カウントダウン/京流
朝。
京さんは出ないかもしれない、そう思いながら電話をかける。
3コール鳴って、出なかったら諦めよう。
プップッと、電子音が響いてからコールが鳴る。
一回目。
『おぅ』
「あ、京さん。おはようございます」
ワンコールで出た。
ちょっと嬉しい。
『ん、はよ』
「起きてました?」
『そやな』
「今時間大丈夫ですか?」
『平気やで。まだホテルやし』
「よかった。ライブ、お疲れ様でした。今日の年越しも頑張って下さい」
『…何やソレ言う為に電話したんか』
ちょっと笑った様な呆れた様な声。
だって、それは、言いてぇし。
でもまぁ実際は。
寂しかったからだけど。
「やっぱ関西って離れてるんで、応援だけでもしたいなって」
『いらん。自分が自分の為にやるだけやし』
そうですか、と言葉に詰まる。
やっぱ、そこは。
そこは京さんの領域っつーか。
軽々しく言葉に出来ない事だとはわかっていても、陳腐な台詞しか出て来ねぇ。
情けな…。
『るき』
朝っぱらから沈んだ気分に勝手になってると、京さんの声。
あぁ、電話口から聞こえる声もやっぱ好きだなって思う。
早く会いたい。
1人の部屋は寂しすぎる。
『浮気してへん?』
「なッ、してませんよ」
『ふーん。何や何も言うて来ぉへんから、しとるかと思ったわ』
「ちッ、がうし!いくら京さんがいなくて寂しくても、俺には京さんしかいません!!」
電話しながら思い切り叫んだ。
浮気とか、ありえねーし!!
『ふ』
「…何ですか」
『いや、せやな』
「…そんな京さんはどうなんですか」
『僕?僕はなぁ…』
あー…でもコレちょっと怖い質問な気がする…!
『誰かさんがおらんから寂しいで』
「…嘘」
『嘘って何やねん(笑)』
「え、え、マジですか!」
『あーもうお前うっさい』
やっべ!
何かスゲェ嬉しい!
京さんからそんな言葉が聞けるなんてそりゃ嬉しいだろ!!
「俺も寂しいです。けど、待ってます。京さんが帰って来るの」
『おー。えぇ子で待っとれよ』
「京さんの声、聞きながら年越しますから」
『何やねんソレ。お前1人で年越しか寂しい奴やな。メンバーとでも過ごせばえぇやん』
「新年一発目に聞きたいの、京さんの声ですもん」
『は』
鼻で笑われた。
けど、本当。
1人は寂しいけど。
京さんとの部屋で、京さんの歌声と、さっきの言葉と共に。
だから、早く帰って来て下さい。
完全燃焼して、帰って来る。
その場所が、京さんと俺とのこの空間って事が嬉しい。
『あー…そろそろ行くわ。ほなな』
「はい。待ってます。愛してます」
『は、何やねんソレ』
柔らかく笑う声。
行ってらっしゃい、京さん。
途切れた声と、機械的に流れる電子音。
その音を聞いてから通話終了ボタンを押す。
じっと、携帯を眺めて先程の京さんの言葉を反芻した。
ヤベェ。
顔がニヤける。
2008年。
最後のライブ。
思い切り、吐き出して。
貴方が、全て満足がいきますように。
終
20081231
[ 11/500 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]