「さあ、次は土方さんの部屋ね」

部屋の中に入って、改めて見渡すと…土方さんの部屋はかなり綺麗な方だった。
私と肩をはれるだろう。


「この部屋は…大丈夫じゃないかな?」

「甘いねィ」

隣を見上げると、そーごはニヤリと笑っていた。

そして、一人で部屋の中にズカズカと踏み込んでいった。


「菜々、人間は頼まれもしない心使いが真の優しさってもんでさァ」

「…?」

「片付けるもんがないなら、それ以上事をやってあげる」

「それが、親切ってもんじゃないですかィ?」

「…そーご」

そーごがまともな事を言うので、私は少しビックリした。

けど、その気持ちは次の瞬間に全て崩れ去っていった。


「って事で手始めに、足ツボマッサージ機能の設置でさァ」

何を言い出すのかと思って目を見張ると、そーごは土方さんの足袋の中に画鋲をバラバラと入れていた。

「それ、マッサージ!?」

「ツボ押しでさァ」

「ツボ刺しじゃない」

そんな私の声も聞かずに、そーごは私に聞いてきた。


「で、菜々は何をやってるんでさァ」

「いや、刀を研ぐときに油でもと思って」

「それ、マヨネーズじゃねーかィ」

私はニュルニュルとマヨネーズを刀に付けていた。

「結局は油だもん、変わらないよ。…よしっ」

取り敢えず塗り終わったので、私は鞘に刀をしまった。

ブチュ、と音がして鞘からマヨネーズが溢れ出てきた。


「で、そーごは今度は何してんの?」

「日ごろの感謝を込めて差し入れでさァ」

そーごは、土方さんの綺麗に畳まれている布団の上に何やら本を乗せていた。

私はその本を覗き込む。

[M女の価値観]


「……これ、エロ本じゃない?」

そして、その本の上には…

[土方さん、これは捨てないであげます。]

「何で、土方さんが保持してたみたいな流れに偽装してんの?」

「つまらない男だから、少し色気を付けてやっただけでさァ」

ははは、と私は笑う。

そして二人で顔を合わせて


「「近藤さんの部屋行くかっ!」」と言った。


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