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少しでも一緒にいたいハナシ

昼食を食べ終え、洗濯機を回している間にスマホを見たらカレンダーの予定が更新されていた。
あ……取材がある!
帰ってきたら詳細を聞いてチェックしておかないと。


「とりあえず私の予定は……これから買い出し、っと」


キヨくんの予定が分かるのは助かるけれど私の予定っている?高校と違って今は買い出しくらいしかないんだけどなぁ。
……高校時代に入れた覚えのないキヨくんの予定が私のカレンダーに追加されていたり、伝えていない予定が把握されていたりという事が度々あって首を傾げていた時もあったけれど、後から聞けばいつの間にかお互いのカレンダーをキヨくんが同期していたというのは今となっては懐かしい思い出。
とか、過去を思い返していれば洗濯終了のアラームが鳴り響いたから、手にしていたスマホをテーブルに置いて私は家事を再開させた。
のんびりと洗濯物を干して部屋に戻ってきたら、スマホが震えていた。
キヨくんからだ!あ、切れちゃっ……え、不在着信が8件!?また鳴った……。


「ねぇ(名前)ちゃん今どこ」
「えっと、家、だよ?」
「……本当に?すぐ出なかったの何で?心配した」
「洗濯干してたから鳴ってるの気付かなくて……何かあったの?」


練習が終わったキヨくんはカレンダーにある買い出しの文字を見て、連絡してくれたみたい。
車だから一緒に買い物しようって。
実家が隣だった事もあって待ち合わせをしてキヨくんと出かける機会はなかったから楽しみって伝えれば「一旦帰るけど」って言われてしまった……。
出かける準備をして待っていたら、玄関から物音が聞こえてキヨくんの帰宅を知らせる。
顔を覗かせると、気が付いたキヨくんがゆるりと腕を広げたから私は腕の中に飛び込んだ。


「おかえりなさいキヨくん!」
「ん……ただいま(名前)ちゃん」
「外で待ち合わせするかと思った」
「……少し遠出する。先だけどスーツ着る機会があるから買いに行きたい」


だから迎えに来てくれたのか、なんて考えていたら屈んだキヨくんに「……ただいまのキス」と唇を塞がれた。
きゅっと背中にしがみつくと、体重をかけられてどんどん深くなっていく。
ちゅっと音を立てながら離れたキヨくんの唇に、私の口紅が移っていて思わず顔を背けてしまった。
……色っぽいというか何というか。
合わなくなった視線を合わせようとキヨくんが顔を覗き込んできたけれど、その度に口紅で色付く唇が視界に入ってくるから直視できない。
私となかなか視線が合わなくて機嫌が下降し始めたキヨくんが頬を両手で挟んで無理矢理合わせてきた。


「(名前)ちゃん何で俺見ないの?」
「だっ、て……口紅、ついたキヨくんがなんか、色っぽくて……」
「…………じゃあ(名前)ちゃんが見慣れるまでキスしまくる。今ついてる口紅全部俺に移してやる」


キヨくんにしがみついていないと立っていられなくなった頃、宣言通り私がつけていた口紅はベッタリとキヨくんの唇に移っていた。
このままじゃ出かけられないよ……と小さく拗ねてみせたら「じゃあコレ、(名前)ちゃんの唇に移してあげる」と自分の唇についた口紅を見せながら強気に笑うキヨくんに、ぶわぁっと顔に熱が集まる。
う、移さなくていい……と首を横に振りたくても頬を挟まれている状態では全く首を動かせなくて、動かない私を見て肯定と受け取ったキヨくんに言葉を発する前にまた唇を塞がれてしまった。


「買い物、行かないの……?」
「行くけど(名前)ちゃんが悪い。電話に出ないで俺を不安にさせた。責任取ってもらわないとムリ」
「せ、責任……」
「うん。俺を安心させて。好きって言って。名前もたくさん呼んで」


……結局、買い物に出かけたのはキヨくんが帰宅してからだいぶ後になってからだった。
自ら進んで行く事のない人が多く集まる場所に向かっているというのに、車を運転するキヨくんの横顔を見たら口元に笑みを浮かべている。
運転をしているキヨくんはカッコいいからちらりちらりと盗み見ていたんだけれど……家での事もあって、ふとした瞬間にキヨくんの唇ばかりに目が行ってしまう自分に気が付いて慌てて顔を正面に戻した。
頬に両手を当てれば熱を持っていて、気休めに手でパタパタと扇いでいたらキヨくんに声をかけられた。


「暑い?エアコン下げる?」
「え、あ、ううん!大丈夫!」
「……俺は(名前)ちゃんから熱っぽい視線向けられすぎて暑いから下げようと思ってたんだけど」


指摘されてぴくりと体が跳ねる。
やっぱり見ていたのバレてたんだ。
信号で止まったタイミングで隣を見れば同じように顔を横に向けたキヨくんと視線が絡む。
伸びてきた手に頬を撫でられる。
目を閉じて手の感触に身を委ねていたら、するりと後頭部に移動した手に引き寄せられ唇を塞がれた。
離れたキヨくんは私のサイドの髪を耳にかけ、何事もなかったかのように運転に戻った。


「(名前)ちゃん、ずっと俺の唇見てた。キスしてほしかったなら言えばいいだろ」
「……っ!ゃ、ちが、」
「ちゃんと(名前)ちゃんのコト分かってるから。次の信号まで我慢できる?止まったらまたキスできるから」


最短ルートで進んでいたはずだったのに、信号が多い道をキヨくんがわざと選んでいた事に気が付いたのは目的地に到着する直前で……。
到着した時には家で塗り直した口紅は、またキヨくんの唇にベッタリと移っていた。



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