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荒船メソッドで勉強する

「助けてアラえもん」
「…………どうしたんだいのび太くん」
「小テストで赤点取りました」
「しばく」
「ドラえもんそんなこと言わない」

野蛮だが高性能なアラえもんに「またお前か」と先生から出された課題片手に助けを求めるとアラえもんからも「またお前か」という顔で作戦室の扉を開かれた。

「今はどうした」
「国近ちゃんが持ってった」

「国近……」と荒船が彼女の成績を思い出す。「なんでお前らのクラスはアホばっかなんだ」「知らない」という切ない会話をして作戦室に通してもらった。

「いい加減にしろよお前。少しは成長を見せろ」
「いやー面目ない」

全く面目なくなさそうに名前がへらりと笑う。それを見て荒船がしばらく黙ったため、「あ、さすがにちょっと怒った?」と名前が少しだけ焦った。

「ごめんって荒船。次からは自分で頑張ります」

そう言って彼女が頑張ったためしがないことを荒船は知っていた。もう何度も、というか前回のテストのとき面倒を見てやってからなんとなくみんなの中で「名前のお守りは荒船の担当だろ?」みたいな雰囲気になっていた。

「……決めた」
「え? 何を」
「これからお前の成績は俺が管理する。宿題も出す」
「…………はい!?」

突然の申し出に変な声で返事をしてしまった。管理とは、宿題とはなんだ。「前々から頼まれてたことだしな」と荒船は自分の中で勝手に納得していた。

「今年お前受験だろ」
「そうですね」
「東さんから、お前の面倒少しでいいから見てやってくれって言われてな。やるからにはきっちりやる」
「はい!東さんを希望します!」

荒船は教え方はうまいが厳しい。あと口が悪い。そこらへんが自分の師匠を彷彿とさせるため、できれば東のように優しいほめて伸ばすタイプにご教授願いたい。

「駄目だ。東さんも院生で忙しい。何より高校に入れるときすげー大変だったって言ってたぞ」

英語のえの字も知らなかった名前は、「え?文の初めって大文字なんですか?」という頭を抱えるレベルではないところからのスタートであった。

他もそのレベルで、最も時間を割いて教えてくれていた東には大変深い恩がある。

「これ以上東さんの手を煩わせるんじゃねぇ」
「それはそうですが、荒船先輩もお忙しいでしょう。何も私というお荷物を預からなくたって」
「お荷物の自覚はあんのか。勉強しろ」

荒船は折れる気はないらしい。しかし彼は進学校に通っている。本当に名前の面倒を見ている時間というものはないと思われた。

「わかった。じゃああれだ、今ちゃんに教わる」
「今だとお前が宿題しないから駄目だ」
「く、くそぉ……」

確かに今相手だと「ごめん今ちゃん忘れちゃった」「もう、ちゃんとしなさいよ」「ごめーん」という会話で終わってしまう気がする。なんて人をちゃんと見ている男なのだ荒船哲次。さすが隊をまとめるだけのことはある。

「……あ! 村上くん!村上くんなら宿題します!」

普段が優しい村上に叱られるのはつらいので、村上相手であればおそらく宿題はちゃんとするはずだ。そのことを伝えると荒船はしばらく黙ったのち、やはり「駄目だ」と返された。

「なんでですか」
「……鋼は当真とカゲで手いっぱいだ」
「……あー」

そういえば自分のクラスには国近と自分以外にも勉強が苦手な人物がいた。そして村上と同じクラスには影浦も待機している。おかしい、自分の周りは随分とお馬鹿さんが多すぎやしないか。いや自分が一番馬鹿だとは思うけど。

論破できたと思ったのか「他に質問は?」と荒船がドヤ顔で聞いて来た。論破されてしまった名前には、これ以上撃ち合う弾は持ち合わせていなかった。







「だからちげーって言ってんだろ。公式くらい覚えて来い」

ぽすぽすとプリントで殴られ「暴力だ。弁護士を呼んでくれ」と何故か唯我のような口調で反論した名前に、「こんなアホな案件取り扱ってもらえるか」と正論を返された。

「こんなのドラえもんじゃない……さてはジャイアンだな?」
「いちいちうるせぇ。のび太のくせに生意気だなお前」
「ちゃっかりノッてくれるところは嫌いじゃない」

その後、名前の成績は荒船理論によりにょきにょきと伸びていった(かもしれない)。学校の宿題以外で勉強する名前の姿から彼女が塾に通い始めたという噂が流れたため、荒船隊ではこの勉強の光景を「荒船塾」と呼ぶようになったらしい。


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