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二宮さんとお師匠

二宮は確かに、名前が言うように厳しかった。

二宮は初日に数回初歩的な攻撃方法を教え、その後初歩的な防御方法を教えた。そして名前に言った。

「これを使って、来週までに1000体バムスターを倒してこい」
「せ……っええ!?」
「来週のこの時間までにうちに来い。その時にチェックする」

翌週、ぜえぜえしながら時間ぎりぎりに名前が二宮隊の扉を叩いた。時間には間に合ったが扉を叩いたため二宮に「うるさい」と怒られた。

その次は、少しだけ応用した練習が始まった。しかしそれも数回二宮が見せるだけ、というものでその後二宮は「ちゃんとやれよ」と言い訓練室から出て行ってしまった。

名前は「二宮こんにゃろー!!」といいながらそのまま訓練室でバムスターと、新たに追加された課題であるモールモッドを射撃した。

「……」
「「……っ」」

しかしここは二宮隊の訓練室だったため他の隊員も二宮もしっかりモニターからのその声を聴いていた。他の隊員は二宮に文句を言う名前が面白かったらしく笑いを堪えた。

『腹立つなあんちくしょうイケメンめ! あっちょっバムスターさん待って!』
「貶せてないし、逆に褒めてるな」
「……変わった人ですね」
「俺名字と話したことなかったけど面白いなー。今度話してみるわ。辻ちゃんも来る?」
「いえ、俺は……」

犬飼がモニターを見て面白そうに言ったが辻は女性が苦手なため断った。鳩原は文句を言われている二宮の様子を伺ったが、「ふん」と鼻を鳴らすだけですぐにモニターから視線を外していた。

▽▼▽

毎週一度二宮隊に来て射撃を教わっていた名前の成長は目覚ましいものがあった。元々戦闘の勘がいいほうであった名前は仮想のトリオン兵相手であれば十分一人で倒せるほどに強くなっていった。

もちろん、まだ個人ランク戦に参加して上位に入れるような強さはなかったが、当初二宮が言っていた「3ヵ月でマスターしろ」という条件はこなせていたと言える。

「……」
「ぜぇ……うえ、」

3ヵ月目の最終週、二宮は仮想トリオン兵相手ではなく「俺の弾を防げ」という課題を出してきた。

二宮は通常弾で、名前はメテオラもアステロイドも何でもありという大きなハンデだが、名前はそれすらもギリギリではあるが攻略した。彼女の体からはトリオンは一つたりとも漏れていなかった。

二宮は自分の与えた課題を全て超えてくる名前に対し、表には出さないが驚いていた。

忍田に「鍛えてほしい隊員がいる」と言われたときはとんだ厄介事を押し付けられたと思った。自分の練習時間を割いてまで見てやるというのは、貪欲に上を目指す二宮にとって障害でしかない。しかも、自らやりたがっているわけではなく黒トリガーを使うために仕方なく教わりに来るというのが気に食わなかった。

実際、名前は初め嫌そうにしていたし、(射撃というより二宮が嫌だったのだが)すぐに音を上げるだろうと思っていた。そうなれば二宮の責任ではなく名前が二宮の教えから逃げたとなり、面倒事から離れられると思ったからだ。

しかし名前はぶうぶう文句を言いながらも、その課題を全てこなしてきた。自分が思っていた以上に彼女は根性と、才能を持っていた。

「……?」

弾を撃ってこなくなった二宮に名前が不思議に思う。気を抜かせて撃って来るかもしれないと気を引き締めて待っているのに、一向に二宮は動くそぶりを見せなかった。

「……訓練は終わりだ」

二宮の言葉に名前が戦闘態勢を解く。と、同時にということは……?と目を輝かせた。

「祝・3ヵ月おめでたい!! お疲れさまでした!!」

勢いよく頭を下げ、名前はひゃっほー!!と飛び跳ねた。トリオン体なため2メートル近くも飛び跳ねていた。

「…………誰が終わりだと言った」

しかし二宮の言葉に「えっ」となった名前はジャンプから無様にべちっと地面に落ちた。

「ど、どういう意味でしょうか……」

何となく嫌な予感がしておどおどと名前が聞く。

「俺は3ヵ月で“対トリオン兵の戦闘”をマスターしろと言ったんだ。残りの3ヵ月は対人訓練を行う。今よりもハードになると思え」
「えええええええ!??なにそれ!?」
「お前がまともに戦えるまで指導しろというのが上の指示だ。トリオン兵相手に勝てたくらいでいい気になるな」
「なんですと!?」

作戦室のモニターには「戻るぞ」と名前を置いて戦闘室を出ていく二宮とショックで固まる名前が映る。それを二宮隊の面々が見ながら笑った。

「二宮さん、名前のこと気に入ったのかな」

鳩原は二宮隊に名前が出入りしだした頃から名前を名前で呼び仲良くしていたため、少しばかり嬉しそうだった。それに対し犬飼は「かなー」と同意した。

「二宮さん絶対嫌いなタイプだと思ってたんだけどなー」

うるさいことをあまり好まない年齢以上に落ち着いている二宮はやかましさ全快の名前を気に入っていないとばかり思っていた犬飼は不思議そうにした。それは他の隊員たちも同じで、二宮の本意をわからずにいた。


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