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仲間なんですからね


「みみ、み、みちる、ちゃん」
「……なに?」
「あ、あの、他の、隊員探しだけど」
「ああ、それね。私も同期で何人か隊に合いそうな人チェック入れといたから、気になる人いたら丸つけといて」
「あっああ、あり、ありがとう!」
「……」

緊張して名前を呼んできた優希に、いい加減慣れないのかしら、とみちるは疑問に思った。みちるが優希の隊に入ると決めてから、ゆうに2週間が経とうとしていた。

相変わらず、隊員はいない。というか、隊員が来ない。C級からスカウトしようという話はあったが、優希の態度はスカウトができる状態じゃないし、向こうから気になって来てくれたほうがまだ入ってくれる可能性がある、どうしても欲しい人がいたら声をかけようとみちるがやめるよう言ったのだ。

とはいっても、ここまで来ないものだろうか。少なくともみちると同期の隊員はちらほらとB級に上がっているし、このままいくと次の期の隊員がB級に上がりだす。まずいわね、とみちるは焦りを感じていた。

このままでは、次回のランク戦出場は厳しいかもしれない。初めに優希になぜ隊を組もうと思ったのかを聞いたところ、ランク戦に出場したいから、というのが理由の大部分を占めていた。次いで、寂しいから、というものが来ていたが。

とにかく隊長がやりたいことは、隊の方針そのものとなる。ランク戦に出られるように、少なくとももう一人は隊員が欲しいところだ。

「……今期の隊員のデータ、一応集めといたほうがいいかもね」
「あ、う、うん。えっと、さっきもらってきた」
「そう。仕事早いわね」

「え、えへへ、へへ」ぎこちなく優希が笑った。





学校にて、みちるは優希にコピーしてもらった今期入隊のC級隊員の名簿をチェックしていた。C級は人数が多いこともあって、細かいデータはでない。氏名年齢隊員番号、入隊時と現在のポイント、それから使用トリガーのみだ。

「……カスミ、かしら」

もうじきB級にあがるであろうポイントの隊員の名前、霞隆一。男子。弧月使い。入隊時のポイントは高くないが、今期でもかなり早いほうだろう。というか、このままいくと一番乗りなのでは?これがいつのデータかは知らないが、このペースでポイントを取り続けたら間違いなくBに上がってくる。

この子を欲しがるのはさすがに強欲だろうか。ポテンシャル的には、A級に引き抜かれるレベルだ。まあ、チェックくらい好きにしていいわよね。みちるは、目当ての隊員のところにペンで丸を書いた。

「有島さん」声が聞こえて顔をあげると、照屋が有島に笑いかけた。

「照屋さん。あ、プリントありがとう」
「ううん。C級の名簿?」
「そう」

手渡されたプリントを受け取りながら返事をする。照屋は、優希と前々からの友人だったらしい。有島が優希の隊に入ると聞いて、真っ先に声をかけてきた。友人に仲間が増えることが嬉しいらしい。

「それ今期のだよね。優希すごく細かくチェックしそう」
「そうね、最近はずっと資料とにらめっこよ」
「ふふ、だろうね」

照屋に、前々から聞いてみたかったことを聞いてみた。

「優希って」
「なに?」
「前からずっとその……ああなの?」

ああ、というのは言わずともわかったらしく、照屋が苦笑する。それはつまり、昔からずっとああということだ。

「でも、最近は結構、話せるようになったほう、かな?」
「え……あれで?」

あれで話せるほう、となると、最初はもう会話すらままなってなかったんじゃないだろうか。「ランク戦とかもたまにやってるみたいだし……それに、ほら、慣れればだいぶ話してくれるんだよ」その言葉が、つきりと胸に刺さった。

そうだ。私はまだ、優希に慣れられてない。そりゃ確かに、照屋さんほど長く一緒にはいないけれど。

「……取り急ぎ、私のライバルは照屋さんってことね」
「え?」

驚いた顔をした照屋にふふん、と笑う。勝って見せるわ、照屋さん。私だって、もうあの子の仲間なんですからね。





学校を終えてボーダーに行くと、すでに先に来ていたのか優希が「み、みち、みちるちゃん」と声をかけてきた。ぐぬ、とりあえず名前くらい自然に呼ばせたいわね。難しい顔をするみちるに「ど、ど、どうしたの?」と優希が聞いた。

「……なんでもないわ。とりあえず、私もチェックしといたから」
「あ、う、うん。わ、わたしのも出すね……!」

わたわたと通学鞄を開いた優希が、クリアファイルから名簿を取り出す。ラウンジで二つのデータを隣り合わせにして、互いに誰にチェックをしたのかを見ていく。ああ、やっぱり優希もカスミくんにはつけたのね。

「……3、4人しかかぶらなかったわね」
「そ、そうだね」
「ていうかあんたこれ、攻撃手ばっかにつけて、わかってんの。うちはもう攻撃手いんのよ」
「え、えと、ご、ごめん……す、好きで……」

「あのねぇ……」と呆れる。しかも弧月使いばっかり。自分がスコーピオンだから?と聞くと、う、うん……とこれまた遠慮がちに返された。攻撃手ふたりなんてそんなの、とんだ個人戦チームじゃないの。「あの」会話をしていると、見知らぬ男の子が声をかけてきた。……C級の制服?

「久野さんって聞いてきたんですけど」
「あ、あ、は、はい……」

明らかにみちるに向かって言ってきたので優希が手をあげ、みちるもこっち、と優希を手で示した。それを見て男の子は優希に向き直した。

「おれ、霞隆一って言います。久野さんの隊に入りたいんですけど」

ひぃっ、優希が、小さく悲鳴をあげた。