かくして迷子は家に帰った | ナノ
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▼ その目の奥で揺れる

こいつは誰だ?

レークは女を睨み付けながらそう思った。目の前にいる女は先ほどの女と雰囲気が違って見えた。

こいつは、リュウと同じことを言っていた。リュウの存在が玄界にばれているのか、それとも女があいつと同じ人間なのか。

もしこいつがリュウと同じ人間ならば、金の雛鳥と共に国へ連れ攫わなくてはならない。確か上……ハイレインは奴の研究がどうなどと言っていたはずだ。

女が視界から消える。空中に一瞬で移動したのだ。足元に煙が立っているのに気づき足から弾を射出したことに気付く。次の瞬間、体に衝撃が走った。

玄界の者に先手を取られたことに軽く舌打ちをして女に弾を打ち込む。レークのトリガーはランバネインと同じで射撃タイプ。一方で名前のトリガーは手元に見えないが、先ほどの衝撃から考えて射手が使うタイプらしい。どちらも似た戦闘スタイルというわけだ。

女はレークに撃たれた頭部から、レークは女に斬られた右肩からわずかにトリオンを流す。レークは女の少しだけのトリオン漏れに浅かったかとまたも舌打ちした。

射手の射程距離に入らないように距離を保ちながら、最初に動いたのはレークだった。

女が先ほどランバネインとやり合った人間だというのは知っている。奴の二の舞にはなるまいと宙に飛び上り数発打ち込む。射撃は上を取った方が有利だからだ。

女は避けこそするが、やり返しては来ない。というよりも、攻撃を避けながら上に撃つのは自殺行為である。接近戦に仕掛けるのが一番良いが、そうするには高さが足りなかった。

レークはこのまま持久戦に持ち込むことにした。弾は避けられてしまいトリオン切れで負けるかもしれないが、この戦いは金の雛鳥を捕まえるために強者の足止めを目的とした戦いだ。勝ち負けにこだわって任務を全うできないほど、レークは愚かではない。

女が建物に逃げ込む。でかい建物で、まさか上る気じゃないだろうなと思うが、反応はない。先ほどから降らせている弾では威力がないため、弾数を絞り強い弾送る。

「……!!」

破壊した建物の煙から無数の光が自分を狙う。一発が当たり、飛行機能に乱れを生じさせてしまう。屋根の上に着地し、女の位置を確認しようとしたとき、女はすでに男の背後にいた。

「おしまい、ね」

「……」

首元で作られたトリオンキューブを見て、レークはおとなしく自分の負けを理解した。そして、すぐにとどめを刺さない甘い女を笑った。それは女の甘さと、自分の勝利を確信した笑みだった。

「!」

先に撃っておいた、わざと速度を落としていた追跡弾が女を襲う。屋根から降りて女と距離を取って男は不敵に笑う。弾は見事に不意を衝いて女の頭部を捉えた。

パアンッ。トリオンが勢いよく飛び出した。

その様子を見て笑ったのは、出し抜いたはずのレークではなく。

「て、めェ……!!」

「……」

先ほど頭を撃たれたはずの名前は平然とそこに立っていた。一点集中させていた盾で塞いだ当たり、誘導弾の存在もばれていたらしい。

それだけなら負けることはなかった。体勢を立て直し、相手の戦闘スタイルに合わせた戦法も練れただろう。しかし、このトリガーの存在だけは予想外だった。

相手の体内で増殖する弾か。それとも爆発させたか。どういう仕掛けかは知らないが、敵の体内に武器を入れれるという点ではエネドラという自分の味方と同じだ。予測すべきだったと、生身に戻り舌打ちした。

しかし増殖などの大技、時間がかからないはずがない。反撃をせず持久戦に持ち込んだのも、全て女の手中での事だったのだ。

「リュウはアフトクラトルにいるんだね?」

「……テメェ、何を知っていやがる」

「さあ。リュウと同じくらいかな」

「……」

さすがに、適当に先ほどレークが口にした名を繰り返すだけで情報は漏らさないか、と早々に諦め名前はキューブをばらした。

「出頭しなさい」

「……ふざけてんのか」

レークが言った言葉は、目の前にいる女に対してのものではなかった。自分を迎えに来るはずの、別の女に対してだ。

「いいえ」

キュンッと発生した門に、名前が距離を取る。避けられることは予想済みのようで、黒い棘のようなものは今回は出てこなかった。

「また会ったね」

挑発するように名前がミラを見て笑う。彼女は表情をぴくりともさせずにすぐに視線をレークに戻した。

「彼女の件は、今回の目的とは違うわ。置いていきましょう」

「……ああ」

レークが門の中に入っていく。先ほど見たように、門の中は遠征船のようになっているらしい。

門が閉まるとき、先ほどまで戦っていた男と目が合った。男の目が何を言いたがっていたのか、それはわからなかった。

(その目の奥で揺れる 次に会う事はあるのだろうか)

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