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身勝手な大人

「フェラーリ612スカリエッティ…おいおい、まさか…」

「江戸川くん?」


学校からの帰り道、光彦たち3人が騒ぎながら歩いていく少し後ろを灰原とコナンが並んで歩いていた。ちょうど会話が途切れたその時に歩道のすぐ脇に駐車された車。随分と目立つ外車に目を見張り、そしてコナンは遠い目をした。
もしかすると…そう思い、隣で疑問符を浮かべている灰原へと声をかけようとしたコナンの言葉に被せるように、その車から降りてきた人物が声をかける

「おれのじい…」
「やあ、コナンくん。私が誰か分かるかい?」

言外にyes以外認めない、と含ませながら笑いかけて来た男性に灰原は警戒するが、コナンは冷や汗をかきながらどう切り抜けるかを考え、車に体を預けながらこちらを見るその人へと目を合わせた

「おじさん誰…?」

「ふむ…なるほど。私相手に切り抜こうとする勇気は評価するが生憎、君の両親から大体の事情は聞いているんでね。早く車に乗りなさい"コナンくん"」

有無を言わせないその声に、コナンは一息吐いた後、灰原へと小声で話しかけた

「悪い灰原…博士に伝えといてくれねえか?おれのじいさんが帰ってきてるって」

「工藤くんの祖父ってこと…?」

「ああ、工藤名前。正真正銘、おれのじいさんだ」


―――

ジトリと恨めしそうな目で名前を見てくるコナンの姿に鼻で笑った名前は運転をしたまま話しかける

「随分と面白いことになっているようじゃないか…さすが私の孫だな。こんなことなら世界一周なんてせずに日本に居れば良かったか」

「他人事だと思って楽しむなんて悪趣味なじいさんだぜ」

「事実、他人事だからな。…まあ、困ったことがあれば頼ればいい。優作よりはツテが広いぞ?」

「…はいはい」

久しく会った孫が小学生になっているというのに心配をするでもなく、楽しそうにしている祖父の姿に込み上げてくるため息を無理矢理飲み込んだコナン。それさえも可笑しいのか、車内を名前の笑い声が包む。

「…ああ、忘れてた。新一、お前赤井君と知り合いか?」

名前の笑いが収まって少ししたころ、思い出したように話を始める祖父の口から出てきた人物の名前にコナンは驚いた

「え!?じいさん赤井さんのこと知ってるの?」

「前に話しただろう。FBIに何人か知り合いがいると…」

「そうだっけ…」

コナンから言わせると名前の○○に知り合いがいる…という話はいくつも聞いているため正確には覚えていない。しかしやたらと交友関係が広いのだけは確かだった。

「けど赤井さんは…」

「ああ、それに関しては気にしなくていい。大体察しはついている」

さらりと落とされた爆弾に、一瞬体の動きが止まったコナン。その様子を横目で見つつ目的地が近付いていることを確認して話を続けた

「…母さんか?」

「新一…有希子君は口の軽い女性ではないぞ?…ああ何故察したか、と言えば、そうだな…そもそも私の中で赤井君はお気に入り、とでも言えばいいのか。中々好む人種だったのだが…。何せ頭がいいからな。話していると中々面白い」

そんなに赤井さんと自分の祖父が話す機会があったのかとコナンが驚いている間にも話は進む

「一時間ほど前に君たちの家に立ち寄ってな…そうあの家に、だ。そうしたら中々知性的な青年がいるじゃないか。話をしてみれば頭の回転も早い」

「昴さんと会ったの!?」

「会ったも何も、新一を迎えに行くまでは沖矢君とお茶をしていたぞ」

さも同然と言わんばかりの祖父の姿。あ、そういえばこんな人だったコナンが気付くのは少し遅かった。話すのに夢中になっていた…というよりは祖父のペースに着いていけなくなっていたコナンが気付く頃には、車は止まっていた

「なんで…俺の家?」

「言い忘れてたか?今日の夜、ヘリをチャーターしてある。1人増えた所で変わらんからな、沖矢くんも呼ぼうと思ったんだよ」

「え」

既にコナンが一緒に行くことは決定しているようで、コナンを車に残し昴のことを呼びに行った名前の様子を眺めていれば玄関から出てきた昴さんと少し話した後、車へと戻ってくる。
自分の父親が越すべき目標ならあの人はなんなのか。
あまりにも規格外過ぎてどうすればいいか分からなくなるが、孫の新一のことを自分なりに可愛がっているらしい祖父には一応感謝はしているのだ。


その方法がもう少し一般的ならもっといいのだが

身勝手な大人
「ヘリをチャーターってなんでだよ」
「なんだ、高いところが怖くでもなったか?子供だしな」
「違う!」
「僕まで良かったんでしょうか…」
「ああ、沖矢君楽にするといいぞ。賢い人間は好ましい」
「(ったく…本当にこのじいさんは…)」


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