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幸せ夫婦のハナシ

耳元で鳴るアラームに段々と意識が浮上する。
起床時間を知らせるスマホを探したいのに思うように体が動かせない。
ぼんやりと目を開けたら、次第に体中に意識が向いて……重さを感じる。
背後から包まれるように抱き締められ、乗っかっている腕は顔の前まで伸びて私の指とガッチリ絡んでいた。
だからアラームを止めたくても体を動かせなかったのか。
私を抱き締め、ぐっすり寝ている夫……キヨくんに声をかけた。


「キヨくん……キヨくん起きて、ねぇ」
「…………朝?……おはよ(名前)ちゃん」
「うん、おはようキヨくん。朝ご飯作りたいんだけど、キヨくんも起きる?」


頷いたキヨくんは首元に顔を埋めてぐりぐりと押し付けながら、回している腕に力を込めてくる。
ご飯が出来たら起こすからそれまで寝てていいよって前々から言ってるのに、どうしても一緒に起きたいらしい。
私も眠いからこのままだとまた寝ちゃいそうなんだけどなぁ。
小さく唸ったキヨくんは私を抱き締めたまま体を起こした。
膝に乗せられ、ちゅーっと頬に唇が押し当てられる。
私を抱きかかえ、そのまま移動しようとするキヨくんの首に腕を回したらまた頬にキスされた。


「(名前)ちゃん今日のご飯何?」
「今日はね、雑穀米のご飯に味噌汁、玉子焼きとお浸し……それから煮物なんだけど切り干し大根かひじき、どっちがいい?」
「ひじきの煮物がいい。……梅干しはないの?」
「じゃあほぐしてご飯に混ぜよっか」


献立の話をしている間に洗面所に到着して床に下ろされた。
顔を洗って、並んで歯を磨いている時もキヨくんの片腕が腰に回る。
裾から侵入して素肌を撫で回すキヨくんの手と格闘しながら磨き終えれば、頬を片手で挟まれ唇を塞がれた。
移動してキッチンに立つと、ついてきたキヨくんにすかさず後ろからぎゅっと抱き締められて、頭に重みを感じる。
キヨくんを背負いながら料理をしている事に何だかおかしくなって、バレないように笑ったつもりだったのに「どうしたの?」って顔を覗き込まれた。


「キヨくん背負いながら料理してるのが何だかおもしろくて……でもね、キヨくんと結婚して4年経った今でもこんな毎日が本当に幸せなの」
「俺も幸せ。(名前)ちゃんと毎朝一緒に起きて、作ってくれたご飯食べて……(名前)ちゃんに支えられながらバレーが出来るのは幸せだ」


キヨくんのくれる言葉に幸せな気持ちが増す。
後ろに体重をかけたら、大きな手に顎を掴まれて上に向かされた。
のし掛かるようにキスをされて、息苦しさから口を開けばキヨくんの舌が絡んでくる。
少しだけ離れた唇が私の下唇をやんわりと噛んで喉元に移動した。
触れるだけじゃなく、下から上へ舐められたせいで思わず上げそうだった声を押し殺したけれど、キヨくんに聞こえていない訳がなくて……。
ニヤニヤとしながら「今日は先に(名前)ちゃん食べていいの?」なんてわざと聞いてくるキヨくんから慌てて顔を背け、私は朝食作りを再開した。
それから食卓に並んだ朝食を食べ、用意したお弁当をキヨくんに渡す。


「(名前)ちゃん、いってらっしゃいのキスして」
「あ、もう家出る?」


手を引かれて、ソファーに座ったキヨくんと向かい合うように座らされる。
首に抱きつくように私の腕を導いたキヨくんは腕が回った事が分かると、支えるように両手を私の背中へと回す。
見つめ合った後、ゆっくりと目を閉じれば背中にあった両手に力が入り唇を塞がれた。
ぬるりと入り込んで来た舌に体が跳ね、その反応にフっと笑ったキヨくんは首を押さえるように片手を移動させ、さらに腰をぐいっと力強く引き寄せた。
舌が離れた後も啄むように何度も何度も唇が合わさる。


「やっぱりキヨくん普通はっ……ん、こういうのって、んぅっ!出る時にちょっとするものじゃないの……?」
「よそはよそ、うちはうち。俺たち夫婦のいってらっしゃいのキスはコレ。もうこの話は散々しただろ」


キヨくんが満足するまで繰り返されたキスのせいで、軽い息切れを起こした私はくたりと目の前の胸元に体を預けた。
労るように頭を撫でる手の優しさに、もうしばらくこうしていて……って甘えたくなるけれど、これから練習に向かうキヨくんを引き止める事は出来ない。
結婚当初に「朝はゆっくり(名前)ちゃんと過ごしたい」って言ってくれたから余裕をもって起きるようにしたけれど、キヨくんが言うところの"いってらっしゃいのキス"をするって意味がその言葉の中に含まれていたなんて思わなかった。


「練習終わったらすぐ帰ってくるから」
「うん、待ってるね」
「出る時に連絡する。一緒にお風呂入ろう……だから(名前)ちゃん、前みたいに先に勝手に入んなよ」
「ちゃ、ちゃんとキヨくんを待ってるから!……今日も気を付けてね」


玄関先で、いってらっしゃいの言葉と共に触れるだけのキスを送った。
ドアが閉まる音に少しの寂しさを感じるけれど、結婚してから何も変わらないこの日常に幸せを感じる。



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