌詞とかやっちゃう方だから」
「あー…あんま無理はして欲しないけどなぁ…」
「心配だよね」
京君の話をしながら、優しく髪の毛を撫でる。
最近は仕事以外で会う時間あんま無かったし新曲出すし、根つめてんだろうなとは思うけど。
「うん」
「ん?」
「いや、何か…幸せそうでよかったな、と」
「幸せだよ。京君大好きだもん」
「んなモン、お前の表情見りゃわかるわ」
「いやー、幸せオーラって隠せないよね!」
「アホか」
笑い合いながら話してると、京君が身じろいだ。
顔を覗き込むと目をパチパチさせていて。
どうやら起きたみたい。
ゆっくりと肩から頭を離した。
「おはよ、京君」
「……喉渇いた」
「あー…っと、コーヒーしか無いや。買って来るからちょっと待っててね?」
「ん」
京君の傍を離れて、急いで近くの自販機まで行き烏龍茶を買う。
戻って来るとキャップまで外して、京君に渡す。
大人しく飲んでる京君を見つめる。
寝起きってホント、大人しいってか動きが遅くなるんだよねぇ。
可愛いじゃんか。
「京君、お菓子食べる?今日来る時買って来たんだー」
「食う」
「どれがいい?」
「………」
カバンからお菓子を何種類か出して、テーブルに並べる。
京君が無言で指を差したお菓子を開けてやる。
ポッキーなんだけどね。
ポッキーのチョコついてるトコだけ食べ無いで全部食べようよ。
暫らく俺らのやり取りを見ていた薫君が、ボソッと口を開く。
「何や手間のかかる息子と母親って感じやなぁ…」
「は?」
いやいや、俺はこんなデカい息子持った覚えねぇし。
「違うよ薫君。京君は手間のかかる恋人なの!そこが可愛いの!我儘聞くのが俺の特権!!」
「はいはい」
スルーしてね!?
そこんトコはちゃんと認識してよね!!
「…敏弥」
「ん?何かなー?京君」
「キモいウザい死ね」
「……」
「ぷっ」
口悪くても可愛い恋人だもん…。
終
20090113
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