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二宮隊と模擬戦

それから3ヵ月。二宮は手を抜くことなく、本当に以前よりもよっぽどハードな訓練が始まった。今までは週に一度手本を見せてやり、宿題を出すというだけだったが、対人訓練ともなればそういうわけにもいかない。

『うぎゃあああ!!』
『チッ……逃したか』
『逃したって何!? 殺す気ですか!?』
「今日もやってますね」
「二宮さんイキイキしてんな」

モニターを見ながら二宮隊の一同は優雅にもお茶を飲んでいた。モニターの中では優雅さのかけらもない名前が二宮に追い掛け回されている。

対人訓練では課題を出せないため、名前は二日に一度のペースで二宮隊を訪れてはこうして戦闘と言う名の追いかけごっこを展開している。

二宮に大きな傷を付ければベイルアウトさせずとも名前の勝ちになるのだが、トップ隊員は伊達ではなく全く持って隙がない。その上状況にあった弾を的確に撃ってくる。

射撃は動くだけではなく、その時どの弾が一番有効かをその場で考え、そして正確にポイントに撃たなければならない。攻撃手によくある体が勝手に動く、というものは射手ではほとんど通用しない。動きながら考える頭が無ければ射手は務まらないのだ。

ちなみに名前が扱うのは射手用とはいえ黒トリガー、一般トリガーのように弾の種類など選ばなくていいのでは……というのは残念ながらない。

彼女の黒トリガーはいわゆる一般トリガーに+αがついたもの。つまり結局弾種はあるため頭は使わなければならなかった。

「策も無く立ち止まるな。狙撃されたいのか」
「こ、ここ狙撃ないし!」
「……なるほど」
「ぎゃああ!!?」

生意気にも口答えをした名前に二宮が容赦なくアステロイドを降らせ敢え無くベイルアウトした。ベッドに戻って来た名前に「おかえり」と犬飼が笑った。

「また派手にやられたね。千本ノック?」
「みたいなもんだよ。犬飼代わる?」
「俺死にたくないからなー」
『おい、そこにいる馬鹿』
「ここにおります馬鹿です。何でしょうお師匠」

馬鹿と呼ばれることにも抵抗がなくなってしまうほどに二宮に懲りていた名前は死んだ目で答えた。モニターの中で二宮が言った。

『お前の腹積もりはわかった。犬飼、辻、鳩原、訓練室に入れ。対人戦がどんなものか教えてやる』
「お、いいですね」
「え……えっ!? よくない!全然よくない!」

名前が狙撃手がいないことを良いことに楽な戦闘を選んだ罰と言わんばかりに二宮がそんな4対1といういじめのような訓練を提案してきた。いや、提案というより決定事項のような言い方である。

「無理です! 鳩原ちゃん助けて!」
「私も死にたくないから……」
「……っ辻くん!」
「……」

辻に関しては目も合わせて貰えず名前は非情な世の中に涙した。辻が女性に対しとてつもなく免疫が無い事を名前はまだ知らなかった。

『……はあ』

モニターの中の二宮は音声しか聞こえていないが名前が無理無理言っているのが聞こえ溜め息を吐いた。

『……3分待ってやる。暇な奴捕まえて来い』
「了解ボス!!」

二宮が言った事を瞬時に理解し名前が作戦室を飛び出す。それを見た犬飼は随分と互いに慣れたものだと思った。

▽▼▽

「捕まえてきました!」
「捕まえられましたー」
「俺飯食ってたんすけど!!」
「まあまあ」

笑顔で帰って来た名前はへらっと着いて来た太刀川と状況が掴めていなさそうな出水を引き連れていた。

二宮隊に対抗するには普通のチーム編成だとボコボコにされる!と思い、自分の隊を連れてきていた。国近は新作のゲームを買いに行っているため不在で、氷見も今回はいないためこれでフェアというものだろう。

「おー、これはこれは……女子連れてこられなくてよかったね辻ちゃん」
「やめてください」

名前が出て行ったあと、女子戦闘員でも連れてこられたらどうしようと焦っていた辻を犬飼がいじり嫌な顔をされる。

「さっさと入れ、蜂の巣にしてやる」
「二宮俺見ながら言うのやめね?」

あからさまに太刀川に対し言ったため太刀川が半笑いで冷や汗をかく。この男はやると言ったらやりかねなかった。





『死ね太刀川』
『すげぇ俺の事狙って来るんだけどなんで!?』
『うわー。名字これ狙ってたでしょ』
『先輩楽そうっすね』
『太刀川さん釣りありがとうございまーす』

ドパッ

『うわああスコーピオン折れた! 鳩原ちゃん変態すぎ!』
『鳩原ナイス!』
『来んな犬飼』



「……なにごと?」

二宮隊作戦室にて、帰って来た氷見がモニターに映る太刀川隊と自分の隊を見てそう呟いた。


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