×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -


似る身似ない心

先に仕掛けた戦も終わり、ほんの僅かな休息の間も次に仕掛ける謀に頭を傾ける。そんな日々を送る半兵衛が今この時秀吉の前で盛大にため息を吐いたのは、半兵衛の目の前で笑いながら胡座を掻いているその男が原因だった。

「人の顔見てため息なんてひどい奴だなぁ。まったく…兄様泣いちゃうぞー」

「君がそんなじゃなければ僕はため息なんて吐かないんだけどね」

その男というとも、竹中半兵衛の実兄、竹中名前なのであるが。

「今度は何を仕出かしてくれたんだい?」
嫌味を多分に含まれながら吐かれたその言葉に動じず能天気に笑いながら名前は答える

「仕出かすって相変わらず半兵衛は酷いなぁ!折角兄上が面白いもん持ってきてやったのに」
「君の面白い、は僕にとって厄介なことじゃないか」
「んなに怒んなって!面白いとは思うぞ??ほら!!」

そう言いながら名前が差し出したのは一振りの刀。それを見ながら深いため息を吐いた半兵衛は己の兄、名前の性質を誰よりも理解していた

「これは?」
「妖刀だとよ」

その一言に凍り付いた部屋のなか。
氷の婆娑羅者でもないのに余りの温度の変わりようは凄まじかった。その冷気の発信者は半兵衛だが、部屋には半兵衛と名前の二人きり。半兵衛を諌める者はいないどころか名前はどんどんと爆弾を投下していく

「刀鍛冶の爺さん所に持ち込まれたもんらしくてな!詳しいことは忘れたがどっかのお上を斬った刀らしいぞ」
「何故態々それを持って帰ってくるのかが理解出来ないのだけれど」
「使いやすかったからこれから使おうかと思って」
「態々それを僕に見せる意味を問うているんだけど?」
「ただの自慢」

妙に自信ありげに言いきった己の兄に怒りに震えた拳は行き場を無くし、ただ溜め息が増えるだけに留まった。
どうしようもなく昔から変わりのないそれに何度呆れたことだろう。


似る身似ない心
半兵衛の兄がどうしようもなく能天気な阿呆であり、それと同時にどうにも半兵衛の気を抜くのが上手いのだ

[prev] [next]