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3年A組は恋バナがしたい

「恋バナがしたい……」

はあ、とため息混じりに言った名前の言葉に、各々携帯やら雑誌やらを見ていた一同は顔を上げた。

「なに?」
「恋バナがしたいんですよ」
「恋バナ」

それはいわゆる恋のお話というやつ?と確認をとった国近にイエスと名前が頷く。恋の話なんて、そんな急な。今が言うと、「急じゃない」と名前が否定した。

「私たちはなんですか? そうです、女子高生です」
「聞いたのに答えさせる気はないのね……」
「女子高生は常に恋バナと切っては切れない仲なのですよ。わかりますか?」
「またなんかのドラマの影響か?」
「最近読んだ雑誌の恋バナコーナーが面白かった」

これね、と鞄から出した女子向け雑誌を名前が見せた。なるほど、今回は雑誌の影響か。理由はわかったとして、と当真が手を挙げた。

「これは俺抜けたほうがいい感じ?」
「なんでよ、当真なんてほとんど女子みたいなものじゃない」
「さすがにそれは違うんじゃないかしら……?」

確かに女子トークに参加できるだけのスキルはあるがさすがに180越えのリーゼントで女子ではないだろう。今の声は聞こえていないのか、「今からあんたは勇ちゃんよ、わかった?」「わかったわ名前ちゃん」とふざけた2人が会話していた。

今もなんだかんだ言いながらも参加してくれるらしく、あらためて机の周りに椅子を配置しぐるっとひとつの机を取り囲んで座った。

「……」
「……で、これどうやんのー?」
「えっ……誰か恋の話してよ」
「おいおい、いきなり人任せじゃない名前ちゃん」
「当真くんそれなんか落ち着かないからやめてくれる?」
「あらぁ、駄目かしら結花ちゃん」
「誰が結花ちゃんよ」

よく考えれば、ボーダー内で誰それが付き合ったなんて恋の話を聞いたことがなかったし、名前も恋バナなどしたことがなかった。「う、うーん……」と名前が渋い顔で唸る。

「なんか、ほら、ボーダー関係じゃなくてもいいよ。なんかあるでしょ」
「うーん……そういやあまりそういう話したことなかったわね」
「初っ端から詰んじゃったね」
「ああ、名字が村上の話すれば恋バナだろ」

思い出したかのような当真の言葉に「えー、いやそれは」と今が苦い顔をした。

「あれは恋バナに入らないでしょ」
「え、なんで?」
「なんでってあんた……」

「名前のあれは別に恋的なあれじゃないでしょ」という今に、「村上くん好きだよ?」と名前が不思議そうな顔をした。

「違うのよあんたのはこう……重みがないのよ」
「重み」

なんかこう、ないのよ。今の言葉に、うーむ?と名前が首を傾げた。重みなぁ、と考えていると廊下に村上の姿を見つけた。「あ、おーい村上くーん」と呼んだ名前に今がぎょっとした。ま、まさか本人に重みどうこうを聞くのか?聞いてしまうのか?今が驚いていると、村上が「ん、」とこちらを見た。

「私ちゃんと村上くん好きだよー」
「あ、ああ……?」

ひらひらと手を振りながらそう言った名前に、村上が不思議そうな顔をする。村上の後ろにいた影浦は「なんだあいつ」とすごい変な顔をしていた。穂刈はいつも通りの顔だったけど。

「ほらね?村上くんもわかってくれたわ」

村上たちが廊下を去った後、ふふんと名前が今に笑った。「いや違う。だからもう全然違う」と今は首を振った。

「まあでも確かに、普通そんな簡単に好きって言わないかなぁ」

国近の言葉に、そうよ、と今が続ける。「あんた来馬先輩好きでしょ?」と言う言葉に「好き」と返すと「東さん」と今が続けた。

「好き」
「風間さん」
「好き」
「私」
「大好き」
「……」

「ちょっとー、今ちゃんが照れてどうするの」国近の言葉に「と、とにかく!」と今が言った。

「名前の好きは友達間を超えてる気がしないので、不可とします」
「えー、じゃあどうしよ。私の持ってる恋バナかぁ……」
「名字ってどんな男が好きなわけ?」
「やさしい人」

範囲広いなーと当真が苦笑した。そんな漠然としていると話も広がらない。段々となぜだか名前への質問祭りになっていると、国近がさらに「初恋はー?」と聞いてきた。

「初恋…………」

「……だめだこりゃ」恋バナ発案者が恋愛未経験だった事実に「はい解散かいさーん」と一同はさっさと椅子を定位置に戻した。

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