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18歳師弟と水

「夏って暑いね村上くん」
「そうだな名字」
「暑いときって、何をしたらいいんだろう」
「涼しいし、プールなんていいんじゃないか?」
「なんて素晴らしいんだ村上くん。そうだ、プールに行こう」
「行かねーぞ」

練習したような会話をしながらチラチラとこちらを見てくる2人組に荒船が返す。それに対し「どうしてだ」と言ったのは村上だった。

「荒船は少し遊んだほうがいい」

村上は心配だった。自分の特訓にばかり付き合わせ、荒船が遊んでいる姿を全然見ていなかった。最近は狙撃手に転向したが、それからも荒船が遊びと言う遊びをしている姿というものは見ていなかった。

そこで名前に協力をお願いして会議をした結果、会話の中でうまいこと遊びの話を持ち出し、なんとか荒船を遊びに誘おうとしたのだった。名前は村上の頼みを二つ返事で了承した。多分理由は村上に頼まれたということと、行き先がプールだったからだ。

「…………鋼、あのな。別に遊びたくないわけじゃない。プール以外にも遊ぶ方法はあるだろ?」
「海とか?」
「お前は黙ってろ。なあ鋼、そもそも俺たちは受験生だ。遠出してまで遊んでいる時間はない」
「しかし今ならボーダー内に私有プールが」
「マジで黙ってろ。いいか鋼、この馬鹿に何を言われたか知らねーが俺は断じて水辺にはいかない。いいか、絶対だ」
「もしかして荒船……」

「泳げないのか?」純粋に疑問を唱えた村上に、荒船は大ダメージを食らった。隠していたわけでもないが、弟子に自分が泳げないことがバレてしまった。そして隣に立っている女は実に嬉しそうに「ええっ!そんなまさか!」と驚いた。荒船は今までの中で最も名前に腹が立った。

「どれくらい泳げないんだ?」
「……」
「あまり泳げないと、トリオン体が水辺でやられたときに危ないぞ?」
「危ないんですってよ」

心配げに聞く村上に便乗して名前が言う。荒船は「水のあるところには近づかない」と言ったが、「戦闘が制限されるのはよくないだろ」と正論を言われてしまった。

「顔を水にはつけられるか?」
「……」
「見て村上くん。ここに水の入った洗面器が」
「おい。おい、マジでやめろ」

冗談にならないため本気で若干の怯えを混ざらせながら睨むと「荒船さんが泣いちゃうからこれは引っ込めてあげよう」と恩着せがましく洗面器が引っ込められた。

「顔をつけられないくらいなのか……?」

一連の流れから荒船の泳げないレベルがわかった村上が驚きと心配の色を濃くした。村上は本当に心配してくれているのがわかるからいいのだが、隣で「なんということでしょう……」と両手で口を覆っている馬鹿は本気でしばきたおそうと思った。


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