昼下がり/京流
暖かい日差しの中。
眼鏡を掛けて絶賛お仕事中。
パソコンと睨めっこ。
京さんとせっかく一緒の日にオフになったけど、家でしなきゃいけねぇ仕事山積み。
残念。
家事もしなきゃなんねぇし、まさか京さんがしてくれるとか思えねぇし。
あれ、でも京さんて一人暮らしだったよな?
今までどうしてたんだろ。
あー…でも京さんも綺麗好きだったから、部屋は綺麗だったな。
って事は、京さんが掃除すんの?
え、似合わねぇー。
一緒に暮らし始めて家事してんの見た事ねぇよ。
…って、脳内でグルグル考え事をしながらパソコンを扱う俺の、すぐ後ろのソファで京さんは昼寝中。
何この人。
超可愛い。
いや、普段は格好良いんだけど。
一緒に住んでるからって何でもかんでも、時間を共有するって事は無いけれど。
ただ、この空間に一緒に居れるって事が凄く嬉しい。
だって振り向けば京さんが寝てる。
寝てるのはわかってるけど、背後にある京さんの気配が気になって仕方が無い。
「ん〜…」
少し疲れて、胡坐をかいたまま伸びをする。
ボキボキっと背骨が鳴る音がして、気持ちイイ。
疲れて、と言うか俺が寝てる京さんを見たい誘惑に駆られただけ。
振り返って、結構ゆったりめのデカいソファに身体を横たわらせて寝る京さんの観察。
ライブでも着ている、定番となったジャージ姿で腕を組んだまま険しい顔して、寝てる。
そんな顔して、どんな夢見てんの。
少し見える骸骨の刺青とか、首筋の自虐的な文字とか、ピアスとか髭とか。
瞳が閉じられると、途端に柔らかくなる表情に笑みが零れる。
好き。
京さん大好き。
柔らかな日差しの中、寝てる京さんの観察をしているだけで幸せな気持ちになれる。
…キス、してぇな。
寝てる、から。
してみよ。
自分の眼鏡を外し、規則正しく寝息が聞こえる、その唇に、ちゅっと音を立ててキスをする。
寝てるから、微かに温かい唇。
身じろきもしねぇから、爆睡かって思って調子乗って京さんの髪の毛を撫でる。
傷んだ髪。
これからまたツアーが始まるし、今の内にゆっくり休んで下さい、京さん。
そう思って、また仕事を再開しようと眼鏡を掛けて、パソコンに向き直る。
不意に携帯を見ると、もう正午過ぎで。
昼飯食ってねぇな…作るの忘れて仕事に没頭してしまった。
京さん、寝てるし。
飯だけに起こすのもアレだし。
俺、腹あんま減って無いし、京さん起きてから飯食お。
そう思って、またカタカタとパソコンを打ち始める。
…と、いきなり後頭部の髪の毛を引っ張られた。
油断してたから、髪の毛を引っ張られる痛みと力に逆らえず後ろへと倒れ込む。
「いってぇ…」
「お前なぁ何、人の寝込み襲っとんねん」
「え、寝てたんじゃ…」
「起きてもうたわ」
「マジっすか。すみません」
ソファに寝転がったまま、俺の髪を引っ張ってた手を離してガシガシ頭を撫でられた。
寝てた筈の京さんは、がっつり両目が開いていて。
何だかんだで、寝起きいいよな、京さんて。
「生意気やねん」
「ん…っ」
そのまま眼鏡をむしり取られて、引き寄せられてキス。
噛み付く様な京さんのキスに、逆らう事無く受け入れる。
あまり深いキスにはならず、角度を変えてのキスが心地良い。
「ッは…京、さん…」
「ん」
「好きです」
「なん、今更」
「幸せだなぁ…って」
「ふーん」
「お昼ご飯、作りましょうか?」
「仕事は」
「一段落したし、休憩です」
「昼飯、何」
「えー…と、何か冷蔵庫にあったかと」
起き上がり、ん"ー…と伸びて首をコキコキ鳴らす京さんを見ながら、立ち上がる。
何か食料あったっけ?
そう考えながら、キッチンへ向かう。
飯食ったら、また仕事しなきゃ。
「あ、京さん」
「なん」
「ご飯食べたら、またソファで昼寝して下さいね」
「はぁ?何でや」
「幸せだからです」
「ワケわからんし。アホか」
だって、そうしてたら仕事中でも寂しくねぇし。
俺も。
貴方も。
凄い幸せな午後。
終
20080108
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